【特29条の2】短答式試験で拡大先願(準公知)が苦手な受験生に向けた丁寧な解説【を書いてる途中】

弁理士試験の短答式試験では、特許法29条の2は必出と言っていい条文です。29条の2は、条文が長く、かつ、短答式試験で出題される場合は問題文が長文の事例形式で出題される場合が多いため、マスターできずに苦手意識を持っている受験生も多いです。

29条の2に関する短答式の問題を得点するには、2段階のステップを踏んでこの条文をマスターするのが近道です。

まずはじめに、29条の2は、先願に関する5つの適用要件(国際出願の場合は1つ増えて6つの要件、以下同じ。先願が国際出願の場合は別途詳述する。)についての知識をマスターしながら、問題文でこれらの要件を逐一チェックする習慣を身につけるのが第1のステップです。この第1のステップのマスター、すなわち29条の2の5つ要件のチェックが習慣化できるだけで正解できる問題も多数あります。

第1ステップだけで正解できる問題を演習することによって基礎固めができたら、応用問題として、先願が分割・変更された場合、先願が優先権主張を伴う場合をマスターします。これが第2のステップです。

そこで、平成20年から平成29年の11年分(平成29年の追試を含む)の過去問から29条の2に関する問題のみを抽出し、第1ステップの5つの適用要件を1つ1つ丁寧に解説することにします。その上で、応用問題として、先願が分割・変更された問題、先願が優先権主張を伴う問題の解説をします。

〔1〕 29条の2の骨格を理解する

はじめに、29条の2の生の条文を見ておきましょう。

29条の2 特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であって当該特許出願後に66条3項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行若しくは出願公開又は実用新案法14条3項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(36条の2第2項の外国語書面出願にあつては、同条1項の外国語書面)に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条1項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。

ご覧のように29条の2は非常に長い条文なので、骨格を理解するために条文を少しスリムにしましょう。

まずはじめは、先願が出願公開された場合のみを考えることにし、特許掲載公報が発行される場合についてはカットしましょう。

29条の2 特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であって出願公開又は実用新案法14条3項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(36条の2第2項の外国語書面出願にあつては、同条1項の外国語書面)に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条1項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。

少しスッキリしました。次に、先願が通常の特許出願の場合のみを考えることにしましょう。そうすれば、実用新案登録出願に関する規定と外国語書面出願に関する規定とを省いて理解することができます。

29条の2 特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願であって出願公開がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明(その発明をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条1項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。

ずいぶんスッキリしました。上記が29条の2の骨格部分です。


〔2〕 29条の2の5つの適用要件を記憶する

このスリムバージョンの条文に、29条の2の5つの適用要件がすべて含まれています。

29条の2 特許出願に係る発明が当該特許出願の(1)日前の他の特許出願であって(2)出願公開がされたものの願書に(3)最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明(その発明をした者が当該特許出願に係る発明の(4)発明者と同一の者である場合におけるその発明を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条1項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と(5)当該他の特許出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない

条文中でナンバリングした5つの要件について、思い出しやすいように短く抜き出しておくことにします。

【29条の2 5つの適用要件】
(1)⇒"先"願
(2)⇒(先願が)"公"開
(3)⇒当"初"明細書等
(4)⇒"発"明者非同一
(5)⇒"出"願人非同一

この5つの要件は、どんな問題が出題されても必ずチェックすることにしましょう。語呂合わせのほうが思い出せる人は、5つの要件の頭文字を取って、

「先・公・初・発・出」

とでも覚えてもよいでしょう。

ここまでが29条の2の問題を解くための準備です。

〔3〕 1つ目の要件:「先願」について理解すれば正解できる問題

29条の2に関する短答式試験の問題は、長文の事例問題のため複雑なように見えますが、問われていることは、

「先願が後願を排除できるか(先願が後願排除効を有するか)」

この1点です。そして、先願が後願排除効を有するためには、上述した5つの適用要件をすべて満たす必要があります。ということは、問題文に示されている事例において、5つの要件を1つ1つチェックすれば、適確に正誤判断ができるようになります。上記5つの要件には文言の解釈を伴うものもあるため、過去問の事例を題材としながら、各要件について1つずつ丁寧に見ていくことにしましょう。

