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[ep.4]憧れの地・和琴半島

【今回のあらすじ】
生まれて初めて和琴半島を訪問しました。

【前回までのあらすじ】
[ep.3]催しは想定外に/超克的なリアル
サポート時間割用紙が足りないことを、IT革命で解決しました。そして私は和琴半島を訪れる機会を得ました。

【メインテーマ】
100km歩こうよ大会 in 摩周・屈斜路の実行委員である私・便艦(べんかん)が「運営・サポートスタッフ」として、何をして何を感じたかを主観的に書き記すことを試してみるものです。


●往路:川湯ふるさと館~国道243号

今大会の1CP(チェックポイント)を設置している「和琴半島」に、私は一度も足を踏み入れたことがありません。私が初めて弟子屈町に足を踏み入れたのは、記録によると2003年9月8日でした。あれから約20年、少なくとも年に1回は弟子屈町に訪れていますが、それでも和琴半島を訪れたことがないというのは、私自身の中に和琴半島にかける情熱の至らなさや、繰り返しの留保と怠惰によるものなのかもしれません。だからこそ、その思いに報いるためにも今回初めてCPとして機能する和琴半島へ人一倍訪れてみたい気持ちがあります。

OTS(オフィシャルトイレスポット)砂湯に最後尾が到着したという情報を得てから、本部の川湯ふるさと館を出発しました。

[ep.3]にも書きましたが、川湯ふるさと館を出てからは「OTS砂湯」「OTSコタン温泉」を経て、1CPの和琴半島に至るルートです。

前回大会まで「OTS砂湯」「OTSコタン温泉」はそれぞれCPとしてタイムチェックを行っていましたが、運営上の都合でCPとしてではなく、OTSとして設定されることとなりました。とはいえ実際には、巡回スタッフが各OTSに待機して案内したり飲料を渡していたという情報が共有されてきました。

和琴半島に向かうにあたり、9時までに川湯ふるさと館に戻らなければならない使命がありましたので、砂湯とコタン温泉には立ち寄らずに直行することを決めていました。それでもせっかくこうやって珍しく外に出ることができたので、どうにかして何らかの記録を取ることができないかを考えていました。そこで実行してみたのが、さながらドライブレコーダーのようにスマホで車窓からの動画を撮ることです。

川湯ふるさと館を出発する直前、ダッシュボードに固定した三脚と撮影用のスマホをセットしていましたが、記録容量や電池のことを考えて、砂湯まではスマホを稼働させていませんでした。結果的には、記録容量や電池の心配は杞憂に終わったので、出発時から撮影しておけばよかったと少々後悔しています。

●砂湯

砂湯を通過し、撮り始めて割とすぐに最後尾と思しき方が見えてきました。

その後も次々と、右側にある歩道に徒歩参加者の姿が見えてきます。

情報共有のLINEグループでは、砂湯近郊は強風が続いているという投稿がありましたが、車を運転している上での感覚、緑葉の揺れ具合や徒歩参加者の衣服の動きを見る限りは、あまり強風であることを感じさせませんでした。

道中、大会カメラマンとして動いてくださっている地元スタッフの定木氏が、徒歩参加者の雄姿を撮影していました。ここで撮影された写真は、大会終了後に公式HPにで無料で公開されます。

●コタン温泉

しばらく徒歩参加者の様子を眺めながら進んでいくと、OTSコタンが見えてきました。

”やや地元サポートスタッフ"の藤田氏が、徒歩参加者にお手洗いの案内をしたり、飲料を渡したり、ゴミを回収してくださったりしています。

コタン温泉入口で案内をする藤田氏(左)

「やや地元」と書いたのは、道東の方ではあるものの弟子屈町民ではないからです。弟子屈町民ではないにも関わらず、毎回サポートスタッフとして責務を全うしてくださっています。加えてクレーン操作もできることから、資材運搬スタッフとしても重宝されている人材です。

