平成29年度 【意匠】問5の枝1:"じっくり解説" 弁理士試験 短答式 本試験

【問5】の解説に入りましょう。

【問5】
意匠登録出願及び意匠登録を受ける権利に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
ただし、特に文中に示したものを除き、意匠登録出願は、分割又は変更に係るものではなく、かつ、放棄、取下げ又は却下されていないものとする。
1 従業者は、契約、勤務規則その他の定めにより、その性質上使用者の業務範囲に属し、かつ、その意匠の創作をするに至った行為がその使用者における従業者の現在又は過去の職務に属する意匠について使用者に意匠登録を受ける権利を取得させたときは、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有する。
2 意匠登録出願をした者は、事件が補正却下不服審判に係属している場合、願書の記載又は願書に添付した図面について補正をすることができない。
3 願書の記載又は願書に添付した図面、写真、ひな形若しくは見本についてした補正がこれらの要旨を変更するものである場合は、審査官は、その補正を却下することができると意匠法に規定されている。
4 意匠登録出願人が、意匠法第17条の2第1項に規定する補正の却下の決定の謄本の送達があった日から3月以内にその補正後の意匠について意匠登録出願をしたとき、もとの意匠登録出願は、常に、取下げたものとみなされる。
5 国際意匠登録出願についてパリ条約第4条D(1)の規定により優先権の主張をしようとする者は、その旨を記載した所定の書面を国際公表の日から所定の期間内に提出することができると意匠法に規定されている。

 【問5】は、「意匠法のその他の規定アラカルト」といった趣のある出題ですね。

 5枝のうち、「枝2」・「枝3」・「枝4」は、意匠法における「手続の補正」(60条の24)にまつわる出題であり、頻出の出題テーマです。

 他方「枝5」は、【問3】の「枝5」と同様、国際意匠登録出願に関する出題です。国際出願系は、はじめに解くのにはちょっと怯んでしまうかもしれませんね。

 【問2】の解説で言及したように、短答式試験では、短い文章から順番に正誤判断していくことが鉄則です。

解法テクニックその2:短い文章の選択肢から解く (解答時間の倹約)。

 このテクニックによると、本問は1番短い「枝2」から解くことになります。

 しかし、「枝2」を解くということは、同様の出題テーマである「枝3」・「枝4」も続けて解くことになるでしょう。

 となると、それはそれでやっぱり重たいなぁ、という印象を抱くと思います。

 そこで本問では、自然体で「枝1」から解いていくことにしましょう。

 「枝1」は、ぱっと見で「職務」というキーワードが目につきます。

 「職務」というキーワードを見たら、考えるのは特許法35条ですね。意匠法では15条1項で特許法35条が準用されています。

 特許法35条は、一文が長く、また修飾語と被修飾語とが離れているため、読みにくい条文です。ただし、職務発明の成立要件は、

業務範囲に属し(=業務発明である)、かつ、

使用者における従業者の現在又は過去の職務に属する(=職務発明である)

というキーワードに着目しながら読んでいけば把握しやすいです。

 「枝1」の問題文も、

1 従業者は、契約、勤務規則その他の定めにより、その性質上使用者の業務範囲に属し、かつ、その意匠の創作をするに至った行為がその使用者における従業者の現在又は過去の職務に属する意匠について使用者に意匠登録を受ける権利を取得させたときは、

という適用要件についての2つのキーワードがあります。

ということは、「枝1」は、

1 従業者は、意匠の職務創作をしたときは、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有する。

と題意把握することができます。だいぶん短くなりましたね。

そこで法上の効果をチェックすると、35条4項には、

相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有する。

とあります。

 よって、「枝1」は正しいということがわかります。

 なお、旧特許法35条3項では、

相当の対価の支払いを受ける権利を有する。

と規定されていました。「枝1」は、特許法35条の改正について、変更点の知識を問うのが出題意図だと推察できます。

 この手の改正点については、ひょっとしたらベテランの受験生のほうが迷ってしまうかもしれません。

 とはいえ、「枝1」は単に条文の文言がストレートに問われているだけです。1年目であれ、2年目であれ、条文の文言はブレなく記憶を再現できるよう、普段から何度も条文を読み返す必要があることをこの選択肢は教えてくれています。

 以上より、【問5】は「枝1」が正解です。


 条文の暗記をがんばった受験生は、さっさと「枝1」をマークし、【問6】に進みましょう。

【発展】

 「相当の対価」という文言は、青色発光ダイオード事件で世間の注目を浴びたキーワードですから、強く頭に残っているでしょう。

 他方、改正後の「相当の金銭その他の経済上の利益」(=「相当の利益」35条4項)という文言は、まだ馴染みが薄い受験生もいるかもしれません。

 旧35条3項の「相当の対価」は「主として金銭の給付を想定した規定」とされています(『平成27年度特許法等の一部改正 産業財産権法の解説』)。

 それに対し、改正後の「相当の利益」(35条4項)については、金銭の給付だけに限らず、留学の機会の付与ストックオプションの付与といった金銭以外も含めた経済上の利益を指しています。

  このような改正がなされているのは、企業戦略に応じた柔軟なインセンティブ施策を講じることを可能にするためと考えられています。

 もし上記の35条の法改正の趣旨が論文式試験の一行問題で問われるとしたら、

①. 留学の機会の付与 ②. ストックオプションの付与 ③. 企業戦略に応じた柔軟なインセンティブ施策を講じることを可能にするため

という3つがキーフレーズを用いて答案を書くことになるでしょう。

 というわけで、次回は【問6】あるいは【問5】の残りの4枝を解説することにします。

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弁理士試験:平成29年度 短答式試験の解説

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