平成29年度 【意匠】問8の枝4:"じっくり解説" 弁理士試験 短答式 本試験

引き続き【問8】の解説をします。

(問題文の全文は別ページに掲載しています。以下の解説は、自分で問題を1度解いてみてから読むようにしてください。)

「枝4」の解説に入りましょう。

【問8】
意匠の無効審判又は意匠権の消滅に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。
4 ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際登録を基礎とした日本国の意匠権は、その基礎とした国際登録が消滅した後であっても、なお存続する。

 ハーグ協定のジュネーブ改正協定は、意匠の国際出願について規定されている条約です。

 弁理士試験では平成28年からの出題であるため、受験生にとってはまだなじみが薄い条約であると言えそうです。

 しかしながら、弁理士試験において条約が重要な科目であることは、産業構造審議会知的財産分科会の弁理士制度小委員会が示した報告書においても明らかです(「弁理士制度の見直しの方向性について」p52参照)。

 すでに特許法や商標法では、論文式試験においても国際出願に関して大問として出題されていることから、意匠法においても、早晩、論文式試験において国際出願の出題があることが強く予想されます。

 国際出願系の問題の攻略にあたっては、まずは短答式試験レベルの知識を固めることが有効です。その意味では、今年の出題も1枝1枝、条文と照らし合わせながら記憶していくことが求められます。

 また、意匠の国際出願に関する規定(60条の2以下)は、特許法の184条の3以降、商標法の68条の2以降の条文を、足して2で割ったような規定ぶりになっているとの印象を持っている受験生も多いと思います。

 この感覚は間違ってはいませんが、それであるからこそ、特許法・商標法との異同を意識した条文の読み込みを進めることが得策と言えます。

 さて、【問8】の「枝4」については、国際登録を基礎とした意匠権(60条の14第2項かっこ書)の存続期間に関する知識が問われています。

 この点については、「国際登録に基づく商標権」(商標法68条の20第2項カッコ書)と同じように考えることができます。すなわち、国際登録に基づく商標権は、国際登録が消滅したときは、消滅したものとみなされます(68の20第2項)。

 同様に、「国際登録を基礎とした意匠権」も国際登録が消滅したときは、消滅したものとみなされます(60条の14第2項かっこ書)。

 「枝4」は、60条の14第2項の規定である、

(国際登録の消滅による効果)
第60の14 
2  前条の規定により読み替えて適用する20条2項の規定により設定の登録を受けた意匠権(以下「国際登録を基礎とした意匠権」という。)は、その基礎とした国際登録が消滅したときは、消滅したものとみなす。

を思い出せた受験生はもちろん正答できたでしょうが、そうでない場合も、商標法68条の20第2項の規定を思い出し、その類推で正誤判断することによって、得点することは可能です。

 一方で、商標法も意匠法も、国際出願系というだけで苦手意識を持ち、敬遠し続けた受験生は、意匠法でも商標法でも失点することになります。

 上記で紹介した産構審の報告書にもあるように、国としては条約に強い弁理士を求めています。したがって、条約をマスターしていない受験生はいつになっても合格できない試験になっているというのが今の弁理士試験です。あなたがこれから弁理士試験の合格を目指すなら、このことを念頭に、条約は丁寧に勉強していきましょう。

 問題文の解説に戻ると、「枝4」は、

国際登録を基礎とした日本国の意匠権は、その基礎とした国際登録が消滅した後であっても、なお存続する。

とあるので、誤りです。【問8】は「誤っているものはどれか」が問われていますから、「枝4」が正解となります。

 目標としては、【問8】で国際出願について問われている唯一の選択肢である「枝4」を真っ先に見つけて、先に正誤判断して答えを出す、このくらいのレベルを到達目標として国際出願系の規定を攻略していきたいものです。

 というわけで、次回は【問9】の解説をします。

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