見出し画像

夢の10km

走りきったとはいえないかもしれない。
歩いているより遅いかもしれない。

それでも
10km
走りきった。

何度もApple WatchでNIKEのアプリを確認してしまった。


家族が心配するので
ウエストポーチと反射板を導入した。

ウエストポーチには飲み物のボトル
そのせいでとても走りにくい。

反射板は足に巻いていたら弾けて車道にまで飛んできてしまった。

安全のための道具が
私を危険な領域へ誘う。

もう
5kmで止めようと思った。

10kmはとても走れないと思った。

色々な怒りの気持ちが湧いてきた。

家族の死、職員の問題、自分自身の内面
全てが怒りだ。

その怒りが声になった。

夕闇の公園、
誰にも聞かれたくはない。

怒りを走るエネルギーに変えて
公園で8.7km
昨日の記録を越えたとき
10km
いけるかもしれないと
思った。

帰り道、
ちょうど1kmくらいだ。

歩くように走る。

走れメロスよりも
遅く。

スピードはもちろん夕日は沈んでしまった。

もう間に合わない。

でもやりきった。

足も痛いし
筋肉も張るけれど
できたよ。

汗が噴き出て
Tシャツが張り付く。
帽子にまで汗の染み込んだ線が出来上がる。

1時間31分。

本番の足切り記録は1時間15分
ここまでに走り切らないと失格になるそうだ。

今は考えない。

ただ飲み物が欲しい。

ありがとう。
感謝しかない。

よく休んでまた走る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?