●往路:国道243号~和琴半島(歴史を紐解きながら)

コタン温泉から程なくして、国道243号に合流する交差点に到着します。この交差点を右折します。

この交差点の右奥には、前回大会でCPとして設定されていた「はなこや」という飲食店があります。今年はCP、OTSとしての設定はありません。

右側に写る建物が「はなこや」。画面右には今年から導入された誘導看板も

今年から導入した新しい試みとして、コース上に誘導看板を設置したことが挙げられます。本来であれば、右左折するポイントやコースがわかりづらい部分に人を配置できるのがベストです。しかし複合的な理由で今年から人の配置が出来なくなってしまい、苦肉の策でこのような形となりました。

この交差点を右折して国道243号を西に向かいます。しばらく直進すると和琴半島入口の交差点に看板が出てきます。そこに至るまでに、かつて過去の大会でCPとして設定されていた「屈斜路ウォータースポーツ交流公園」や「屈斜路研修センター」を通過します。

●屈斜路ウォータースポーツ交流公園

「屈斜路ウォータースポーツ交流公園」は、実行委員の間では「ウォータースポーツセンター」として呼ばれていました。どこかのタイミングで名称が変更されたのか、もともとの呼び方が間違っていたのか、把握できる術は今のところありません。

2009年大会では4CPとして設定されていた「ウォータースポーツセンター」。当時は自己申告による途中ゴールという制度があったため、ゴール幕が掲げられている(2009年撮影)

●屈斜路研修センター

「屈斜路研修センター」がCPとして設定されたことは過去に1回しかありません。2006年開催された第1回大会で利用されただけです。しかもネットで検索しても、詳しい情報が出てこないというレアキャラぶり。この場所がCPであった時のことを2019年大会の徒歩参加を記録した際には軽く触れるだけに留めていましたが、今回は少しだけ掘り下げてみます。

国道243号沿いに建てられた「屈斜路研修センター」(2019年撮影)

2006年に開催された第1回大会の資料はあまり多く残っていません。名称も「第1回 100km歩け歩け大会 in 川湯温泉」というものでした。資料を見てみると屈斜路研修センターのことは「和琴研修センター」と書かれていました。道外サポートスタッフ参加者のことを「伴走者」と呼称していたことも思い出しました。

当時私は運営・サポートスタッフとして巡回をメインに動いていたのですが、残念ながらここに立ち寄る機会はありませんでした。翌年からはCPが「屈斜路ウォータースポーツ交流公園(ウォータースポーツセンター)」に移動し、それ以来は地元の方以外の100km関係者がこの場所に関わることはなくなりました。

●戦闘の方は夕暮れ 橋を通過

屈斜路研修センターを通過し、前を歩く徒歩参加者の姿は少なくなってきました。「この人が先頭だろうか」と思いながらさらに進むと、また徒歩参加者の姿を認めるようなことを何回か繰り返しました。

和琴半島入口の交差点まであと700m程度のところに徒歩参加者が歩いていました。時刻は8:35ごろ。さすがにこの方が先頭でしょう。

夕暮橋という橋を通過して、サポートスタッフ用グループLINEに先頭の位置を投稿しました。

画面左に「夕暮橋」という看板が立てられている

運転中はスマホを操作することができないので、音声入力で投稿しています。ファンタジー小説で語られるポエムのような文章に誤変換されてしまいました。

それから間もなく、和琴半島入口の交差点に到着します。

右折しようとしたその時、サポートスタッフが誘導看板を出そうとしている最中でした。事前に設置できなかった理由は不明ですが、国道に看板を設置するには北海道開発局や警察への対応に骨が折れると聞いたので、その都合に因るものかもしれません。

右折してからの道は、人生で初めて通る道です。1CPが設置されている場所までは、ここから約1kmの直線道路です。車では2分の距離でも、徒歩だったら10~15分くらいかかるでしょうか。

