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『音楽は「感じる」ことで聴く』 ~難聴者の聴こえ方~

(前頁 ~『イジメもあった』) ※難聴者さんインタビュー④

難聴者が数人集まって、同じ音楽を聴いたとしても
重低音が聴こえ高音が聴こえない人、その逆の人と聴こえ方はバラバラだという。

声も難聴の程度や種類によって「聴こえる・聴こえない」があり
難聴者同士でも伝わらない事、ぶつかる事があるらしい。

大好きなダンスをする為に

ダンサーであるGenGenさんに「音楽」は欠かせない。
自分の「ちょっとだけ聴こえる部分」を、何回も聴いて覚える。
聴こえるというより「感じている」のだという。

感じるのは「ビート」や「振動」。細かい音の描写は解らない。

クラブで流れているような曲は、全て同じに聴こえる。
洋楽はわりとビートが効いていてリズムが一定の曲が多いが、邦楽のリズムを取るのは難しい。

歌詞も音楽の解釈には重要な素材。
カラオケ風に、音に併せて歌詞が流れてくれるアプリは使えるが
ただ歌詞が文字として流れているような字幕だけのモノは使えない。

流行りの曲を一年後に知る事もある。
やりたいと思ったら流行りの曲も踊るが、他で勝負をして行きたい。


ダンスでは、視界を広く取って周囲の人を見ながら音を取る。
自分が取れない音は、見てる人に解らないように合図をしてもらうこともある。

自分で入れるところは、何度も繰り返し練習をしてタイミングを覚える。
結局、見て覚える事が多い。聴こえる人より習得に時間がかかる。

アーティストのバックダンサーとしての仕事も「一ヶ月かかるところを2週間で覚える」など、シビアなスケジュールとなる。
普段からアーティストの曲にアンテナを張っておかないと、対応が追い付かない。アーティストのファンにも迷惑をかけてしまう。

ダンスをする為にGenGenさんは音楽を、もの凄い集中力で感じ取り、努力や工夫を重ねている。

エネルギーを使って聴く、話す

普通の会話にしてもそうだ。
インタビュー中、私の話を一生懸命理解してくれようとするその傾聴力、集中力を目の当たりにして「エネルギーを使って聴く、話す」をしていると感じた。会って話をしないと解らなかった事だった。

また私の問いかけに対して、耳の聴こえる人なら流してしまうような事まで拾い返ってくるような、咀嚼力も感じた。

これまでの経験も影響しているのか、GenGenさんの言葉を選ぶ姿勢は慎重だ。「傷つけないようにしている」という。
GenGenさん自身が言葉によって傷ついてきた経験は、優しさに変換されて相手に届く。

それすらも「飾っている」と悪く思われることがあるという。

よく考えてみたい。傷つき、理不尽な思いをし、怒りを覚えた経験を、優しさに変える事の難しさを。

耳の聴こえる私たちは、
聞こえているハズの「受け取る言葉」を、発せられるハズの「伝える言葉」を粗雑に扱い、蔑ろにはしていないだろうか。
その事で、人間関係を複雑にしてはいないだろうかと自分も省みたい。

~次頁『人生の選択肢』


Interviews and Contributions(取材・寄稿)
yuka (BeOneプロジェクト代表)

※私ども「ハニポ」 はBeOneプロジェクトの活動・運営を無償サポートしています

※難聴者さんは、難聴の種類や程度によって、一人一人全然違う聴こえ方・コミュニケーションの取り方をしています。他の難聴者さんが、皆同じ環境・状態にあるというわけではない事を念頭にご一読くださいませ。

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