【第5CP→第6CP】モイスチャー成分がいらない時もある

記事初回入稿日:2009.08.08
改訂開始日:2017.07.17
最終改訂日:2019.08.04

2009年6月27日(土)
16:42 第5CP到着

この第5CPでは、第2CPのときにもお話しした地元のIさんがサポートリーダーを務める場所でもありました。

みなさんが笑顔で迎え、サポートリーダーのIさんも「おかえり~!」と言って歓迎している中、私と根津さんはIさんの元へ近づきます。

私「すいません。。。ツナギの股間にバナナがついて白くなっちゃったんで、落してもらえないですかね。ほら。これ。」

Iさんとは気心の知れた間柄だと信じてやみませんでしたので、さながら、数年前に放映されていた金融業のCMに出演していたチワワのような目線をして面白いリアクションを哀願していたのです。

そんな期待を裏切るかのように、Iさんは「何バカなこと言ってるのよ!もう!」と話し、私はことごとく一刀両断されてしまったのでした。

今、よくよく考えてみれば、他にヘロヘロになった方がたくさんいるにもかかわらず、ヘラヘラしながらチワワを演じるという役者魂を見せつけたとしても、そんなことを受け入れる余裕がなかったんでしょう。ハタから見れば、ただふざけているようにしか見えないですし。

しかし、予想していた答えがまさか返ってこなかったということが、自分にとっては、少しだけ心が折れそうになってしまいました。

ですが、今までに何度も書いてきましたが、

「ネガティヴな発言はしない」

というのは死守したかったので、そこは笑顔でカバーしました。笑顔になれば、心って結構立ち直ったりできるものなんですね。

そんなこんなで、ブルーシートの方に向かおうとしたところ、サポートの方から「氷が入ったビニールがあるよ!」と、氷嚢みたいなものをいただきました。

自分は結構、内側の腿(モモ)にハリを感じていたので、これで少し冷やそうと思っていました。

それを持ってビニールシートに座ると、サポートスタッフの1人である顔見知りのKさんが来て、「マッサージどうですか?」と声を掛けてくれました。

このKさんは仕事上の付き合いがある方で、とても笑顔が素敵な好青年です。この時も素敵な笑顔で、自分の傍まで来てくれました。

この大会の醍醐味の1つである、サポートスタッフからのマッサージ。

自分は徒歩参加もサポート参加もしたことがなかったので、ずっと外から見ている感じでしたが、今回初めて体験することとなりました。

足の裏

ふくらはぎ

モモ

お尻

背中

マッサージを受けている時は、ホントに気持ち良かったです。

Kさんからの献身的なマッサージが気持ち良く嬉しい反面、マッサージが気持ちいいと感じられる体になってしまったことが、少し侘しくもありました。

なぜなら、大学生くらいまでの自分は、マッサージをされると、くすぐったいやら痛いやらの感覚だったからです。足腰をマッサージされて気持ちいいと思うことは、あまりありませんでした。

