見出し画像

入れそうで入れない場所。それが酒場だ

「ベルリン酒場探検隊レポート」
レポート提出者:松永明子

酒場データ
店名:Katzler-Stübchen(カッツラー・シュトゥープヒェン)
入りにくさ度:★★★★★++
居心地:未確認
タバコ:喫煙可
ビール:Berliner Kindle (ベルリーナー・キンドル)0,3ℓ 2,20€ ほか

探検には、危険が伴う

『探検(たんけん、探険)とは、未知の地域へ赴いてそこを調べ、何かを探し出したり明らかにする行為のことであり、一般には危険を伴うものとされる。』 ウィキペディアにはこう書いてある。

まさにわれわれのミッションはそれだ。ベルリンにおいて、これまでもこれからも決してガイドブックに載ったりはしないであろう、謎のベールに包まれた場末の酒場。

その扉を開き、その内部の様子を好き勝手にレポートする。そしてそこにはいつも、若干の危険が伴うものだ...…。

事件は口コミ上ではなく、現場で起きているのだ

その店は、見るからに入りにくい雰囲気を醸し出していた。

動物園のホッキョクグマのように右へ左へと店の前を通り過ぎ、ときおり出入りする客の背中越しにちらと中を覗きこんでは、噴き出してくるタバコの匂いに「これはヤバそうだ......。」と久保田隊員と怖気づいていた。

何がヤバそうだといって、まずこの外に貼り出されたドリンクメニューだ。


手書きである。


手書きなのである!

この店には、パソコンというものはないのか…? いや、誰かそういうことをやってくれる知り合いはいないのか......!?

それを証明するかのように、この店にはホームページも公式Facebookページもない。TripAdvisorの口コミもない。事前にインターネットでほとんど情報が集められなかったのだ。

でも、それでいい。場末の酒場に気の利いたウェブサイトなんてないほうが正しい。とにかく現場を調査すれば済むことだ。

ついにわれわれはその扉を開けた

カウンターに座っていた5~6人の常連客が、一斉にこちらを振り向く。気分はまるで、西部劇で見知らぬ町のバーに入った瞬間のカウボーイだ。

カウンターの中にいるのは、最盛期のシンディ・ローパーにマツコ・デラックスを3割ほどブレンドしたような、貫禄のあるおかみさん。

タバコの煙が目にしみる。カウンターの右手にはわりと広い空間にテーブルがいくつか見えるが、とてもそこまで辿り着ける気がしない。店内絶賛スモーキング・エリアである。

そう、酒場探検隊の久保田&松永は、タバコ臭いところが苦手なのだ!(酒場を巡る上では致命的な弱点なのだが。)

「...…禁煙エリアとか、ないですよね~~?」

マヌケな質問をしつつ、目配せをして店を後にする。

完敗だ...…。

「お嬢ちゃんたちにゃあ10年早いよ!」という、おかみさんのつぶやく声が聞こえるようだ(←気のせい)。

そして、われわれは途方に暮れた。

オマケ情報

 営業時間は手書きではなくプリントしてあった。

土曜日 16時から医者が来るまで
日曜日 主の日である-シラフに戻る(要するに休み)
月曜日 肝臓をいたわる日(休みだ)

ベルリンのさらなる秘境酒場の開拓と報告のために、ベルリン酒場探検隊への支援を心よりお待ち申し上げる。