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[ep.3]催しは想定外に/超克的なリアル

【今回のあらすじ】
サポートスタッフが散開しました。私は本部に残り、PCに噛りついて情報収集します。

【前回までのあらすじ】
[ep.2]後悔とオンラインMTGと山わさびと
サポートスタッフがオンラインでMTGを実施しました。そして徒歩参加の先頭が、硫黄山を経由して川湯温泉足湯交差点に戻ってきました。

【メインテーマ】
100km歩こうよ大会 in 摩周・屈斜路の実行委員である私・便艦(べんかん)が「運営・サポートスタッフ」として、何をして何を感じたかを主観的に書き記すことを試してみるものです。


●予期せぬ訪問(臨時OTS)

徒歩参加の先頭の方を見送った後、運営・サポートスタッフ一行は本部の川湯ふるさと館に戻りました。歓談を交えながらサポートスタッフの今後の動きを話し合う中、ふるさと館の玄関から館内に入ってこようとしている影が見えました。どうやらサポートスタッフではなさそうです。よく見てみるとゼッケンを携えている人でしたので、徒歩参加者であることがわかりました。

忘れ物をしたのだろうか?と首を捻っているうちに、徒歩参加者は一目散にお手洗いに向かっていました。ああ、用を足すためにふるさと館に立ち寄ったのだと納得しました。

正直に言いますと、スタートしてから1時間程度の間に川湯ふるさと館をOTS(オフィシャルトイレスポット)として利用されるという想定をしておりませんでした。この部分は私が4年前に徒歩で参加した時にも同じルートでしたが、当時の私には、川湯ふるさと館に立ち寄るという考えには及びませんでした。

スタートしてからR391・硫黄山を経由して、川湯温泉足湯前交差点に戻るルート

これは私の考えが甘かったと言わざるを得ません。スタートしてから時計回りに1週するようなコース設定のため、用を足したくなったのであれば、川湯ふるさと館はちょうど立ち寄りたくなる場所だったのでしょう。立ち寄りたくなる理由として想定されるのは、曇天かつ気温が低かったことに因るものと想定されます。

その後も代わる代わる、徒歩参加者が川湯ふるさと館のトイレを利用していきました。約10名くらいの方が利用されたでしょうか。来年以降、スタート直後の川湯ふるさと館をOTSとして活用する必要性を認識するべき出来事でした。

●羅針盤の不足、通信環境の向上

[ep.2]でも書き記したのですが、スタートしてからしばらくの間、サポートスタッフは各CPの配置時間に達するまでは比較的時間があります。最初は準備に勤しみ、ある程度目処がついたら歓談を楽しみます。

準備に勤しむ運営・サポートスタッフのみなさま

準備を行う中で、来年に向けての課題がありました。サポートスタッフには以下のような時間割(通称「サポート振り分け」)が配布されるのですが、この印刷物が人数分に割り振れるほどの数量でなかったことです。来年は多めに印刷しておくべきだと自戒しました。

「サポート振り分け」の上半分をトリミングしたもの。個人情報を一部ぼかしています。

このデータはサポートスタッフにとっての羅針盤です。自分が何処に何時に移動するべきかを記載しているものです。これがないと、CPごとに人員不足が発生して運営が儘ならなくなります。

応急処置として、ブリントデータのPDFとエクセルファイルをLINEで共有するようにしました。ペーパーレスが実現できるようなインフラが整ってきたことに、古い言葉でいうところの「IT革命」を実感しました。

4年ぶりに開催できた本大会ですが、インフラ面で大きく変わった部分として、川湯ふるさと館でそこそこ高速なFree Wifiが利用できるようになったことが挙げられます。以前から「KAWAYU FREE Wifi」というものはありましたが、残念ながら接続や通信速度が不安定でした。今年は別の新しいFreeWiFiが設置されたようで、スタートから数時間後に測定したところ実測で「下り90Mpbs」ほど出ていました。Free WiFiであるが故に本来であればVPNを噛ませるのがベストでしょうが、個人的にはあまりFreeのVPNを信用していないので見送りました。無料VPN利用とFreeWiFiへの直アクセス、どちらの方が低リスクなんでしょうね。

