酒場に「昭和のおばあちゃんち」があった

「ベルリン酒場探検隊レポート」
えんじ色のソファ、レースのカーテン、花柄のクロス。あと数日で令和になろうとする現在、日本から遠く離れたベルリンに、昭和のおばあちゃんちがあった。
レポート提出者:久保田由希

酒場データ
店名:Kupferkanne(クプファーカンネ)
入りにくさ度:★★★★☆
居心地:★★★★☆
タバコ:喫煙可
ビール:Schultheiss(シュルトハイス)ほか

重い扉を開けると昭和であった

そのときわれわれ「ベルリン酒場探検隊」は、軽く途方に暮れていた。見るからに人を寄せつけない酒場の扉を一大決心して開けたはいいが、見事に「お呼びでない? お呼びでない? これまた失礼いたしました」の植木等状態。木っ端微塵に砕け散ったのである。「これからどうする……」と路上に佇んだ。

しかし松永探検隊員の「近くに別の店があるはず」との一言で新天地を目指し、ほどなく一軒の酒場にたどり着いた。看板にはKupferkanne(クプファーカンネ)という店名とともに、サッカーボールの絵も描かれている。典型的な酒場の香りがする。いいぞ。

入り口横の窓からは、中の様子はうかがえない。どんな雰囲気だろうか。客層は。つい十数分前には別の酒場に入ろうとして玉砕したのだ。今度こそは……。扉を開けるこの瞬間がもっとも勇気がいる。

ガチャリ。扉を開けると、カウンターには男性客が一人きり。店主とおぼしき男性はわれわれを見ると、ようこそようこそと笑顔でこちらに歩み寄ってくる。

「奥の席に座りなよ」と、店主の勧められるままに店内奥へと進むわれわれ酒場探検隊。
と、そこには……
壁一面にびっしりと飾られた写真。
えんじ色のソファに白いレースのカーテン。
天井から下がるステンドグラスのランプシェード。

こ、ここはまるで……昭和のおばあちゃんちに来たみたいではないか。
あと3日で令和になろうというこのときに(2019年4月28日現在)、日本から遠く離れたベルリンの酒場で、昭和が存在していた。

常連席に陣取る一見客

広々としたソファ席に腰かける。ソファなのだが、どうも掘りごたつに入っている気がしてならない。これも「おばあちゃんち感」が為せるわざであろう。やはりえんじ色がポイントのように思う。

なにはともあれ、酒場に来たらビールである。酒場定番のSchultheiss(シュルトハイス)があるので、迷わずそれを頼む。酒場にあるビールは大手の銘柄が多い。それでいいのだ。ビールの味についてあれこれこだわるのなら、マイクロブルワリー経営のブルーパブ(醸造所に併設したできたてのビールを提供するバー)に行くのがいい。酒場はそういう場所ではない。

われわれは掘りごたつ、いやソファでビールを飲んでまったりとしていた。ふと卓上の灰皿に目をやると、灰皿の上に金属の装飾性のある取っ手がついている。装飾部分にはSTAMMTISCH(シュタムティッシュ=常連席)と書かれている。一見客のわれわれは、どうやら常連席に陣取っていたらしい。

すると店主の男性がこちらへやってきた。
「ここ常連席だったんですね。知らなくて」というわれわれの言葉は意に介さない様子で、ベルリンに住んでいるのか? ならまた来るだろう? と話しかけてくる。何か非常にフレンドリーだ。まさかここまでウェルカムモードだとは想像だにしなかった。
この酒場は、よく見ると壁に飾られた写真の中に店主自身の水着姿が混じっていたりと、味わい深い。ジワジワと来る。

カウンターの男性客は、ひとり静かに飲んでいる。






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