直線の道路を進んでいきますが、やはり徒歩参加者の姿はありません。夕暮橋の手前で見た方が先頭を歩いていることを確信しました。そして前方に進入禁止の標識と駐車場を目にして、ここから1CPを設置している場所までは徒歩で移動することを確認しました。

●初めての和琴半島

とうとう念願の和琴半島に足を踏み入れることが出来ました。ここから1CPの設営されている場所を訪問します。

駐車場に車を停めて設営された1CPのテントまで歩いていく途中に、お土産屋さんがありました。時間があれば立ち寄ってみたかったのですが、川湯ふるさと館で事務局炭田さんが私の帰りを首を長くして待っているでしょうから、残念ながら訪問を見送りました。

数十分前に1CPの設営が完了していたことは、サポートLINEで確認していました。設営を終えたサポートスタッフが集っています。テントを設置している場所は「RECAMP和琴」というキャンプ施設です。今年の大会準備を行う際にこの施設を利用することを聞き、初めてその存在を知りました。

●タイムチェック方法の変更

私が1CP和琴半島を訪れたのは、ただ単に憧れの場所に足を踏み入れたかったからだけではありません。他にも大きな理由がありました。今大会の徒歩参加者タイムチェック方法を変更したため、初回のタイムチェックに立ち会いたかったことに因ります。

今までは手書きで時間を記録していましたが、今回はゼッケンをLINEで撮影して投稿する方法にしました。このメリットは「参加者のゼッケンを写真を撮影した時間=CPに到着した時間」となるので手書きをする必要がなくなることと、遠隔地にいる運営・サポートスタッフが各CPに到着した徒歩参加者の時刻を瞬時に把握することができる点です。

デメリットは、ゼッケンを撮影・投稿するスタッフのスマホの通信量が増えてしまうことです。ただしこの問題は、通信量無制限のモバイルWifiレンタルで解決できました。通信インフラの発展は、スムーズで確実な大会運営に寄与していることを改めて実感します。

●屈斜路湖湖畔へ

徒歩参加者が来るまでの間、屈斜路湖が見えるところまで足を運んでみます。湖の方に小走りして進んでいる途中、初めての和琴半島を祝うかのように少しだけ青空が顔を覗かせてくれました。右の奥の方に屈斜路湖の湖面が見えてきました。

もう少し進んでみたら、屈斜路湖の湖面と和琴山が見えてきました。写真では伝えきれないくらい開放的で煌びやかな風景が広がっていました。スタート時の降雨を忘れてしまうくらい整った気候を感じているうちに、時間を忘れてしまうような気分になりました。

本当はこの道の先に進んでみたかったのですが、そろそろ徒歩参加者が到着する頃でしょうから、このあたりでテントまで戻らなければなりません。

テントに戻りました。写真では徒歩参加者の姿は確認できませんが、かなり奥の方ではあるものの徒歩参加者の姿が見えてきました。あと数分で到着するでしょうか。

●トイレチェック in 和琴フィールドハウス

徒歩参加者が到着するまでの間に、このCPに滞在する方が利用するお手洗いをチェックしておこうと決めました。私は「便艦(便所要塞艦長)」ですので、トイレチェックこそ私の使命です。トイレは「和琴フィールドハウス」の中にあると教えてもらいました。

かなりきれいな建物です。いつごろ竣工されたのか調べたら、2014年7月だそうです。とても9年が経過しているようには見えませんでした。入口にはポスターを貼ってくださっています。館内には和琴半島を紹介しているパネルが展示されていました。

メインイベントのトイレチェックです。非常にきれいで、全く臭気を感じません。大変心地良い気分になりました。

素晴らしいことに、見かけることが極めて少なくなった便所ボールが投入されています。前回これを見たのはいつになるでしょう、思い出せないくらい昔のことのようです。

強烈な存在感を示す便所ボール(蛍光緑色の玉状の物体)

