答案講評例③:平成24年 商標

 平成24年の商標については、ボーダーライン付近か、ボーダーをやや下回る答案であると評価します(偏差値でいうと52~54あたり)。
 
 問I1について、3条1項柱書の趣旨は、「使用をする商標」(3条1項柱書)には、使用する意思がある商標も含まれていることを明示したほうがよいです。
 また、1行目と最終の行が重複しているので、1行目は削って大丈夫です。

 問I2について、なぜ品質の誤認が生じると考えられるのか、具体的にあてはめをしたほうがよいです。具体的には、「ABCチョコ」がチョコレート以外の菓子に使用された場合、当該菓子がチョコレートであると「商品の品質」の「誤認を生ずるおそれがある」(4条1項16号)から、という理由付けを示せるとよいです。
 補正については、「出願の審査係属中に」と、時期的要件を示したほうが良いです。
 8条2項については、問題文に両商標が「互いに類似する」と明示されていますから、類否判断は不要です。
 なお、商標の類否判断をする際は、称呼・観念・概観の少なくとも1つにした上で、「全体として類似する」との結論を示しましょう。
 続いて、本問における8条2項に基づく拒絶理由の解消策は、協議の届け出(8条4項)、くじ(8条5項)の他にも、丙の出願取り下げ・放棄(8条3項)、丙の出願に係る指定商品の補正、も考えられます。

 問I3について、登録性の判断基準時が基礎出願時であることを明示したほうががよいです。日付だけではなく、その日付が何なのか、法律に基づいて判断できているかを示す必要があるからです。
(日付を示さずに、「基礎出願時」のみを答えるのでもOKです。)
 15条の3に関する記載はOKです。ただし、丙の先願商標が登録されているかは問題文に明示がないため、登録されていることも想定されます。そのため、想定される拒絶理由としては4条1項11号(15条1号)にも言及したほうがベターです。

 問IIについて、問われているのは、「どのような審判を請求することができるか」であって、問題文では拒絶理由通知が来ているとも書いていないし、拒絶理由通知の対応も問われていません。よって、事前検討の部分は不要です。
 なお、審査の中止(準特54条2項)は、「申立て」と書いてしまうと手続であるかのように読めるため、意見書における主張の1つとして解答したほうがよいです。
 不正使用審判の請求(53条)については、丙の二段書きからなる使用商標と、甲の登録商標の類否は、問題文からは不明です。よって、根拠なく「類似すると考えられる」と書くのではなく、他の要件について当てはめたうえで、「(両商標が)類似するならば、請求できる」と、条件付きで解答したほうが無難です。
 
 商標についても、意匠と同様、答案の完成度の高さの勝負になることが予想されます。時間的な余裕はあるようなので、答案構成段階で問われている事項のみを項目として選ぶようにし(余事記載の防止のため)、その分、要件の検討(あてはめ)をできる限り充実させると、得点に結びつくと考えます。

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