1つ目は、「先願」についてです。

【例題1】平成20年〔15〕枝3
 特許法第29条の2(いわゆる拡大された範囲の先願)及び第39条(先願)に関
し、次のうち、誤っているものは、どれか。
 ただし、特に文中に示した場合を除き、出願は、外国語書面出願でも国際出願に係るものでも実用新案登録に基づく特許出願でも、分割又は変更に係るものでもなく、いかなる優先権の主張も伴わないものとする。また、明細書、特許請求の範囲又は図面についての補正は、行われないものとする。

3 甲は、特許出願Aをし、その願書に添付した特許請求の範囲に自らした発明イを記載した。乙は、特許出願Bをし、その願書に添付した特許請求の範囲に自らした発明ロを記載し、その明細書の発明の詳細な説明のみに、自らした発明イを記載した。A及びBは、同日に出願され、その後、出願公開がされた。この場合、AとBの双方について特許をすべき旨の査定がされることがある。

短答式試験の問題でも、論文式試験と同じように、事例問題が出題されたら必ず時系列を図示しながら考えることを習慣にしましょう。29条の2における5つの要件も、時系列を整理しながらチェックしていきます。

上記の問題において、時系列を整理する上でキーワードとなるのは、

「同日に」

という1語です。

3 甲は、特許出願Aをし、その願書に添付した特許請求の範囲に自らした発明イを記載した。乙は、特許出願Bをし、その願書に添付した特許請求の範囲に自らした発明ロを記載し、その明細書の発明の詳細な説明のみに、自らした発明イを記載した。A及びBは、同日に出願され、その後、出願公開がされた。この場合、AとBの双方について特許をすべき旨の査定がされることがある。

<図挿入>

甲の発明イに係る出願Aと、乙の発明ロに係る出願Bとは同日出願ですから、いずれの出願も29条の2の要件の1つである「先願」ではないことがわかります。そのため、出願Aも出願Bも、一方を拒絶引例として29条の2に基づいて拒絶されることはありません。ちなみに本問では、特許請求の範囲に記載された発明が異なるため、39条2項に基づいて双方が拒絶されることもありません。よって、「AとBの双方について特許をすべき旨の査定がされることがある」ため、この選択肢は正しいと判断できます。

この問題は「先願」の要件について問うている最も簡単な問題です。実際の本試験では、後願が新規性の喪失の例外(以下、「新喪例」という。)の手続きを伴っているケースが頻出です。次の問題を見てみましょう。

【例題2】平成20年〔15〕枝5
 特許法第29条の2(いわゆる拡大された範囲の先願)及び第39条(先願)に関
し、次のうち、誤っているものは、どれか。
 ただし、特に文中に示した場合を除き、出願は、外国語書面出願でも国際出願に係るものでも実用新案登録に基づく特許出願でも、分割又は変更に係るものでもなく、いかなる優先権の主張も伴わないものとする。また、明細書、特許請求の範囲又は図面についての補正は、行われないものとする。

5 甲は、自らした発明イについて雑誌に発表した後、発明イについて発明の新規性の喪失の例外(特許法第30条)の規定の適用を受けた特許出願Aをした。乙は、自らした発明イについて甲の雑誌の発表の日後Aの出願の日前に特許出願Bをした。この場合、Bについて出願公開がされても、Aは、 Bをいわゆる拡大された範囲の先願として同法第29条の2の規定により拒絶されることも、Bを先願として同法第39条の規定により拒絶されることもない。