お手洗いを出てすぐに設置された設備に驚きました。シャワールームがあったのです。徒歩参加者の方の希望があれば、ここでシャワーを浴びることもできるのでしょうか。それにしても、キャンパーの方々の中でも意見が割れるのかもしれませんが、個人的にはシャワーのあるキャンプ場なんて至れり尽くせり感が迸ります。

●時間配分のミスに気付くのが遅すぎた

テントに戻ってきたと同時くらいに、徒歩参加者の先頭が到着しました。時刻はAM8:53です。LINE写真投稿を利用したタイムチェックも無事に対応できています。これはわかりやすい!遠隔地にいても、誰がいつCPに到着したのかがすぐに確認できます。

1CPのオープン時刻が9:00からですので、あと7分ここで待機していただきます。大会趣旨にも記載がある通り、この大会はタイムを競う大会ではありません。先を急ぎたい気持ちがある徒歩参加者には大変申し訳ないと思うものの、急ぎ過ぎないことも本大会の醍醐味とご理解いただけることを願っております。

あれ、最初の徒歩参加者の到着が8:53…?あっ、そういえば自分は9:00までに川湯ふるさと館に帰らなければいけなかったのでは…。川湯ふるさと館から和琴半島に来るまでに約25分、ということは今から帰ると9:20ごろか…?急いで車に乗り込み、川湯ふるさと館で待つ炭田さんに詫びの一報を入れます。

よくよく考えてみたら、最初の徒歩参加者のタイムチェックに立ち会う時点で、9:00に川湯ふるさと館に戻ることは出来ませんでした。完全な判断ミスです。

●復路:和琴半島~川湯ふるさと館

急いで帰らなければ!と逸る気持ちを宥めながら、安全運転で車を走らせていきます。帰りは、最初からスマホ動画の録画をセットしました。

そんな中、国道243号に合流する交差点を左側にサポートスタッフの姿を確認しました。地元スタッフの佐々木夫妻でした。本来であればここに張り付いていただく必要はないと思っていましたが、道案内のために待機してくださっていると伺いました。本当に頭が下がります。

画面真ん中のあたり、案内人として待機する佐々木夫妻

ここからは、来た道を逆走していきます。往路は徒歩参加者の背中を見ながら和琴半島に向かいましたが、復路は徒歩参加者の姿を正面から窺うことができます。

私は徒歩参加者を見つける度に、車内から手を振って静かに応援していました。ほとんどの方は私のことを気が付かないか、不審に思ってか、疲労でそれどころではないのか、一生懸命に前を向いて歩いていきます。そんな中、僅かではあるものの私のことに気づいて手を振り返してくださる方もいらっしゃいました。これは本当に嬉しかった。心が通わせられた感覚を存分に味わいました。

コタン温泉入口では、今も藤田氏が案内を続けていました。

コタン温泉入口で案内をする藤田氏(左)

コタン温泉を過ぎた後、木漏れ日を感じるようになってきました。木が無いところでは直射日光がアスファルトを照らす場所もありました。徒歩参加者は雨天対策の装いをしている方が多く、蒸し暑く感じられたかもしれません。

コタンから砂湯の間の辺りで、最後尾グループを確認しました。順調に歩みを進めているように見えました。この辺りまで来たら、少し曇天模様となってきました。直射日光よりは曇天の方が歩きやすいでしょう。

●川湯ふるさと館に帰還

最後尾グループを確認してから約10分後、川湯ふるさと館に戻りました。館内は出発時以上に人の気配がなく、視認できる範囲では事務局の炭田さんしか居ませんでした。まずは到着が遅れてしまったことを改めて詫びて、ここからは本部業務を私が行うことを告げました。簡単な引継ぎをして、9:30に炭田さんは川湯ふるさと館を後にしました。ここからしばらくの間、孤独な時間が続くことになります。

[ep.5]孤独による空谷の刻 につづく