答案講評例⑪:平成27年 意匠

 平成27年の意匠の答案は、偏差値としては54・55前後になるだろうと考えます。

 問I(1)において、イについて、「審査官の心証が覆らなかった場合」とありますが、どのような場合か具体的に書く必要があります。すなわち、「イがYに類似する場合(3条1項3号)」です。この法律判断を書いてはじめて、得点できます。解答の1(1)は問題文の引き写しからはじまっていますが、「イがYに類似する場合」を解答すれば、それで十分です。
 同日出願は、A・Bではなく、「A・C」ですね。意匠は問題文中の記号も多く、書き間違いしやすいので、記号は最後に見直すとよいでしょう。
 「放棄・取り下げはなされない」⇒「甲・乙の協議は不調・不発」とはダイレクトにつながりません。協議の結果「ハについて登録を受けます」と届け出た場合も、イについて拒絶されます(9条2項前段、17条1号)。

 一方で、ハ・ニについて、「イに係るAが、3①3で拒絶確定⇒Aに先願の地位がない」⇒他の要件満たせば、ハが登録。また、イ≠ニだから、A・Dは先後願関係になく、他の要件満たせば、ニも登録、という結論を、分けて書いたほうが読みやすいです。
 また、「この場合、乙は、ハ、ニについて、適法に受けうる(18条)」と書くと、断定を抽象的に避けている心証を抱かれかねません。それよりは、「他の要件を満たせば、登録される(18条)」と結論づけたほうが、少しは具体的なので、理解が伝わります。

 同日出願A・Cが双方拒絶⇒Cに先願の地位あり⇒D拒絶、の解答はOKです。「本意匠の表示を削除できるが」という点は、設問で問われていることに直接関係はないので、削ってしまってもOKです。

 問I(2)において、「否認できない⇒抗弁」の流れはよいです。「訴えられた場合、抗弁できる」という記載から、場面が把握できていることが伝わります。
 甲の「販売」は「譲渡」(2条3項)であることを示したほうがよいです。
 29条の2のあてはめ・趣旨はOKです。

 問II(1)において、8条について規範を示すと、費やす解答スペースが大きいです。対応のみを解答してしまってOKです。
 解答すると加点されるのは、補正後の意匠が、イ・ロが「統一があ」り、8条の要件を満たす、という、事案に即した「あてはめ」です。
 
 問II(2)では、甲の実施意匠(組物)と乙のニが非類似であるから、直接侵害を構成しない⇒26条、の順で解答したほうがよいです。
 警告の妥当性について、先後願で場合分けすると解答スペースが足りない場合は、「先願の場合のみ、妥当」とすればOKです。その分、開いたスペースで、利用侵害=先願に係る意匠の業としての譲渡である販売が制限される、ということを説明したいです。

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