平成29年度 【意匠】問8の枝1:"じっくり解説" 弁理士試験 短答式 本試験

【問8】の解説に入りましょう。

【問8】
意匠の無効審判又は意匠権の消滅に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。
1 本意匠とその関連意匠が登録されている場合で、後になって両者の間に類似性がないと認められたときでも、そのことは当該関連意匠登録の無効理由にはならない。
2 共有にかかる意匠権の場合、無効審判請求にあたっては、共有者全員を被請求人としなければならない。
3 冒認出願を理由とする無効審判請求は、当該意匠登録に係る意匠について意匠登録を受ける権利を有する者しかできない。
4 ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際登録を基礎とした日本国の意匠権は、その基礎とした国際登録が消滅した後であっても、なお存続する。
5 無効審判において審判の対象となっている意匠権の通常実施権者も、意匠権者を補助するため、その審判に参加することができる。

 【問8】は、「枝4」を除いて意匠登録無効審判に関する出題が4枝続いてます。4つの選択肢はともに、条文レベルの設問であることは一瞥すれば分かりますから、これら4枝をまとめて正誤判断するのが早いでしょう。

一方で、「枝4」は国際意匠登録出願(ジュネーブ改定協定)に関する出題です。平成30年以降の本試験では、「枝4」のような国際出願系の設問も、迷わず正誤判断出来るレベルにまで、実力を養っておく必要があります。

 もっとも今年は、まだ意匠の国際出願について準備に本腰を入れてなかった受験生も一定数いたことでしょうから、「枝4」を見て思わず物怖じしたくなる気持ちもわからなくはないです。

 本題に戻って、「枝1」の解説をします。

1 本意匠とその関連意匠が登録されている場合で、後になって両者の間に類似性がないと認められたときでも、そのことは当該関連意匠登録の無効理由にはならない。

 「枝1」は、

「拒絶理由だけど無効理由ではない」

条文について問うているだけの、シンプルな問題です。

 まず、本意匠と関連意匠とが類似していることは、関連意匠として登録をうけるための要件です(10条1項)。

 ところで、10条1項の関連意匠制度は、要件を満たせば9条1項又は同条2項に関わらず意匠登録を受けられるという規定で、あくまで「先願主義」(9条)の例外です。

 関連意匠として出願する上でのメリットは、それ以上でもそれ以下でもないため、関連意匠として出願をしても、当然ながら3条をはじめとする他の客体的登録要件は具備していないと、意匠登録を受けることはできません(17条)。

 ここで関連遺書制度の利用について考えてみると、2つ以上の意匠が非類似であるならば、そもそも一方を関連意匠として出願する意味はないわけです。

 なぜなら、同日に出願しようが異なった日に出願しようが、非類似の意匠にとっては9条の要件は無関係であり、他の要件を具備することを前提に、その意匠は登録を受けることができるからです(18条)。

 ということは、関連意匠として意匠登録を受けている登録意匠が、仮に本意匠と非類似であっても、他の要件を具備しているのならば、登録を認めてよいという結論が得られます。なぜならば、その意匠は元々の出願で本意匠の表示(意施規2条、様式2、備考7)をしなくても、通常の意匠して登録を受けられるものであったからです。

 言い換えると、登録意匠が10条1項の要件を満たしていないというのは、形式的瑕疵にすぎません。

 よって、「枝1」の問題文にあるように、本意匠と関連意匠とが類似しない場合でも、そのことは意匠登録の無効理由にはなりません。

 したがって、「枝1」は正しいと正誤判断できます。

【応用】 
 実務上でも、1つのデザイン・コンセプトからバリエーションの意匠群として創作、出願する場合でも、まずは通常の意匠登録出願をするのが定石です(早期に登録を受けたい場合を除く)。
 審査において、出願した2以上の意匠が9条1項又は同条2項に基づく拒絶理由が通知されたとしても、手続補正書の提出(60条の24)により願書に本意匠の表示をすれば、すべての意匠について登録をうけることができるからです。
 むしろ関連意匠として出願してしまうと、存続期間の満了日が本意匠と同一になってしまったり、異なる者に専用実施権を設定できなかったりといったデメリットがあるため、特段の事情があるときは格別、通常はノーマルな出願をします。

 ということで、次回は【問8】の残り4つの選択肢について解説をします。

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