平成29年度 【意匠】問9の枝3:"じっくり解説" 弁理士試験 短答式 本試験

 前回から【問9】の解説を始めています。

(問題文の全文は別ページに掲載しています。以下の解説は、自分で問題を1度解いてみてから読むようにしてください。)

すでに「枝1」の解説は終えているので、続けて「枝3」を解いていきます。

(「枝2」は日付の処理を伴う長文の事例問題であるため、本試験においても後回で解きます。)

【問9】
意匠イに係る意匠権Aを有する甲は、意匠イに類似する意匠に係る物品Xを、業として日本国内において販売し、輸出している乙に対し、意匠権Aの侵害を理由とする物品Xの販売の差止め及び損害賠償を求める訴えを提起することを検討している。次のうち、正しいものは、どれか。
ただし、いずれの場合も意匠権について、専用実施権の設定をしていないものとする。
3 乙が、物品Xの日本国内での販売を停止し、輸出して海外で販売するために物品Xを日本国内に所在する乙の倉庫に保管している場合、甲は、当該保管行為の差止めを求めることはできない。

 意匠権の侵害とは、登録意匠又は類似意匠を業として実施する行為(23条)、又は一定の予備的行為(38条)をいいます。

 乙が登録意匠イと類似する意匠に係る物品Xを業として輸出する行為は、登録意匠の実施(2条3項)に該当します。よって、乙の物品Xの輸出行為は、甲の意匠イに係る意匠権Aの直接侵害を構成しています(23条)。

 次に、意匠権者甲は、自己の意匠権Aの直接侵害の蓋然性が高い行為についても、意匠権Aの侵害とみなして、侵害の停止や予防音請求ができます(38条、37条)。

 いわゆる間接侵害、すなわち意匠権の侵害とみなされる行為として、

(侵害とみなす行為)
第38条  次に掲げる行為は、当該意匠権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
二  登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品を業としての譲渡、貸渡し又は輸出のために所持する行為

が法定されています。

 38条2号に列挙されている通り、侵害被疑品を業としての①譲渡、②貸渡し、③輸出、のために所持する行為は、意匠権の侵害とみなされます。

 問題文より、乙が物品Xを倉庫へ保管する行為は、意匠権Aの侵害被疑品である物品を業としての輸出のために所持する行為に該当します。この行為は意匠権Aの侵害とみなされるため(38条2号)、甲は乙に対して、物品Xを倉庫へ保管する行為を差し止めることができます(37条)。

 以上より、「甲は、当該保管行為の差止めを求めることはできない。」とする「枝3」は誤りです。

【発展】
 業としての輸出のための所持行為は、日本国内における実施行為であるから権利行使が可能です。それに対し、業としての輸入のための所持は、その実行行為が国外でなされているため、わが国における意匠権の効力は及びません。
 間接侵害に該当する行為として、「輸出のための所持」と「輸入のための所持」を混同しそうになった場合は、その行為がどこで行わているかという場面を想定して考えるようにしてください。

 ということで、次回は「枝4」の解説をします。

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