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それはまるで、タイムトラベルに遭遇したような空間だった。ーその2【創作日記】

雨模様の土曜日、天王寺公園に向かって歩いてゆくと、アーケード付きの懐古趣味的な商店街に遭遇する。

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懐古的な商店街の店舗の合間に、いくつもの路地がみられる。裏路地は迷路のようであり、飲食店が軒を並べている。元々、戦後の闇市が栄えていた場所で、今もアングラな雰囲気を漂わせているようだ。天王寺駅周辺の表通りと異なる光景がひろがっているようで、興味深い。

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昼前だったこともあり、わたしはある飲食店のサービスランチのメニューに目が留まった。「マグロどんぶり定食・税込み¥550」

「えっ! 安いな!」おもわず、心の中で叫んでしまった。しかし初めて入る店でもあり、不安な気持ちが湧いてきて足の動きが鈍ってしまった。入り口付近から店内の様子をそれとなく窺ってみる。立ち飲み風居酒屋の雰囲気があるが、お客さんの姿はなかった。

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初めての店だったが、¥550円の「マグロどんぶり定食」の魅力には勝てず、勇気を出して入店することにした。

カウンター席に近づくと、「いらっしゃいませ」という威勢のある中年男性の声がした。カウンター周辺は張り紙のメニューで埋められて厨房の様子をみることができなかったが、張り紙の隙間から女性の店員さんらしき人が顔を出してきた。初老の女性だったが、愛嬌のある面立ちをしている。わたしはすかさず、女将さん風の人に「マグロどんぶり定食」を注文した。すると奥から男性の声で「あいよ」という返事があった。

「マグロどんぶり定食」には、小鉢には小芋の煮っころがしやお豆腐。また揚げ魚にトウモロコシとサラダ類を添えた皿も付いていた。そして赤だしも。「マグロどんぶり定食」のコスパに、思わず驚きを隠せなくなった。客が喜ぶ姿がうれしいのか、立ち飲み風居酒屋の女将さんは饒舌になり、色々と話をしてくれるようになった。街は雨模様の一日でじめじめしていたが、美味しくてコスパの良い「マグロどんぶり定食」をいただいて、晴れやかな気分で家路に着くことができた。

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