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酒場に鎮座する、謎の物体の数々は


「ベルリン酒場探検隊レポート」

いい酒場を見分ける嗅覚が発達してきたわれわれは、気になる酒場の扉を開けた。そこには想像の上を行くものたちが……。
レポート提出者:久保田由希

酒場データ
店名:Eckkneipe(エッククナイペ)
入りにくさ度:★★★☆☆(扉が開いていれば)
居心地:★★★★☆
タバコ:喫煙可
ビール:Schultheiss(シュルトハイス)0.3L 2.0€ほか

「ここはよさげだ」

その酒場はクロイツベルク地区の角地にあった。看板の色は赤。Schultheissビールのブランドカラーだ。その横にSchultheissのロゴ看板も並んでいる。すべてが典型的ではないか。

「ここはよさげだ」とうなずきあう、われわれベルリン酒場探検隊。探検修行を続けるうちに、嗅覚がついてきたようだ。

窓をチェックすると、レトロな絵柄に白いレースのカーテン。これは「いかにもな酒場」で間違いないだろう。

入り口の扉はうっすらと開いていた。非常に入りやすい。たった数センチ開いているだけで、心理的に全然違う。「入ってくれ」と言われているようなものだろう。

あの円柱はなんだ?

店内に入るとわずかに煙くさい。ここはRaucherkneipe(ラオハークナイペ=喫煙酒場)だ。確かに入り口にもそう書いてあった。

タバコ臭さが苦手なわれわれ松永と久保田だが、この程度ならなんとかなる。カウンター席に座り、さっそく乾杯だ。

ふと、松永探検隊員が「あれはなんだ」と、カウンターの隅にある塔を指さした。

そこには透明な円柱の中に、何やら小さな缶が積み上げられていた。

われわれがしげしげと眺めていると、よれた白いTシャツに白ズボン姿の酒場の爺さんが「おつまみだよ」と言う。

円柱を回して、好きな缶をコインの投入口に合わせたらコインを入れて」(酒場爺)

ガチャッ、ガチャッと円柱を回して、1€と書かれた場所に硬貨を投入する松永隊員。

投入口のハンドルを回すと、ピーナツの缶がコロリと出てきた。

……「おつまみガチャ」か。

「抜け感」のある店内

つまみも購入し落ち着いたところで、店内をぐるりと見回してみる。

ここはよい。ほの暗く、懐かしく、いい塩梅に垢抜けない。これぞ酒場だ。
もちろんゲーム機も完備である。

ちょっと待て。入り口脇に犬がいる?

犬のバー」らしい。動物愛護精神あふれるドイツらしい光景ではないか。

さらに店内奥へと目をやると、次のような一角が。あれ、ここは酒場ではなく普通のお宅だっただろか。この「抜け感」がまた、なんとも言えない。

ダーツは酒場の王道

何よりこの酒場で目立つのは、天井付近にずらりと並んだトロフィーであろう。

「このトロフィーはなんですか?」(久保田隊員)
「ダーツさ」(酒場爺)
「ここで大会やってるんですか?」(松永隊員)
「そうさ。木曜はトレーニング。週末はみんなで競技」(酒場爺)

ダーツは酒場の定番である。壁には「今月の点数表」があり、どうやらカーステンという人物がトップをひた走っているようだ。
酒場探検隊を名乗るわれわれも、ここはひとつ嗜みとしてダーツを習得するべきだろうか。

今後、この点数表に松永と久保田の名前が加わることを期待されたい(嘘)。

後日談:
ここの店名であるEckkneipe(エッククナイペ)は、本来は一般名詞である。酒場(Kneipe=クナイペ)の多くは角地(Ecke=エッケ)にあることに由来した言葉だ。
この酒場の看板には “Eckkneipe” とあるが、単に一般名詞として書かれているだけかと思っていた。その後店名を調べようとググったところ、なんと店名だったことが判明した。
オレがスタンダード」ということか。

ベルリンのさらなる秘境酒場の開拓と報告のために、ベルリン酒場探検隊への支援を心よりお待ち申し上げる。