●最初のリタイア…止まぬ逡巡

徒歩参加者がスタートしてから2時間弱、最初のリタイア者が発生しました。川湯ふるさと館にて我々に直接リタイアを告げ、そのまま帰宅されました。

運営・サポートスタッフとしてリタイアの方を受け入れるとき、私はリタイアされた方がどのような考えに至ってリタイアという結果を決断したのかを逡巡します。私の考えでは、「よく頑張りました」「今回は残念でしたね」「次回はリベンジしましょう」などという言葉は、リタイアという結果の表層に漂う綻んだ上澄みを掬い上げたような、本質を忌避する単語の羅列のような気がしています。だからといって、リタイア者にその場ではどのような言葉をかければいいのか答えは出ていません。沸き立つ連綿としたリタイアに対する考えを説き続けるのは、リタイア直後の参加者には嬉しいものではないはずです。この答えを探すことも一興なのでしょうか。

ところで私が4年前に徒歩参加した時、1度リタイアしようか迷った場面がありました。実際にはリタイアすることをやめたのですが、リタイアに至るための逡巡こそが本大会の醍醐味の一つでもあるはずです。この経験を経て臨んだ今年の大会では、かつてリタイアを検討した者としてリタイア者を受け容れることの重要さや尊さに着目することも、運営・サポートスタッフとして有意義な大会への臨み方なのかもしれません。

●コントロールセンタースタッフ

スタートから約1時間半、AM6:30を過ぎた頃に最後尾の方が川湯温泉足湯前交差点を過ぎていきました。サポートスタッフのみなさまも川湯ふるさと館を後にする方が増えて、館内は少し静けさを感じるようになってきました。ここから明日のグランドフィナーレまでの間、私はほとんど定位置と言ってもいい、自称「コントロールセンター」でPCとにらめっこしながら過ごすことになります。

黄枠で囲んだ部分:自称「コントロールセンター」

徒歩参加者の方はこの先「OTS(オフィシャルトイレスポット)砂湯」「OTSコタン温泉」を経由して、最初のCP(チェックポイント)である「和琴半島」を目指します。巡回担当のサポートスタッフからLINEにて、徒歩参加者の位置や天候について報告が上がってきます。砂湯のあたりは相当風が強いことに加えて寒いことや、屈斜路湖の湖面が波立っていることなど…。屈斜路湖は海ではなく湖なので、波が立つのは結構珍しい気がします。

波打つ屈斜路湖

私はLINEで投稿された徒歩参加者の位置とスタートからの距離を計算して時速を試算し、最初の方が第1CPの和琴半島に到着する時刻を予想していました。1CPのオープン時刻はAM9:00ですが、計算上ではもう少し早く到着しそうな見込みでした。

本部待機のサポートスタッフである私は、現場がどのようになっているのかを、文字情報や画像・動画でしか知りえる手段がありません。数年前までは通信手段がほぼ電話のみだったのでその当時に比べれば相当な進歩だと思いますが、それでも得られる情報は「現地のスタッフが体感したリアル」よりも極めて限定されたものです。

現場に居られないことを悲観してはいません。実はこの状況は言い方を変えると、本部スタッフにしか味わえない特権という見方が出来ます。集められた情報を紡ぎながら大会を俯瞰して覗いているような気分のまま、コントロールセンターにいる自分を実感するという超克的で鮮やかな「リアル」。この事象を楽しめることに感謝することが、私の役割や使命であると自覚しています。

●想像の地、和琴半島への憧れ

AM8:00を過ぎた頃、本部・川湯ふるさと館の館内には殆ど人がいなくなっていました。そんな中、私は残っていたうちの1人、実行委員会メンバーの事務局・炭田さんと話をしていました。炭田さんは数年前に参加してから、いつの間にか実行委員会の主要メンバーとなり、今では対外的なやり取りを行ったり財務を担ったりと、毎年大車輪の活躍を見せています。

ふとした会話の中で、私が今まで和琴半島に一度も足を踏み入れたことがないことを炭田さんに伝えると、「9:00頃までに川湯ふるさと館に戻ってきてもらえれば、視察に赴いても大丈夫ですよ」と提案してくれました。

実のところ、和琴半島がコースの一部になることが決まった時から、どうにかして和琴半島に行くことができないかを画策し、他の実行委員にも伝えていました。それでも実際に大会が始まると、サポートスタッフからの問い合わせ対応などが発生し、移動が難しくなるであろうというのは毎年のことです。

前項で「本部待機は私の特権」とか言っておきながら、気持ちは既に和琴半島に向かっていました。「恣意的な気持ちの揺れ具合ですら、この大会ならでは」などといった乱暴な理論を嬉々として振り回しながら、炭田さんの好意を甘受することを決意したのです。

[ep.4]憧れの地・和琴半島 につづく