映画「モリーズ・ゲーム」

 ねぇ、銀河系の中心の匂いってどんな匂いか知ってる?お酒の匂いとラズベリーよ。

カジノもの映画が好きでよくチェックしているが、これは2017年のアーロン・キーソン監督・脚本の作品。「ソーシャルネットワーク」「スティーブ・ジョブズ」の脚本といえば分かるかな。主演のモリーズ役はジェシカ・チャスティン。「ゼロ・ダーク・サーティー」「インターステラー」といえば分かるかな。実話をもとにした作品。

厳格な父の指導のもとスキー選手としてオリンピック出場目前まで来て事故で夢を断たれ、単身ロサンゼルスで生活するようになる。ふとしたきっかけで名だたる富豪が集まる裏カジノの運営を手伝うようになり、その後独立し自ら合法的な、カジノクラブを経営するようになる。順調に拡大するが、しかし、経営は手に負えないほど大きくなっていき、ついには違法な手段にも手を出してしまい、さらには知らないうちにマフィアも絡んでいて、FBIの捜査が入るようになる。彼女は正義感からか顧客情報を売る司法取引は絶対にしたくなく、弁護士とも息が合わず、次第に追い詰められていく。

カジノもの映画かと思っていたら、確かに7割はそのシーンだが、それはエッセンスにすぎない。アーロン・キーソンの巧みなストーリーテリングにより、140分の上映時間はスピーディーに展開していく。そして、物語の重要な核心は、彼女の高潔な、しかし難のある精神と、それを形作った原因に触れていくことになる。

司法の追求も厳しく打ちひしがれていたところに、ふと逢いに来た父(ケヴィン・コスナー)と再会する。モリーは父を毛嫌いしており、早く切り上げたがったが、父は強引に話しをしようとする。彼は心理学の教授でもあった。彼は3分でモリーの心と原因を言い当て、同時に娘への深い愛情を告白する。最後に、運命はちょっとした不運でつまずくことがあり、それも努力次第で取り返すことができるということを映像が示して幕を閉じる。

人生を自ら切り開いて歩んでいくことは厳しい道程である。そして、意外にも運命には運が左右する割合は大きく、ある人は成功し、ある人は脱落していく。自分の不断の努力によって幸運を引き寄せられるという信念を持つ人も多いだろう。しかし、本当に自分の責任によらない部分で不幸に見舞われるという事実もまたあり、それに自責の念で悩む人も多いのだ。

私も、自分の道は自分で決めて歩んできたから、それが痛いほど映画から伝わってきた…。

冒頭の、銀河の匂いの話はそんなモリーがカジノを経営しながら学んでいた天文学の知識から。

旺盛な好奇心を失わなければ、またチャンスは訪れるだろう。
人生はカジノのようなものなのだから。

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