この問題において、時系列を整理する上でポイントとなるのは、

「甲の雑誌の発表の日後Aの出願の日前に特許出願Bをした」

というフレーズです。

5 甲は、自らした発明イについて雑誌に発表した後、発明イについて発明の新規性の喪失の例外(特許法第30条)の規定の適用を受けた特許出願Aをした。乙は、自らした発明イについて甲の雑誌の発表の日後Aの出願の日前に特許出願Bをした。この場合、Bについて出願公開がされても、Aは、 Bをいわゆる拡大された範囲の先願として同法第29条の2の規定により拒絶されることも、Bを先願として同法第39条の規定により拒絶されることもない。

<図挿入>

甲の出願Aは、新喪例の手続きを伴っていますが、乙の出願Bの後願です。

ここで、乙の出願Bについて29条の2の5つの要件をチェックしましょう。

乙の出願B:
(1)願(後願は甲の出願A)
(3)当明細書等に発明イが記載(甲の出願Aは発明イについての出願)
(4)発明イの明者は、後願Aでは甲、先願Bでは乙 ∴発明者非同一
(5)願人は、後願Aが甲、先願Bが乙 ∴出願人非同一

ということは、(2)先願Bが出願公開されれば、甲の後願Aは乙の先願Bを拒絶引例として、29条の2に基づいて拒絶されます。

ところが問題文には、

「Aは、 Bをいわゆる拡大された範囲の先願として同法第29条の2の規定により拒絶されることも、ない。」

とあるため、この選択肢は誤っていると判断できます。

同じパターンの事例問題は、過去10年でさらに3回(も)出題されています。平成26年の問題から見ていくことにしましょう。

【例題3】平成26年〔50〕枝イ
〔50〕特許の要件に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。

(イ) 甲は、平成24年7月12日に日本国内で開催された学会で自らした発明イを発表し、平成24年12月10日に発明の新規性の喪失の例外の規定(特許法第30条)の適用を受けて、発明イに係る特許出願Aをした。一方、乙は、平成24年10月12日に自らした発明イに係る特許出願Bをした。この場合、出願Aは出願Bがいわゆる拡大された範囲の先願(特許法第29条の2)であるとの拒絶理由を有することがある。

直近5年の短答式試験の出題傾向として、29条の2に関しては、論文式試験と同様に日付が入った事例形式で出題されています。問題文に日付が入っている場合は、必ず古い順に日付をナンバリングするようにしてください。問題文が古いことから順に説明されているとは限らないことにくれぐれも注意が必要です。

(イ) 甲は、①平成24年7月12日に日本国内で開催された学会で自らした発明イを発表し、③平成24年12月10日に発明の新規性の喪失の例外の規定(特許法第30条)の適用を受けて、発明イに係る特許出願Aをした。一方、乙は、②平成24年10月12日に自らした発明イに係る特許出願Bをした。この場合、出願Aは出願Bがいわゆる拡大された範囲の先願(特許法第29条の2)であるとの拒絶理由を有することがある。

この問題でも、問題文では①→③→②の順で書かれていますから、時系列を図示する際には①→②→③の順に整理し直す必要があります。

<図挿入>

問題文の事例を時系列で並べ替えるとわかるように、甲の出願Aは、新喪例の手続きを伴っていますが、乙の出願Bの後願です(この事例は、平成20年〔15〕枝5と全く同じパターンです)。

ここで、乙の出願Bについて29条の2の5つの要件をチェックしましょう。

乙の出願B(②):
(1)願(後願は甲の出願A(③))
(3)当明細書等に発明イが記載(甲の出願Aは、発明イ係る出願) (4)発明イの明者は、後願Aでは甲、先願Bでは乙 ∴発明者非同一
(5)願人は、後願Aが甲、先願Bが乙 ∴出願人非同一

