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[ep.13]本当のリタイアの仕方とは

【メインテーマ】
100km歩こうよ大会 in 摩周・屈斜路 2019の実行委員がリアルに100kmを歩くことを決意し、実行したらどうなるのか?

【前回の記事】
[ep.12]頽堕委靡

●休憩所「最栄利別分館」の機能と特徴

最栄利別は「もえりべつ」と読みます。札友内寿の家と似たような公民館のような場所です。普段どのように利用されているか、私はわかりません。

この休憩所は荷物受け渡しが出来る場所として設定しており、スタート前にクロークで荷物を預けて、ここで荷物の取り出しや入れ替えが出来るという制度があります。無料なので、希望の方は活用すると便利です。

荷物受け渡しの活用例として、汗で濡れた衣服を着替えたり、この先は夜になるにつれて気温も下がってくるため防寒具を取り出したりすることが出来ます。私は荷物を持たずに歩くスタイルですので荷物の受け渡しはありません

我々がこの休憩所に到着した時には、何名かの参加者が滞在していました。

個人的に特記すべきこととしては、ここのスタッフには以前勤めていた会社の後輩の羽島君、元大会実行委員長の濱岡氏、現大会実行委員長・松山氏の義理のご両親(本大会における荷物運搬・管理のスペシャリスト夫妻)など、本部スタッフの私としては「本部の人間が多くいる場所」として、安心できる雰囲気でした。

濱岡氏は私が徒歩で参加しているのをこの日に知ったそうで、「歩いてるなんて知らなかったさ」と話していました。

羽島君はこの日の昼頃に弟子屈に到着して、すぐに最栄利別分館に配備されました。ある意味では、羽島君が私の中でのリアル100km徒歩参加におけるキーマンの一人と言えるかもしれません。それは後ほど記述します。

●最栄利別分館 トイレチェック

意識が朦朧としている中で、本能的なものかわかりませんが、建物に入ってすぐにお手洗いに立ち寄る(a.k.a. トイレチェックする)ことにしました。

トイレ全体はきれいな雰囲気であるものの、キレのあるアンモニア臭に一瞬たじろいでしまいます。小便器の上に市販の消臭剤が置かれていましたが、蒸発と凝固のために機能していないようでした。ここの大便器は汲取式と話に聞いていたのでチェックすると、なんと洋式便座が置かれており、しゃがむことなく用を足せるようになっていました。便意は小用のみでしたので、実際に使うことはありませんでした。疲労のせいで、この場所も写真撮影を失念してしまいました。

●己の中で生じた「現実と意識の乖離」を解消させる

トイレチェックを済ませた後、大広間に戻りました。大広間には休憩用の毛布、布団が敷かれています。ストレッチを行うために、私とあいぼん氏は横になってストレッチを行いました。

私の目が虚ろ過ぎていたのか、あいぼん氏が「ストレッチをしてあげますよ」と提案してくださいました。同じコースを歩いてきた中で、同伴者から施しを受けることに対して恥ずかしい、情けない思いもありましたが、それ以上に心身の疲労が著しかったためか、甘んじてご配慮を受ける形となりました。

仰向けになってストレッチを受けている時に撮影した、最栄利別分館・大広間の天井の写真です。

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この写真を見る度に、この前後のシチュエーションがターニングポイントの一つになったことを再認識します。

変な言い方ですが、逆さまに見えた世界を「逆さまに見えている」と自覚したことで、ここに来るまでの心持ちがが正常ではなかったことを思い返します。この大会に対して「ゴールまで歩かなければならない」という意識が少し戻ってきたように思います。

マッサージを終え、私は羽島君と少し話をしました。
・男女別の更衣室の作り方について工夫したこと
・男性更衣室なんかいらないじゃないかと聞いたら、男の着替えを見て不快に思う女性がいるということ
・女性更衣室はキッチン(ダイニング)部屋にしたこと
・荷物受け渡しの配置、フローについて最善の策が見つかったこと
など…

羽島君は、過去にこの大会に2回徒歩参加したことがあります。1回目は私が歩いた10年前に歩いて完歩しています。2回目は6-7年前くらいだったと思いますが、チェックポイントの9○○草原に向かうか到着してからかのあたりでリタイアしています。この他、本部としてもサポートとしても参加しているので、本人としては「大会の全ての体験を済ませている」と得意気でした。

羽島君と話している時に、自分が置かれていた心身疲労の状態と、パイプ椅子に座った羽島君の余裕のある状態を比較して、ここでリタイアを比較して宣言してしまうのが妙に悔しくなってきました。今から第4CP「9○○草原」に向かうに当たり、過去に羽島君がリタイアしたところと同じくなってしまうのも癪です。

また、ここでリタイアしてしまったら、本部スタッフはもちろんのこと、チェックポイントでマッサージしていただいた「ねぎぽぽ夫妻」をはじめとして、お世話になった全ての方々に合わせる顔がありません。

この悔しさと恥ずかしさが後押しして、身体の状態がどんなことになったとしても、タイムリミットに達してしまったとしても、行けるところまでは歩いてみようと決心しました。

「心ここにあらず」という言葉がありますが、第3CPから最栄利別分館に到着するまでは、まさにそのような状態だった気がします。ここであいぼん氏のストレッチ施術がなく、羽島君と話すことがなかったら、この先に進むことを諦めていたかもしれません。今ここで、自分自身を取り戻したような感覚になったのです。

