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「THE COIN」 表書き

 COIN。裏と表という二面が一つに重なり合わさった一枚。裏と表が同時に見えることはあり得ない。一方を覗くと一方が姿を隠す。この現象はCOINにだけ起きることではない。様々な物においても起きる現象である。さらには物以外の概念や意識などにも自然の摂理かの様に現れる。誰かが得をすると誰かが損をする。誰かが幸せになると誰かが不幸になる。それが裏と表。果たしてこのCOINの両面が同時に姿を見える時はあるのだろうか?そんな事を考える必要もないが、どうやらこの物語ではその裏と表の化かし合いが話のカギを握っているようだ。

 崩壊すると分かっていた年金制度が悲鳴をあげ、少子化の現代人を脅かす。メディアを介して伝えられる弱腰な姿勢の外交は、各国から不利な条件を突きつけられる。
 失業率は上がり、一方食料自給率は下がり始め、さらに不景気が国の覇気の無さに拍車をかける。表面化した多くの問題。しかし、人々はそう行った表の陰に隠された真の裏の事態が見えずにいた。

 裏とは基本的に隠されている。なぜならそれが裏だからである。表が存在するから裏が存在するのであり、両方表になってしまうと平面の二次元になってしまう。裏表が存在するのはどうやら三次元以降の話のようだ。
 何者かに表だけを見せられていたのか、それが表だと教え込まれて裏と表を疑わずに育てられたのか。また別の角度から言うと、物事の裏側とは見えなくていい時もあるのかもしれない。知らない方が幸せなのかもしれない。もし次元の低い二次元に生きたいのであれば、だが。
 幸か不幸か一人の青年がそのCOINの裏の存在を知ってしまう。今まで表しか見ていなかったCOINがまるで違うCOINのように見え始める。
 この物語の世界では超支配国家が平然と存在していた。が、いつまでも続くわけではなかったようだ。いつまでも表を見せ続けるのは不可能で、いずれかのタイミングで誰かが裏面を覗いてしまう。裏面が一気に表面をひっくり返し、超支配から逃れ自由を手に入れる。全てがうまくいったかのように錯覚してしまう。そのひっくり返した裏がいつのまにか表になっているとも知らずに。革命が起きた後は必ずまた別の革命がやってくる。これは宿命であり、時刻通りにやってくる列車の様である。しかしその到着時刻は人々には知らされず、限られた一部の人間しか知らない。
 青年を含め、裏を知った者たちの行動が様々な波紋を呼び人を動かしていく。支配者と被支配者というコインの裏と表が綿密に絡み合う。裏を知り皆に裏を知らせるのが正義なのか、裏を知りつつ表を通すのが正義なのか。はたまた裏を無視し続け表のみに生きるのが正義なのか。答えは無くただただ一枚のCOINがそこには存在するだけである。果たして人間は裏を見たとき何を考えるのだろうか?
 人との出会い、別れ。失うものと手に入れるもの。様々な出来事が起こり、それらが過去となり新たな今を過ごす。まだ見ぬ未来に不安と希望を抱いて。
 その人生をより幸せに送るヒントになるサインはいつも自分自身の周りに訪れている。しかし、仕事に学校に日常に忙しい人々はそのサインを見逃してしまう。ほんのちょっとした出会い、目にする本、聞いた言葉。その一つ一つがシンクロを起こす瞬間がある。たいていの人はただの偶然とそれを取り立てて気にもしないが、その偶然にこそ運命が隠されている。その偶然の正体に気付き、声や姿を感じる事が大事なのかもしれない。
 この青年は荒れ狂う大海原に飛び出し、なかなか定まらないコンパスを信じ進んでいく。灯台は無く自分と周りの人々の感性だけを頼りに。その航海の果てにはどんな景色が見えるのだろうか。

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