ということは、(2)先願Bが出願公開されれば、甲の後願Aは乙の先願Bを拒絶引例として、29条の2に基づいて拒絶されます。

この点について、問題文では、

「この場合、出願Aは出願Bがいわゆる拡大された範囲の先願(特許法第29条の2)であるとの拒絶理由を有することがある。」

とあるため、この選択肢は正しいと判断できます。

平成29年の追試でも、まったく同じパターンの事例問題が出題されています。

【例題4】平成29年【特許・実用新案】17
 特許出願に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
 ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、査定又は審決が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないものとする。

(ハ) 甲は、自らした発明イについて、平成27年5月15日に学会で論文Xとして発表した。その後、甲は、特許法第30条に規定する新規性喪失の例外の規定の適用を受けて、平成27年9月18日に発明イについて特許出願Aをし、その出願の日から30日以内に同条第3項に規定する証明書を提出した。一方、乙は、平成27年8月25日に自らした発明イについて特許出願Bをした。
 そして、出願A及び出願Bがともに審査された場合、出願Bには論文Xを刊行物とする同法第29条第1項の規定に基づく拒絶理由が通知されるが、出願Aには、出願Bをいわゆる拡大された先願として同法第29条の2の規定に基づく拒絶理由が通知されることはない。  そして、出願A及び出願Bがともに審査された場合、出願Bには論文Xを刊行物とする同法第29条第1項の規定に基づく拒絶理由が通知されるが、出願Aには、出願Bをいわゆる拡大された先願として同法第29条の2の規定に基づく拒絶理由が通知されることはない。

問題文は平成26年〔50〕枝イよりもさらに長くなっていますが、解き方は全く同じです。まずは問題文に日付が入っていますから、必ず古い順に日付をナンバリングしていきましょう。

(ハ) 甲は、自らした発明イについて、①平成27年5月15日に学会で論文Xとして発表した。その後、甲は、特許法第30条に規定する新規性喪失の例外の規定の適用を受けて、③平成27年9月18日に発明イについて特許出願Aをし、その出願の日から30日以内に同条第3項に規定する証明書を提出した。一方、乙は、②平成27年8月25日に自らした発明イについて特許出願Bをした。
  そして、出願A及び出願Bがともに審査された場合、出願Bには論文Xを刊行物とする同法第29条第1項の規定に基づく拒絶理由が通知されるが、出願Aには、出願Bをいわゆる拡大された先願として同法第29条の2の規定に基づく拒絶理由が通知されることはない。

<図挿入>

問題文では①→③→②の順で書かれていますから、時系列を図示する際には①→②→③の順に整理し直します。

問題文の事例を時系列で並べ替えるとわかるように、甲の出願Aは、新喪例の手続きを伴っていますが、乙の出願Bの後願です。ということは、この事例は平成20年〔15〕枝5や平成26年〔50〕枝イと全く同じパターンですね。

そうなると、この後にやることは同じです。乙の出願Bについて29条の2の5つの要件をチェックしましょう。

乙の出願B(②):
(1)願(後願は甲の出願A(③))
(3)当明細書等に発明イが記載(甲の出願Aは、発明イについての出願)
(4)発明イの明者は、後願Aでは甲、先願Bでは乙 ∴発明者非同一
(5)願人は、後願Aが甲、先願Bが乙 ∴出願人非同一