「本当のリタイアの仕方」については、まだ答えは出ていませんが、今このとき、リタイアをするタイミングではないことだけは自覚できました。

●第4CP「9○○草原」に向けて立ち上がる

立ち上がったときの足の裏の痛みは、休憩を挟んだのに全く容赦なく襲いかかってきました。それでも気力は相当回復したように思います。次のチェックポイントに向かうことを決めました。

建物の中には我々以外にまだ何名か残っていましたが、話を聞くとリタイアした方だそうです。この休憩所のクローズを待ち、本部送還出来るまで待機しています。また、我々の後ろに2名が最栄利別分館に向かっている話も聞きました。

このときの時刻は19:33、次の第4CP「9○○草原」のタイムリミットは21:30、距離は5.9km、約2時間で6kmということは、遅くとも3km/h以上で歩く必要があります。

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しかも、9○○草原の入口からチェックポイントのある建物までは、約130mを登る山道です。出来得る限りのバッファは確保しておきたい。

大変恐縮ながら、後ろにいる2名を待つことなく最栄利別分館を出発することにしました。

心と意識の乖離が解消されたためか、失念していた最栄利別分館の外観撮影を、この時に実施できました。

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辺りはすっかり夜の帳が下りていました。

●19:32、休憩所「最栄利別分館」を出発

リタイアすることをやめて、休憩所「最栄利別分館」を出発しました。

辺りには明かりが無く、懐中電灯がないと前が見えません。私は7/4に女満別のニコットでサンダルと一緒に買った小型の懐中電灯を右手に持って路面を照らしました。あいぼん氏はヘッドライトを着用しています。

結論として、夜間歩行はヘッドライトがベストです。私は両手で杖をついていたので懐中電灯を持つのも一苦労でした。右手で杖と懐中電灯を持ちながら歩くのは非常に難儀しました。

第4CP「9○○草原」までのルートは、下の図のとおりです。

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道道53号に突き当たるまで直進し、左折してからしばらくすると9○○草原の看板が出てくるので右折します。ここを右折すると、9○○草原のレストハウスまで上り勾配のある道です。

あいぼん氏のストレッチと、気分転換が出来たおかげなのか、驚くほどに足取りが軽やかになりました。笑顔も増えてきました。あいぼん氏から「さっきまで相当きつかったんですね」と言われて、やっぱり傍から見ていても私が相当疲弊していたように見えたのかと自覚しました。

●道道53号、そして9○○草原へ

道道53号にぶつかり、地元警備会社「ユーカラ警備」さんに誘導され、道を左折し北に向かいます。

しばらくしたら、9○○草原の看板が出てきました。夜間の中でむりやり撮影しようとしましたが、案の定ひどい手ブレになってしまいました。

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道道53号から9○○草原に向かう入口のところにも看板があります。撮った写真をかなり加工してアップします。

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「100歩こうよ大会」のテーマは「感謝・感激・感動」ですので、看板上部に書かれている「感激牧場!」というキャッチフレーズは、まさに本大会の趣旨に合致しています。「720°の大パノラマ」は、ちょっと何言っているかわかりません。

ここからは約130mを登る山道です。しかも、記憶が正しければ「壊れて散らかった」と形容してもいいほどに罅の入ったアスファルトだったと思います。

この少し前くらいに本部Messengerにて、我々の後ろにいた2名の方が最栄利別分館でリタイアしたという連絡が入りました。つまり、我々が最後尾を歩いていることになります。

最後尾の徒歩参加者の後ろには、ユーカラ警備のスタッフが運転する伴走車が張り付くルールになっています。最後尾が幸いして、第4CPまでの山道は車のヘッドライトが先を照らしてくれています。

加えて驚いたのが、舗装が新しくなっていて非常に歩きやすかったことです。昨年2018年の大会前に視察したときは、工事中で砂利道の状態でした。

2018年7月6日に撮影した、9○○草原への道

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歩いた時の新しいアスファルトの様子を写真に収めようとしたのですが、とにかく周りがほぼ真っ暗でうまく行かずに諦めました。

あいぼん氏が言うには、「左の上の方にレストハウスの明かりが見えてくるんですが、かなり回り込んで登っていくようなので、なかなか到着しないんですよね」とのことです。

話の通り、左の方にぼんやりとした明かりが見えてきました。かなり霧が出ているようです。少し歩く度に私がスマホで距離を測るのですが、体力的な疲労・足の裏の痛みと上り勾配により歩みが遅いようで、思うようなスピード感で進めていなかったです。

それでも、足を前に進めていけば目的地には着くものです。第3CPから最栄利別分館に向かうときの奇矯な脳内状態に比べると、圧倒的にセルフコントロールが出来ています。

●20:57、第4CP「9○○草原」に到着

休憩所「最栄利別分館」を出てから約1時間半で、第4CPの「9○○草原」に到着しました。

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今更ですがよくよく考えてみると、「9○○草原」とは道道53号から曲がった道からの大草原の総称ですので、このチェックポイントの正式名称は「9〇〇草原レストハウス」となるべきですね。

次回は、ここでの飲食や、「9○○草原」に関することを記録していきたいと思います。道道53号からの入口にあった看板に記載のキャッチフレーズ「720°の大パノラマ」に関しても掘り下げます。

何にせよ、時間内かつ多少の余裕を持って到着できて本当によかったです。

[ep.14]弟子屈観光牧場 9○○草原 につづく