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学歴より工夫と努力の社会に

ウーバー、リフトと言ったライドシェアが世界では広がって来ています。「安全性に問題がある」「防犯対策は」「白タクでしょ」など言われていますが、世界の主要都市でこれだけ爆発的に広がっているのは、そこに理由があるからです。良い悪いは実際に使ってみないとわからないのです。もちろん課題は山積みで最初から完璧などということはありません。

私は今、海外を旅する時に、チャンスがあればライドシェアを使ってみることにしています。ポルトガルのリスボン、ハワイ島のコナ、シアトル、台北、アラスカのフェアバンクスなど、世界の多くの街ではライドシェアのウーバーを簡単に使うことが出来ます。スイス・ローザンヌではウーバーに配車依頼をしたらタクシーが来ました。タクシードライバーは請負なので、タクシーをやりながらウーバーにも登録している「二足のわらじ」です。

私たち日本人が、海外でタクシーに乗る場合、どんなストレスがあるでしょうか。

そもそも呼ぶために電話をしなければならない。行き先をその国の言葉で伝える必要がある。伝わったかわからない。遠回りされるのではないか。チップはどのくらい払えばいいのか。100ドル札しかない!

これらの悩みをライドシェアは全て解決します。アプリで現在地を把握して、行き先を入れるだけで料金が表示され、配車ボタンを押せば近くにいる車があと何分で来るか表示されます。料金はクレジットカード決済。チップも後から払えます。

私は日本のタクシーは世界的に見ても質が高く、料金も比較的安く、悪くないとは思っています。

それでも、未だに車イスユーザーへの乗車拒否など日常的にありますし、停まったとしても車から降りても来ず、行き先を言えば舌打ち。良くあることです。クレームの電話をしたところで慇懃無礼に謝り倒されて終わりです。

まして、地方都市のタクシードライバーの高齢化は目を覆いたくなります。

先日も千葉のとある駅で空車のタクシーがアクセルとブレーキを間違えて壁に激突していましたが、ドライバーさんは80歳でした。

別の日、札幌でタクシーに乗ったらドライバーさんが、

「俺たちは年金貰いながら、まあ家にいてもかあちゃんに嫌がられるから、こうやってタクシーに乗っていればいいのだけど、月の手取りは10万くらいですよ。若い人は家族を養えないから、みんな辞めてしまう。うちの会社は年寄りばかり。お客さん、メーターで2,000円の仕事なんて、我々にはロングなんですよ。」

と話していました。これはドライバーさんの努力不足による問題ではありませんし、減車すれば売上が伸びるかと言うと、そんな簡単な問題ではなさそうです。

これらは、一義的にはタクシー会社個別の問題と言うよりも、日本の交通システムをどうデザインするかの問題です。ライドシェアは危ない、怖いと煽るのは自由ですが、「じゃあ、どうするの?」の提言を世に問わないと、あと10年もしたら、今のおじいちゃんドライバーは全員リタイヤし、若い人は誰も選ばない職業になっている…。

タクシーだけの問題ではなく、路線バスや観光貸切バスも、若い人が選ばない職業になっていると現場の悲鳴を聴きます。

海外でウーバーを使う時、ドライバーに「なぜ、ウーバーをやっているのか」を聴いています。

理由は人それぞれ。ポルトガルのポルトでは、プロのサッカー選手がドライバーでした。失礼とは思いながらも「サッカーだけではお給料大変なの?」と聞くと、「いや、そんなことないけど、今日は練習が休みなんだ。」と笑いながら話してくれました。

リスボンで早朝、ウーバーを配車したら若い女性ドライバーでした。トランクにチャイルドシートがあったので、聞いてみると、子供を保育園に送る前に数時間だけウーバーをやっていると。

これこそがまさに「働き方改革」のお手本だと思います。学歴も出自も関係なく、自分の意思と努力で稼ぐチャンスがあるのです。年金では2,000万円足りないなら、アレダメコレダメとダメ出ししている場合ではありません。

日本では、今、個人タクシーの開業は事実上不可能です。ベテランドライバーを尊敬しない訳ではありませんが、深夜の京葉道路を時速120キロで追い抜いていく、個タクのおじいちゃんドライバーに不安がないと言えば嘘になります。

若い人に、今、そこにあるイスを禅譲する勇気を、人生の先輩方にはお願いしたいです。

自分のアイデンティティを失う恐れはわからない訳ではありませんが、黒船を拒絶して、その先にある未来を誰か高齢者がデザインしてくれるのでしょうか。

若い人が輝いていない国に未来はありません。

そろそろ、政治も経済も、若い人にバトンを渡し、真っ白なキャンバスに彼ら、彼女らの未来を自分たちで描いて貰いませんか。

引き際が肝心です。カッコよく引きましょう。「まだ、やっているんですか?」と言われるより「もうやめちゃうのですか!」と言って貰えるうちに。




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