平成29年度 【意匠】問9の枝4:"じっくり解説" 弁理士試験 短答式 本試験

 引き続き【問8】の解説をします。

(問題文の全文は別ページに掲載しています。以下の解説は、自分で問題を1度解いてみてから読むようにしてください。)

 「枝4」の解説に入りましょう。

【問9】
意匠イに係る意匠権Aを有する甲は、意匠イに類似する意匠に係る物品Xを、業として日本国内において販売し、輸出している乙に対し、意匠権Aの侵害を理由とする物品Xの販売の差止め及び損害賠償を求める訴えを提起することを検討している。次のうち、正しいものは、どれか。
ただし、いずれの場合も意匠権について、専用実施権の設定をしていないものとする。
4 甲は、裁判所に対し、乙を被告として、意匠権Aの侵害を理由とする物品Xの販売の差止め及び損害賠償の支払いを求める訴えを提起した後であっても、意匠イに類似する意匠の範囲について、特許庁に対し、判定を求めることができる。

 特許庁に対する判定請求(25条1項)に、時期的な制限はあるでしょうか。

 特許庁へ判定を請求することができる始期は、権利設定後です。それに対して、判定の請求ができなくなるのは、権利消滅後20年後です。

 権利消滅後20年を経つと、不法行為による損害賠償請求権(民709条)が消滅するからです(民724条後段)。

 逆に言うと、権利設定後であれば、権利消滅後20年間は、特許庁に判定を請求することができます (審判便覧58-03.1.(3)参照)。

 また特許庁に対する審判の請求は、裁判所に対する請求とは独立した手続きであることから、裁判所に訴えを提起したからといって、特許庁に対する判定の請求ができなくなることはありません。

 「枝4」は、

「差止め及び損害賠償の支払いを求める訴えを提起したのちであっても、特許庁に対し、判定を求めることができる。」

とあるので、正しい選択肢であると正誤判断できます。

 「枝4」自体は、事例問題でもなんでもなく、判定についての条文レベルの知識を問うものです。本枝のように四法共通の知識を問う問題は、今後も意匠法において問われる傾向は続くかもしれません。特・実や商標に比べて、意匠法ではプロパーの問題が枯渇している状況にあるからです。ただし、国際意匠登録出願については、まだまだ出題されていない問題があるため、今後は新作問題は続くと予想できます。

 ということで、「正しいものを1つ選べ」と問われている【問9】は、「枝4」が正解です。

 本問の解説において示したように、本試験においても、問題文が短い問題から正誤判断していき、他の法域での解答のために「時間を余らせる」ことが得策です。

 というわけで、次回は【問10】の解説に移ります。

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