電気を消して、寝るまでの彼女

ベッドに寝ながら照明を消せるよう、ぶら下がる照明のスイッチは延長させている。暗い部屋、行き場を失ったスイッチのコード。それを握ったまま眠ろうとしてしまっているな、と思って手を離すと急に居心地が悪くなる。寝る時って手足どうしてたっけ。大の字に寝てみたり、腕を組んでみたり。だけど私は、何か考えてる時点で寝れないことを知っている。明日を想像して、今までを回想して、自分を嫌いになって、明日の準備が整わないまま、気づくと眠ってしまっていることも。最近は、そこまで想像して、想像をスタートさせないまま、絶望してしまっている。だから今日は急に起き上がって、試しにテレビをつけてみた。自分を驚かせてみた。通販番組がやっていた。芸能人が必死に羽毛布団の良さを伝えている。芸能人を自分と置き換えてみた。あったかいですね〜、しか浮かばなかった。私には無理だった。自分の布団を触って、嗅いでみた。柔らかく、なんとなく自分と同じ匂いがした。昔付き合っていた彼氏に言われたひとことを思い出した。「悠里の家のベッドって、悠里をポワレしたような匂いするね。〜柔軟剤の匂い添え〜って感じ」あれ、今考えても意味わかんねえわ〜。なんだったんだあいつ。結局浮気したしな。私の匂いをソースにしたいとか言ってたのに、最終的に巨乳ビッチの濃口中濃ソースのほう行きやがってよ。何が将来の夢はフレンチシェフだ馬鹿野郎。ブルドッグ使ったやきそばがちょうどいいよ。せいぜい地元の祭りの出店程度。私はぜってえ買わねえけどな。腹立ちながらテレビを消して、横になる。あいつのせいで5分無駄にしたわ、くそが。

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