平成29年度 【意匠】問7の枝3:"じっくり解説" 弁理士試験 短答式 本試験

 引き続き【問7】の解説をしていきます。

(問題文の全文は別ページに掲載しています。以下の解説は、自分で問題を1度解いてみてから読むようにしてください。) 

 「枝3」の解説に入りましょう。

【問7】
意匠の類否判断に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。
3 登録意匠と、当該登録意匠に形態が類似する意匠であっても、両意匠は非類似となる場合がある。

  まず、本文中の「形態」とは、意匠法上には"ない"言葉だということを知っていますか?

 「形態」とは、物品の「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」(2条1項)のことを言います(意匠審査基準「凡例:2.一部において使用される省略記載」参照)。

 形態=形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合 (2条1項)

これを踏まえて法上の「意匠」の定義を書き換えると、

 意匠とは、物品の形態であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの 
 (2条1項)

とすることができます。

 「形態」という言葉は、短答式でも論文式でも、問題文に出てきますし、答案表現としても使えますが、いざというときはいつでも条文の言葉で説明できるように正確に理解しておきましょう。

 「意匠」については、とりわけ初学者は「デザイン」といったアバウトな理解をしてしまいがちですが、より正確には「意匠とは物品のデザイン」であることを忘れてはいけません。

 関連して、3条1項柱書に定める「意匠の成立要件」に関して、

 物品を離れた意匠は認められない。

というのは、常に記憶にとどめておきたい有名なフレーズです。

 そして、意匠は「物品の形態」であるから、2つの意匠の類否判断も、当然に、物品面と形態面とから判断します(意匠審査基準22.1.3.1.2参照)。

 仮に、「枝3」の問題文が、

3 登録意匠と、当該登録意匠に物品が類似する意匠であっても、両意匠は非類似となる場合がある。

という問題文であったなら、おそらく全ての受験生は、

「形態が非類似であれば、両意匠は全体として非類似となる」

と、疑いなくスムーズに正誤判断できるはずです。

 その一方で、「枝3」のように、

3 登録意匠と、当該登録意匠に形態が類似する意匠であっても、両意匠は非類似となる場合がある。

という問題文を読んで、少しでも「ひっかかり」があるのだとしたら、あなたにはまだ、

意匠とは、物品の形態である。

という言葉の重みが真の意味でできていないのかもしれません。

 意匠の評価、言い換えると意匠の類否判断においては、物品面と形態面の個別の類否判断があってはじめて、意匠全体の類否が判断できます。

 意匠における「物品面」と「形態面」とは、類否判断において等しく重要なウエイトを占め、どちらか一方を軽視することはできないということをこの枝3を正誤判断することを通じて改めて学んでもらいたいと思います。

 以上のことから、「枝3」は正しい選択肢だと正誤判断できます。

 ということで、次回は「枝4」の解説をします。

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