答案講評例⑧:平成26年 意匠

平成26年の意匠の答案は、十分に合格レベルだと評価します。偏差値でいうと、57~60程度は期待できるはずです。

 問I(1)について、新規性欠如⇒新喪例適用の流れはOKです。各論ですが、イがロに「類似」(3条1項3号)することは明文で指摘したほうがよいです。この程度のあてはめであれば、受験生の少なくとも4割程度はできると予想しています。
 甲がイについて意匠登録を受ける権利を有しているのは、自ら「甲がイを創作し」たからです。この点も、問題文の事実を飛ばさないほうがよいです。
 新規性の例外の適用については、特許の答案でも指摘しましたが、「拒絶理由を回避する」という目的・結論に一言触れたほうが良いです。
 関連意匠について、本意匠の表示の根拠条文は、「施規2条、様式2備考7」まで書いたほうがよいです。
 6条・7条に触れている点はよいです。本試でもこれらは1行触れるだけで加点が望めるのでコスパがよいです。

 問I(2)において、まずハについて解答し、その後にイ・ロについて解答するという流れはgoodです。ハについて3条2項の拒絶理由を指摘する際は、単に「イについて」とするよりも、「公知イについて」としておいたほうが、条文の理解が示せます。
 また、ハの登録の有無で場合分けして解答する点もよいのですが、ハが登録されたら、ハに係る出願に先願の地位(9条3項)がある点は指摘しておきたいです。ハが登録されない場合の解答はOKです。
 
 問I(3)は、原則⇒例外(26条)の流れはよいです。ただ、「日前の他人乙丙の登録意匠ハ」という表現が、不正確な印象です。「(他人)乙・丙の先願に係る登録意匠ハ」としたほうが、スッキリ意味が通じます。加えて、26条2項について、制限されるのはあくまで「業として」の実施です。「業として」を漏らさないようにしましょう。この点はウィークポイントのようなので、見直しで修正することをオススメします。
 甲の措置について、「意匠権の譲渡・交渉」は、「ハに係る意匠権の」と、どの意匠権かを限定したほうがよいです。準特73条1項・3項に言及している点はgoodです。なお、問I(2)においてハの創作容易性について言及しているので、3条2項違反に基づく無効審判請求に言及できれば加点があります(もっとも、この項目は落としても致命傷にはならないと考えられます)。

 問II(1)は、よく書けています。流れ、表現ともにOKです。

 問II(2)も、よく書けています。無効審判の請求人適格についての言及もgoodです。
 なお、「ホの意匠権について無効審判を請求すべき」とありますが、採点者が細かい場合、正しくは「ホの意匠登録について無効審判を請求すべき」だと厳しく見られることもあり得ます。可能な限り条文の表現に忠実な解答を心がけてみてください。

 全体を通じて、前半でエラーが散見されましたが、後半になるにしたがって解答の出来が尻上がりによくなってきたのが好印象でした。

 本試においても、後半の出来が良い答案は採点者の印象もよくなると考えられます。
 このレベルの答案が70分で書けることに、合格者としての実力を感じます。

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