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障害者差別解消法

事前連絡を義務にするのは、障害者差別解消法に触れるのでは、とのご指摘がありました。

私は法律家ではないので、断定的なことは申し上げられませんが、事前に連絡を要求することが「法律違反」になる可能性はあります。

車イスユーザーにだけ、何か特別なことを要求するのは「差別」になる可能性があるからです。

私の見解の続編では、法律論とサービス論を切り離して考えてみたいと思います。

●障害者差別解消法

私の基本的なスタンスとしては、障害者差別解消法が遅まきながら日本にも制定された事を高く評価しています。

残念ながら、日本には障害を理由とした有形、無形の差別が歴然と存在しているからです。

特に公共施設の整備などは、法律がなければいつまでも後回しになりますが、法律があれば予算も付き、整備は進みます。

実際に法律が出来て、ようやく東京駅にエレベーターが整備されました。障害者団体の方が陳情を繰り返しても「東京駅は100年経っており、構造上もエレベーターの設置は難しい」と公式回答が来ていました。私、その回答書を見せて貰ったので、よく覚えています。

然るに、障害者差別解消法が成立した瞬間、エレベーターの工事が始まりました。

そんなものです。

今、ハード面ではかなり改善が進みました。現在の問題は「ソフト面」での無形の差別が問題です。

無形の差別とは、対応したスタッフや職員が無意識のうちに門前払いをしたり、露骨に不快な態度を取ることです。

当社のお客様が、重度の障害がある娘さんを連れて市営バスに乗ろうとしたところ、(バスは車イスに対応したスロープ車両)ドライバーは大きくため息をつき、舌打ちをしながらスロープを乱暴に出し、最後に嫌味のひと言を浴びせたそうです。

障害がある方なら一度ならず、このような理不尽な扱いを受けたことがあると思います。
これも障害を理由とした、無形の差別にあたります。

●しかし法律で現場は大混乱

この法律はアメリカの障害者差別禁止法がベースになっていますが、悩ましいのがサービス提供側に「合理的な配慮」を求める、その合理的配慮がなんとも曖昧なことです。

法律とは別に業界団体などがガイドラインを出しています。私たちの旅行業界団体も今、現場は大混乱していて、ガイドラインの解釈について本社の意向と現場の悲鳴で、大変なことになっています。

旅行会社のパッケージツアー。新聞やパンフレットなどで募集する旅行です。
障害者差別解消法では、障害者が参加を希望した場合、出来る限り合理的な配慮をしなさいと要求されています。

たとえば、添乗員さんひとりにお客様35名。
添乗員さんが集合場所でスタンバイしていると、車イスを使うお客様が突然やって来て、添乗員さんが青ざめる。今では私たちの業界での日常です。

本社には強い意志も哲学もないので、現場の添乗員さんに「クレーム出ないように上手に対応して」みたいな玉虫色の指示を出したりします。

その後の悲劇は想像に難くありません。
法律的には「事前に連絡してください」と強制は出来ないからです。

合理的配慮って、いかにも日本的な「あいまいさ」ですが、このようなごまかし方が、障害がある人にも、受ける現場の人にも強いストレスを与えます。

日本はいつになったら、飛行機や電車やバスやタクシーにストレスなく乗れる日が来るのやら。

小さな不便は仕方ないですし、
私は駅や車掌として現場にいたので
受ける側のストレスも理解しています。

とはいえ、もう少しやりようがあるよなぁ。

高萩徳宗

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