たまたま体に疲労が溜まっていたためにマッサージが気持ち良かったのかもしれませんが、マッサージが気持ち良くなる歳になってしまったというのも、感慨深いです。

昔、週刊少年ジャンプで連載されていた「王様はロバ」というマンガで

「子供はマッサージされると痛がる。大人はマッサージされても痛くない。マッサージされて痛いけれども、それを楽しめるくらいの歳が一番おいしい」

みたいなシーンがあった覚えがあるのですが、そのイメージがとても強く根付いていて、自分の老いを感じずにはいられないのでした。

それでも、齢を重ねることでの新しい楽しみができるので、若くなくなってきたことがダメというわけではないですが。

私がマッサージを受けている間、根津さんには悲劇が起こりました。

後ろの方から、「あっ、犬がいる!」とかいう声が聞こえます。

その犬は、こちらに向かっていたようでした。

少し経ったら、私と根津さんの周りをフンガフンガ鼻息をたてながら獅子舞のように右往左往しています。

根津さん「うああっ!俺、犬ダメなんだよ!」

根津さんの顔に笑顔はありません。私は、のうのうとマッサージを受け続けています。

犬は、毛布を加えて引き摺り回したり、根津さんが履いていた、脱ぎたての靴下をくわえて逃げたりと、やりたい放題でした。

根津さん「っホンット、まじでやめて!うッ、うッ」

犬を払うのに精一杯でした。

我々は、まさかモチベーションが最高潮であった第5CPにてこんな仕打ちを受けるなんて思っていませんでしたから、我々以上にやりたい放題の先客がいることに対しては非常に残念で仕方がありません。

くわえられた靴下は、サポートリーダーのIさんが奪還したようです。そのシーンは、自分は見ていませんでした。その時の私と言えば、のうのうとマッサージを受け続けていただけです。ただ体力の恢復に勤しんでいただけでした。

後に犬は飼い主の方が来て連れ戻し、すごすごとCPを後にしましたが、根津さんにとっては、身の毛もよだつようなサプライズイベントだったようです。

そんなこんなで、10分程度マッサージをしていただきました。

先程、サポートスタッフのマッサージはこの大会の醍醐味の1つと書きましたが、これは徒歩参加者だけでなく、サポートスタッフも同じです。

特に徒歩参加しかしたことがない方は、サポートスタッフが相当大変なことを知らないかもしれません。

どういうことかというと、マッサージをすること自体がとても体力がいることで、相当疲労がたまるそうです。あるサポートスタッフは、次の日に腕がひどい筋肉痛になったといいます。

当然、自分も本部待機ばかりしていた過去3回でしたから、サポートの方がマッサージで疲れてしまうというのは話としては聞いていても、実際に体験したことはありません。

徒歩参加の方からすれば、各CPで1回のマッサージですが、サポートスタッフからすれば、何十人の方をマッサージするわけです。確かに疲れて当然でしょう。

しかし、「徒歩参加の方にゴールしてほしい」という願いのもとでマッサージを行うわけですから、サポートスタッフだって必死でマッサージします。

そもそも、マッサージ以上に、徒歩参加者がCPにつくこと自体が、サポートスタッフにとって、非常につらい時間です。

初めのうちはみんな元気なので、徒歩参加者がCPに着くことが嬉しいという気持ちが大きいですが、コース半分を超えてくると、ほとんどの人がヘトヘトになって歩いていますから、待っている方は気が気でなりません。

あと何人くらいの人が来るのか、体は大丈夫か、など、後半になればなるほど、精神的な負担も大きくなってくるのがサポートの特徴です。

しかもサポートスタッフの半分くらいの方は、実際にコースを歩かれた方です。どの場所がつらいだろうとか、今までの経験が蘇るのです。

来年、自分がサポートスタッフに回ったなら、もしかしたら、そのつらさや苦痛、大変さを、存分に味わうことができるのかもしれません。

私の後は、根津さんがマッサージを受けます。

私はその時、頂いていた氷嚢のようなものを内モモにつけようと思っていました。前述のとおり、かなり内側のモモが張っていたので、少しでも冷やしたかったのです。

「これって、第2CPの時に自ら禁じていたコールドスプレーと同じじゃないのか」というツッコミが来そうですが、自分の中ではセーフです。もっと妥協に恋をさせてください。妥協が愛おしいんです。

で、ツナギの中から直に氷嚢を入れてのんびりと横になったところ、惨事は起こりました。

氷嚢とはいえ、ビニールに水と氷を入れて縛っただけのものですので、口を逆さまにしたら水がこぼれてしまう構造のようです。

何が言いたいかというと、ツナギの中で氷嚢が反乱を起こし、縛っている口からドクドクと冷たい水が噴出してきたのです。

つまり、私のツナギはおろか、アンダーウェアにまでも水が浸食してしまいました。

ああ!そんなところは保湿する必要はないのに!