ということは、(2)先願Bが出願公開されれば、甲の後願Aは乙の先願Bを拒絶引例として、29条の2に基づいて拒絶されます。

ところが問題文には、

「出願Aには、出願Bをいわゆる拡大された先願として同法第29条の2の規定に基づく拒絶理由が通知されることはない」

とあるため、この選択肢は誤っていると判断できます。

ちなみに、乙の先願Bは、甲が発表した論文Xを拒絶引例として29条1項3号に基づいて拒絶されるため、問題文の、

「出願Bには論文Xを刊行物とする同法第29条第1項の規定に基づく拒絶理由が通知される」

という記載は正しいです。

平成25年〔37〕枝ホも、全く同じパターンの事例問題ですが、時系列の記載が問題文の頭書と選択肢とに分かれている点が異なります。

【例題5】平成25年〔37〕枝ホ
 特許法第29条の2(いわゆる拡大された範囲の先願)に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っているものは、いくつあるか。
 以下において、甲は、自ら発明イ及び発明ロを完成して、平成24年6月1日に特許出願Aをしたものとし、乙は、自ら発明イを完成して、平成24年7月1日に発明イに係る特許出願Bをしたものとする。
 ただし、特に文中に記載した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際特許出願、実用新案登録に基づく特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、又は出願の変更に係る特許出願ではなく、放棄、取下げ又は却下されておらず、査定又は審決は確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないものとし、文中に記載した優先権の主張の取下げはしないものとし、また、特許を受ける権利の承継はないものとする。

(ホ) 出願Aの願書に最初に添付した明細書には発明イが記載され、出願Bは特許法第30条に規定する発明の新規性の喪失の例外の適用を受けた特許出願であり、出願Aは出願Bの出願後に出願公開された。この場合、出願Aは、出願Bに対し特許法第29条の2に規定するいわゆる拡大された範囲の先願としての地位を有しないことがある。

問題文の頭書に出願の先後願が日付入りで示されていますから、忘れずにナンバリングをしておきましょう。

 以下において、甲は、自ら発明イ及び発明ロを完成して、①平成24年6月1日に特許出願Aをしたものとし、乙は、自ら発明イを完成して、②平成24年7月1日に発明イに係る特許出願Bをしたものとする。

 この問題では、甲の出願Aが先願(①)で、乙の出願Bが後願(②)です。頭書には(4)発明者に関する要件と(5)出願人に関する要件とに関して条件が記載されていますから、まとめてチェックしておきましょう。

まず(4)発明者については、

甲は、自ら発明イ及び発明ロを完成
乙は、自ら発明イを完成

とあるため、(4)発明イについては発明者は非同一です。

次に(5)出願人については、

(特に文中に記載した場合を除いて、)特許を受ける権利の承継はないものとする。

とあるため、問題文に特記がない限り、(5)出願Aと出願Bが出願人同一ではないものとします(実際に枝ホには、出願人の名義変更に関する記載はありません)。

ここまでの内容から、甲の出願Aについて、29条の2の5つの要件をチェックしておきましょう。

甲の出願A(①):
(1)先願(後願は乙の出願B(②))
(4)発明イの発明者は、先願Aでは甲、後願Bでは乙 ∴発明者非同一
(5)出願人は、先願Aが甲、後願Bが乙 ∴出願人非同一

問題文の頭書から分かることは上記の3つの要件に関してです。ということは、枝ホの問題文を読んで、(2)出願公開についてと(3)当初明細書等の記載についての、残り2つの要件をチェックすれば、この選択肢の正誤判断ができます。なお、問題文の頭書には、

「乙は、発明イに係る特許出願Bをした」

とあることから、(3)の当初明細書等の要件については、甲の先願Aの当初明細書等に発明イが記載されているかをチェックすることになります。

そこで、選択肢を読むと、

(ホ) 出願Aの願書に最初に添付した明細書には発明イが記載され、出願Bは特許法第30条に規定する発明の新規性の喪失の例外の適用を受けた特許出願であり、出願Aは出願Bの出願後に出願公開された。この場合、出願Aは、出願Bに対し特許法第29条の2に規定するいわゆる拡大された範囲の先願としての地位を有しないことがある。

とあり、(2)先願Aが公開されており、(3)先願Aの当初明細書に発明イが記載されていることが分かります。

<図挿入>

改めて5つの要件についてまとめると、

甲の出願A(①):
(1)願(後願は乙の出願B(②))
(2)先願Aが(後願Bの出願後に)
(3)当明細書等に発明イが記載(乙の後願Bは、発明イに係る出願)
(4)発明イの明者は、先願Aでは甲、後願Bでは乙 ∴発明者非同一
(5)願人は、先願Aが甲、後願Bが乙 ∴出願人非同一

