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父ディープインパクト時代の終わりと、次の時代。



種牡馬としても最強だったディープインパクト

「近代日本競馬の結晶」と言われたディープインパクトは、競走馬としては、2004年〜2006年の三年間で牡馬三冠を含むG1七勝、通算成績14戦12勝を挙げました。

輝かしい実績を引っさげ種牡馬入りすると、産駒たちは2010年のデビュー以降、競馬界を席巻し続けました。

つい先日、産駒の通算勝利数が2750勝に達し、日本競馬(JRA)最多記録を更新しました。


競馬の頂点と言える「日本ダービー」でも産駒たちは躍動。
2012年のディープブリランテの勝利を皮切りに、2021年のシャフリヤールまで、実に7勝。もちろんこれも最多記録。

ディープインパクト産駒の活躍は日本のみにとどまらず、2018年にはフランス調教馬スタディオブマンがフランスダービーを制し、そして今年、アイルランド調教馬オーギュストロダンがイギリスダービーとアイリッシュダービーに勝利。

これにより、ディープインパクトは4カ国に跨るダービー馬の父となりました。世界を見渡しても中々ない記録だと思います。

日本競馬と欧州競馬とでは、必要となる適性が異なるという議論がよくありますが、ディープインパクト産駒はどちらにも対応できることを証明してくれました。(スタディオブマンとオーギュストロダンは欧州調教馬なので、日本馬とは言えないですが。)

偉大な馬です。

現役時代の全レースのパートナーを務めた武豊騎手の「名馬です。みんなで褒めてやってください。」という言葉を思い出します。

ともかく、ディープインパクトの種牡馬実績を持ち出すとキリがない。

ー そんなディープインパクトの時代が、ついに終わりそう。

ディープインパクトは2019年7月に死亡しており、今年の3歳世代が最後の世代なのです。これからデビューする産駒はもういないのです。(厳密には未出走でこれから初出走の馬はいるかも?)

今はまだ競馬新聞に「父・ディープインパクト」の表記を見かけることは多いものの、徐々にその数は減っていくことでしょう。


ディープインパクトの子たちの時代が続くのか?


種牡馬としてこれだけの実績を挙げたディープインパクト。

もちろん多くの産駒が種牡馬の道を歩んでおり、後継種牡馬には枚挙にいとまがありません。

すでに実績を上げている種牡馬のうち筆頭は2013年の日本ダービー馬であるキズナでしょう。

キズナ産駒は2019年にデビューし、牝馬ではアカイイトソングラインなどのG1馬が誕生。牡馬の代表産駒は、まだG1未勝利ではあるものの現役でG1常連のディープボンドなどがいます。

ただ、父・ディープインパクトが産駒二世代目にダービー馬(ディープブリランテ)を出したのを皮切りに、早期に数々のG1馬を輩出したのに比べるとやや寂しい種牡馬成績です。

他のディープインパクト産駒の種牡馬、サトノダイヤモンドや、コントレイルなどに今後の期待がかかるところ。

やや皮肉ですが、今後はディープインパクト産駒がライバルとして存在しないので、活躍しやすい環境になるかもしれません。キズナもまだまだ、これから大物を出す可能性もあると思います。


2012年生まれ世代の種牡馬がこれから熱い?


競馬ファンとしては、とてつもなく長かったディープインパクト時代の終焉を寂しく思いつつ、次に時代を築く種牡馬はどの馬なのか注目しています。

来週は、京都競馬場で今年の牡馬王道・クラシック三冠路線の最終戦「菊花賞」が行われます。

三冠初戦の「皐月賞」を制したソールオリエンスと、「日本ダービー」を制したタスティエーラが激突します。

このソールオリエンスの父・キタサンブラックと、タスティエーラの父・サトノクラウンが実は2012年生まれ、共に2015年の三冠路線を戦った同期なのです。

そして、伏兵人気となりそうですが、ドゥレッツァという出走予定馬の父はドゥラメンテ。やはり2012年生まれで、2015年の皐月賞・日本ダービーの二冠馬です。

以下は、2015年牡馬クラシック三冠レースにおける、3頭の成績です。

キタサンブラック:皐月賞3着、日本ダービー14着、菊花賞1着
サトノクラウン:皐月賞6着、日本ダービー3着、菊花賞(不出走)
ドゥラメンテ:皐月賞1着日本ダービー1着、菊花賞(不出走)

2015年の競馬を盛り上げた馬の子供たちが、現在の競馬を盛り上げています。

キタサンブラックについては、現在世界最強馬の座(ワールドベストホースランキングTOP)についているイクイノックスも輩出。

そして、昨日の秋華賞を制して牝馬三冠を成し遂げたリバティアイランドの父はドゥラメンテ。

今の競馬を盛り上げているのは2012年生まれ世代と言って良いと思います。


種牡馬「群雄割拠」の時代が来る可能性も。


現在では日本競馬のレベルが上がり、日本で生まれ、調教され、競争生活を送り、そのまま種牡馬となり成功するケースが多いのですが、それでも海外種牡馬を父に持つ馬ももちろんいます。

先週日曜の東京の新馬戦、出走表の「父欄」には、タリスマニックや、ホークビル、などの名前がありました。

これらの馬についても、少し調べれば現役時代の情報は出てくるものの、馴染みはないのでどうしてもピンときません。

あるいは、日本競馬の次の10年は、これら「未知の種牡馬」も含めた、ディープインパクト一強時代とはまた違う群雄割拠の時代なのかもしれません。

少なくとも、ディープインパクトがあまりに傑出していたことの反動で、しばらくは日本の競馬ファンには馴染みの薄い種牡馬を含め多様化していくのだと思います。

思えば、私は競馬を四半世紀やってきて、最初の10年ほどはサンデーサイレンス旋風が吹き荒れ、その後はディープインパクトの時代が長く続きました。

なので、今まで体験したことのない「群雄割拠」時代というのもまた、それはそれで面白そう。

そんなことを考えながら、競馬新聞の馬柱を眺めるのが好きです。

昨日の秋華賞。
勝ったのはドゥラメンテ産駒のリバティアイランド。

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