答案講評例④:平成25年 特許・実用新案

平成25年の特・実の問Iについては、偏差値でいうと51~53レベルの答案だと評価します。

 問1(1)では「発明者となるか否か」が問われているので、発明者として「創作行為への現実な加担」があるかをまず認定し、「単なる補助者・助言者」なら発明者ではないことを示したいです。
 共同発明については38条を根拠条文として示したほうが良いです。そのほかの記載はOKです。

 この点については下記の産構審の資料がよくまとまってます。目を通してみてください。
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/tokkyo_shoi/document/seisakubukai-06-shiryou/paper07_1.pdf

 問1(2)では、まず「35条の規定(と趣旨)」が問われているので、職務発明の定義ではなく、35条1項ないし7項の概要を解答するほうが題意に沿っています。
 趣旨については、「従業者等の権利を保護」「発明のインセンティブを確保」「使用者等による職務発明の効率的な利用を促す」「使用者等と従業者等の利害の調整」といったキーフレーズが出したほうがよいです。
 
 この点については平成27年の改正本を参照してください。
 ⇒ https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/h27/document/tokkyo_kaisei27_55/01.pdf 

 解答内容については、「権利帰属について私的自治にゆだねる」ことが問題視されているのではなく、「対価の決定について私的自治にゆだねること」が問題視されています。この箇所は積極ミスと評価される危険があります。

 問2について、29条の2の趣旨はOKです。時間がないときは、1つ目の理由付けだけで十分です。
29条の2のあてはめについては、まず、国際公開の要件を満たすことの根拠条文は、「(184条の13で読み替えて適用する29条の2本文)」としたほうが丁寧です。また、翻訳文提出の要件を満たすことの根拠条文は「(184条の13で読み替えて適用する29条の2かっこ書)」としたほうが丁寧です。
 さらに、発明者非同一と出願人非同一についても、

「乙は甲と無関係に発明を完成させた」ことから、先願Xのa1と後願Yのa1とは発明者が同一ではない(29条の2かっこ書)。

「出願名義人の変更はされていない」ことから、後願Yの出願時においてYの出願人は乙であり、先願Xの出願人甲と「同一の者」(29条の2ただし書)ではない。

のように、問題文の事実を使ってあてはめをしてほしいです。

 問3(1)について、「意識的除外に該当しない」という論述はよく書けています。ただ、結論部分で、「業として」(68条)の要件の明示が抜けています。また、「特許権の行使」については(100条1項等)
のように根拠条文を示せるとさらによいです。

 問3(2)については、OKです。

 全体としては、問1(2)の積極ミスと、問2のあてはめ不足とで点が伸びませんでしたが、題意がつかみにくい問3を無難に乗り切っているのは評価できます。


 平成25年の特・実の問IIについては、偏差値で47未満という評価にはならないものの、49~52レベルの評価になる可能性もあると考えます。

 問1(1)では、まず、補償金請求権の規範について、「業として」の要件が抜けています。また、ここでも、乙の製造販売が「業として」(65条1項前段)の生産・譲渡(2条3項1号)であることについてのあてはめができていないです。

 問1(2)は、よく書けています。

 問2(1)について、否認できない⇒抗弁の流れはOKです。
 新規性違反について、「αの製造販売=公然実施」ではない点に注意してください。製造販売が公然知られうる状況で行われていれば新規性違反、というように、29条2項の解釈についての理解を示してほしいです。
 共同出願違反については、「イは~丁に無断でなされており」とつながっていますが、無断でなされているのは出願である「X」であることを明示する必要があります。
 先使用については、乙の知得ルート・国内要件については、いずれも問題文からは不明ですから、断定は避けてください。断定してしまうと、積極ミスと評価される危険があります。
 消滅の抗弁についてはOKですが、訴訟中止の主張(168条2項)も併記すると、加点が見込めます。168条2項については、少なくとも受験生の20%程度は書くはずですので、書いたほうがよいです。

 問2(2)について、施規40条の2は、98条1項1号に併記するのではなく、移転請求の要件として挙げたほうがよいです。それ以外はOKですが、4の前半2行は削っても構わないです。

 全体として、問1(1)の要件漏れとあてはめ不足と、問2(1)の先使用権の要件の検討不足とを反映させると点が伸びませんでしたが、問I・問IIの全体を通じていわゆるB評価で乗り切っているので、意匠・商標でA・Aの評価が得られれば、トータルで合格圏内に入れます。

宗教法人としての法人格は有していませんが、お布施・お賽銭・玉串料・初穂料、いかなる名義や名目をもってするかを問わず、すべての浄財は24時間受け付けています(笑)