であるのに対し、問題文には、

「この場合、出願Aは、出願Bに対し特許法第29条の2に規定するいわゆる拡大された範囲の先願としての地位を有しないことがある。」

とあるため、この選択肢は誤っていると判断できます。

以上の通り、29条の2の5つの要件のうち、1つ目の要件である「先願」について、29条の2に関する短答式試験の過去問を題材に解説しました。上記の過去問を通じて、29条の2関する短答式の事例問題を正解する上での基本である、

「5つの適用要件のチェック」

を徹底するのが、29条の2をマスターする第1歩となります。


〔4〕 2つ目の要件:「出願公開」について理解すれば正解できる問題

重要なことなので繰り返しますが、29条の2に関する短答式試験の問題において問われていることは、

「先願が後願を排除できるか(先願が後願排除効を有するか)」

この1点だけです。そのため、とにもかくにも問題文中の出願について、

「どちらが先願でどちらが後願か」

は、正確に把握する必要があります。もしあなたが問題文に示された2以上の出願について先後願の判断が素早くできないならば、上記〔3〕 1つ目の要件:「先願」の解説をする際に取り上げた過去問を題材に、繰り返し図を書きながら解いて、時系列の整理の仕方をマスターするようにしましょう。

問題文中の出願について先後願判断ができるようになったところで、29条の2の5つの適用要件のうち、2つ目の要件である「出願公開」について見ていきましょう。

過去問を例題とした解説に入る前に、念のため29条の2の条文(ただしスリムバージョンです)と、5つの適用要件をもう1度復習しておきましょう。

29条の2 特許出願に係る発明が当該特許出願の(1)日前の他の特許出願であって(2)出願公開がされたものの願書に(3)最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明(その発明をした者が当該特許出願に係る発明の(4)発明者と同一の者である場合におけるその発明を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条1項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と(5)当該他の特許出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない

条文の文言を覚えやすいようにコンパクトにまとめると、

【29条の2 5つの適用要件】
(1)⇒"先"
(2)⇒(先願が)"公"
(3)⇒当"初"明細書等
(4)⇒"発"明者非同一
(5)⇒"出"願人非同一

でしたね。

他の条文もそうであるように、29条の2もまた、これら5つの要件がすべてそろわないと、後願を排除するという法的効果は現れません。この点について最もわかりやすく正誤判断できるのが、(2)の出願公開の要件です。次の例題を見てください。

【例題6】平成26年〔47〕枝ロ
 特許法第29条の2(いわゆる拡大された範囲の先願)に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っているものは、いくつあるか。
 ただし、特に文中に記載した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願、又は実用新案登録に基づく特許出願ではなく、放棄、取下げ又は却下されておらず、査定又は審決が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないものとし、文中に記載した優先権の主張の取下げないものとする。

(ロ) 出願Aの願書に最初に添付した明細書には発明イが記載され、出願Bは特許法第30条に規定する発明の新規性の喪失の例外の適用を受けた特許出願であり、出願Aは出願Bの出願後に出願公開された。この場合、出願Aは、出願Bに対し特許法第29条の2に規定するいわゆる拡大された範囲の先願としての地位を有しないことがある。



〔5〕 3つ目の要件:「当初明細書等の記載」について理解すれば正解できる問題


〔6〕 4つ目の要件:「発明者非同一」について理解すれば正解できる問題


〔7〕 5つ目の要件:「出願人非同一」について理解すれば正解できる問題


〔8〕 先願が外国語書面出願の場合


〔9〕先願が外国語特許出願の場合


〔10〕先願が出願分割されている場合


〔11〕 先願が出願変更されている場合


〔12〕 先願が46条の2の出願の場合


〔13〕先願が優先権主張を伴っている場合


〔14〕 先願が優先権主張を伴い、かつ、出願分割されている場合


〔15〕 先願が優先権主張を伴い、かつ、外国語書面出願である場合


〔16〕 先願が複数の優先権主張を伴っている場合




















 







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