モイスチャーという言葉は女性のお肌が一番相応しいのに、男の股間のスキンケアなんて、こんなところでは場違い甚だしい!

そんなことでギャーギャー言っている私に構ってくれる人はおらず、何ともいたたまれない空気だけが、自分の周りには漂っていました。

そうこうしているうちに、CPには続々と徒歩参加者が来ます。子供から大人まで、たくさんの人がここのCPに立ち寄り、出発していきます。

右のマッサージをしている方(以下、栗総帥)は、ここから最終CPまで、ずっと張り付くという偉業を達成することになります。

そういった感じで、1時間強、第5CPには滞在しました。

そもそも、我々の大きなモチベーションを保っていたCPでしたので、本当はもっと滞在したかったです。

が、自分があまりにロクでもないことでギャーギャー言っていたものですから、さすがにCPにいたみなさまもシビレを切らしたのでしょう。

サポートリーダーのIさんと栗総帥さんから、

「早く出ていけ!(笑)」

と言われてしまいました。

そう言われてしまっては、もうここに居場所はありません。出発せざるを得ませんでした。

すごすごと、いたたまれない気持ちで第5CPを後にした私は、根津さんと今後のプランに関して話し合います。

以前の記事にて、第3CP→第4CPのスティントは本コースで一番長いと書きましたが、今から続く第5CP→第6CP、第6CP→第7CPも同様に長距離のスティントです。

第5CP→第6CPは、ほぼ景色の変わらない直線が続き、第6CP→第7CPは、本コースの心臓破りである摩周の山登りがあります。

つまり、コース的に考えてみれば、ここからしばらくは大変な道のりが続くのです。

しかも、今まで第5CPにモチベーションを保ってきた我々は、これからのCPに対してのモチベーションを用意しておらず、何を目標にして歩くのかが重要なカギとなっていました。

ここで話し合った結果は、

 ・第6CPではとりあえずソバを食べて、状況によって長期滞在か否かを判断する
 ・第7CPは希望が持てそう。でも、第5CPほどのモチベーションはまだあがらない

などといったものです。

とりあえずは、今続く道を進む他には何もないので、歩を進めていくことに変わりはないのでした。

やはり第5CPを出た後の道は、淡々としたものでした。

始めの1kmくらいこそカーブがあるものの、交差点を右折した後は、他の方から言わせるところの「地獄のような直線」が続いています。

前の人は見えるのに、一向に近づいていけないというもどかしさや不安が精神面にダメージを加えていくのでしょう。

そんな中でも我々は臆することなく、ほぼ今まで通りの感じで進みます。

敢えて「ほぼ」と書いたのは、2人とも確実にペースが落ちてきていたのを実感していたからです。

今までは、各スティントの中で数名の方たちの先を行かせていただいたのですが、ここ第5CP→第6CPでは、数十分経っても、前は見えても先には行けない状態が続きました。

想像では、序盤が時速5~7kmで、このあたりの時速は4kmくらいであろうという見方でした。

しばらくしたら、1人の参加者の前に行かせていただくことになりました。

第4CP→第5CPに行く際にも1度お先に失礼した方ですが、ドロンジョ様です。

我々「どうもー、お疲れ様です。」

ドロンジョ様「ああ、おつかれさまですー。早いですねぇ!」

我々「いやいや、そんなことはないです。適当なペースで歩いてますから…。それじゃお先に失礼しますね。」

ドロンジョ様「はーい、どうもー。」

この時の私は、我々2人とドロンジョ様の3人が、この大会の最後の時を共にするなど、全く思っていませんでした。

本当にしばらく道は真っ直ぐです。

真っ直ぐな中でも、途中に交差点のようなものがあったり、「凹凸あり」なんて注意喚起をされたりです。

Googleマップで調べてみたら、4km強も直線が続いていたんですね。とはいえ、ずっと有意義な話をしていたので苦ではありませんでした。

しばらく歩いていると、右側に大会の看板が出てきました。看板といっても、今までとは趣の異なるもので、

「自由にコメントを書いてください」

といったものでした。

そこに、とても素晴らしいリリックがしたためられていたので是非とも紹介したいです。

それは、

「後ろ、笑いすぎ!!」

私と根津さんは

「ブルルァーヴォ、ブルルァーヴォ」(Bravoのこと。ルの部分は巻き舌)

と、狂喜乱舞いたしました。

もともとこの記事を書いた時には「うしろの二人、うるさい!!」というコメントが書かれていたと記していたのですが、翌年2010年5月の備品チェックにて、異なるコメントであったことが判明したため、内容を修正しました。上記の写真も2010年5月に備品倉庫で撮影したものです。
(2017/7/17追記)

これのおかげで、相当勇気づけられたのです。モチベーションの行き先に悩んでいたことなど、少し忘れてしまうほどでした。

陽がそろそろ地面に落ち切ろうとする頃、道路に右側にユーカラ警備さんが見えてきました。ユーカラ警備さんが見えたということは、直線も終わりを告げます。

ユーカラ警備さんに挨拶をしたら、「ゴミがあるならもらうよ」と話しかけられました。

確かにその時、私の右手には空のペットボトルがありました。これはありがたい。お言葉に甘えて、ゴミを渡しました。

ユーカラ警備さんのいたところを左に曲がると、また1km程度、直線があります。

しかし、今までの直線に比べたらなんてことはありません。

目の前に大きな国道、391号線があるのですが、車の往来が見えています。

左側を見てみると、木々の間からの落日を望むことができました。写真の撮影を試みましたが、手ブレを起こしてしまったので全て消去してしまいました。

間もなく、国道391号に到達しました。

ここから、いくつか交差点を曲がります。ここは大会屈指の曲がり角ゾーンです。

国道を少し歩いたら左に曲がります。左に曲がると、釧網本線の踏切があります。踏切を渡って間髪いれずにすぐ、今度は右に曲がります。この右に曲がるカーブの端には、第6CPである「渡辺体験牧場」の看板があります。

ここを曲がってしばらく歩いていると、母子の参加者がいらっしゃいました。その方たちは昨年も参加されていた方たちでした。

お母さんと次男の二人で歩いていたのですが、次男は我々が近づく前からお母さんに「疲れた~、疲れた~」と連呼していました。

この母子に合流し、第6CPまでそんなに遠くないのはわかっていたので一緒に行くことにしました。

次男は「疲れた~」と連絡しているくせに、ずっと私や根津さんに絡んで、構って欲しそうな素振りをします。

お母さん「この子、スタートからずーっとこの調子で私に絡んでくるんですよ!」

お母さんは大変です。

次男「もう疲れた~!」

お母さん「CPにはお兄ちゃんいるから、もうちょっと頑張ろう!」

そう、長男が次のCPで待っているのでした。

ちなみにお兄ちゃんとはいえ、まだ小学生の長男は一昨年と去年、既にこの大会のコース完歩を果たしています。今回はサポート参加していて、我々は第1、第4CPで会っていました。

CPに辿り着く直前の道は、少しだけ上り坂になっています。それが次男にとっては、なおさら不快な要因なんでしょう。

しかしそんな坂も長くは続きません。坂を登り切ったら、明かりが見えてきました。

もう陽は落ちて、あたりは夜の帳(とばり)に包まれてきましたので、その明りは小さいながらも、確実に我々の行く先を示しています。

第6CPに入ろうという時、長男が、サッカーボールと共に現われました。それを見た次男は、今までの「疲れた~」が嘘のようにサッカーボールに向かって走っていきます。子供って、やっぱり無限の力を備えてるな…。

そんな、私には似つかわしくないようなほのぼの感で、19:26、第6CPに到着しました。

第6CPで長期滞在するか否か、それは、第6CPのメインディッシュである「摩周そば」をいただいてから考えることにしましょう。

【第6CP→第7CP】山を登るダメ人間 につづく