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鳥さん、かわいい鳥さん(モンポウ)

昔から猫を飼っていたから、かわいい小鳥を飼うのは憧れだった。

東京で一人暮らしを始めたから、チャンスだと思っていた。

そんな矢先の頃…

その子は大人になりかけた年頃に、見えた

道端で、怪我でもしたのかうずくまって飛べなくなっていたから

もう、あたし飛べなくなっちゃったの…

って言ってるような目で見つめられたから

私、彼女を持ち帰った

うちは都会のど真ん中
コンクリートに囲まれて申し訳ないんだけど

うちのマンションでしばらく飼うことにした

最初は遠慮がちだったのか

急遽ペットショップで飼ってきたエサもあまり食べようとせず

病院にも行きたがらなかったので私がみてみたところ

怪我も無いのに体が痛いと言っていたのだけど

次第に回復はしてきて私にも慣れてきたみたいで

私の前でも楽しそうに、さえずるようになってきた…

それはそれは高い美しい声で

私はその声に魅了された

ピトピトコロリト ドンデバストゥタンボニト
ピトピトコロリト ドンデバストゥタンボニト…

でもあまり活動的では無かったし

鳥さん、かわいい鳥さん

本当の名前は教えてくれなかったし

昼でも眠ってることが多かったから

エサも別のをペットショップで飼ってきて与えてみたり

病院には相変わらず行きたがらなかったので私が手当てしていたんだけど

私はありとあらゆる世話と家事を彼女のためにしていたのだけど

それ以上は回復しなかった

もしかして

痛いのは、体ではなく、心だ

そう考えた私は

週末には彼女の調子が良ければ街に連れ出して美術館やデパートなどを見物して

心の栄養補給になるかなって思って映画にも連れ出したんだけど

体調の良く無い彼女を連れまわすのはなかなかしんどかったのだけど

私も体力は無いけど彼女はさらにあまり長くは歩けない

巣に戻ったら月曜日は再起不能になって寝込むを繰り返して

果たしてこれが正しいのか分からない

けど心の栄養は大事だと私信じて繰り返してた

ある日気づいたことがあって

私は見てないふりをして物陰からこっそりそれを見ると

美しい小柄な体に長い髪

華奢な手足 透き通るような白い肌 あどけない瞳

鳥さん、かわいい鳥さん

彼女は、ときおり部屋の高いところにある格子窓の外を眺めてた…

私は仕事や、実家に用事などで 家を開ける日も多く

そんな時は彼女はひとりぼっち

彼女を一人にしておくのは心苦しかった

そんな時は彼女はずっと

高いところにある格子窓の外を見つめてたのかな…

ある日彼女はだいぶ飛べるようにもなってきたので

その日は隠れもせず、その格子窓のほうへ鳥籠の中で必死に行こうとしていたので

私は意を決し

格子窓を開けて

鳥籠を開けた。

少しだけだよ。って私つぶやいて。

すると鳥さん、わきめもふらず

あっという間に飛んでいき、

外へ

初夏の青い空へ

元気よく飛んで消えていった

都会のど真ん中の

コンクリートに囲まれたマンションの
コンクリート打ちっ放しのひんやりとしたワンルーム

薄暗いその部屋に

私と鳥籠はぽつんと取り残された

お別れの挨拶も、無かった…。

夜は蒸し暑くて、でもクーラーをかける気にもなれず

一人で、

私は、

眠れぬ夜を、

過ごした。

翌朝、その窓を叩く音がするので

何かと思ったらその鳥さんだった

再び私と鳥さんと鳥籠の生活は戻ってきた

私は嬉しかった

私は彼女を愛していた

彼女も私を愛してくれていた、と思う

私の前で楽しそうに、さえずってくれたから。

ピトピトコロリト ドンデバストゥタンボニト
ピトピトコロリト ドンデバストゥタンボニト…

それはそれは高い美しい声で

私はその声に魅了されていた

でも

楽しそうに報告してくれた、その内容は

大概の鳥語が分かる私にも意味不明で理解が難しかった。

外で知り合いの異性に会ってきたと。

理解が難しかった。

私は嫉妬した。

私は再び閉じ込めた

それからも鳥籠での様子はあまり活動的では無かった

鳥さん、かわいい鳥さん

本当の名前は教えてくれなかったし

本当の気持ち、考えは言葉でも濁され

よく分からなかった

いや、私が分かろうとしなかっただけかも知れない

昼でも眠ってることが多くなってきていて

もしかして

痛いのは、体ではなく、心だ

そう思うようになって

その手の病院に無理やり連れていったらそうだった

しばらく通ってもらったが、

一向によくならなかった

彼女も、私も、さえずることも減ってきた

話す話題がなくなってきたのだ

秘密があるのはお互い様なのだが

だんだん活動的じゃなくなってきていて

そして私が見ている時でも彼女は

部屋の高いところにある格子窓の外を眺めてぼーっとすることが多くなってきた…

美しい小柄な体に長い髪

華奢な手足 透き通るような白い肌 あどけない瞳

私は彼女といるだけで癒された

ような気がしていた

私は仕事で海外に出張することや、実家に用事で帰省するなどが増えてきて

家を開ける日も多く

そんな時は彼女はひとりぼっち

彼女を一人にしておくのは心苦しかったし

私少し考えて

生活のため、私は彼女に合鍵を預けて少しのお金を渡して自由にしたが

昼は何をしているか分からなかったが私が帰る頃は必ず家で寝ていた

私を待っていた

しかし

彼女はだんだん活動的じゃなくなってきていて

昼でも眠ってることが多くなってきていて

身体中が痛いとみもだえることも頻繁に発生し

病院でも原因不明だったが通院を続けさせた

ある日思ったことがあって

私は彼女が寝ている間に、私の部屋の隅々を調べたら

見知らぬカッターナイフや、開けられた漂白剤がそれぞれいくつか見つかった

私はそれをそっと元の場所に戻して

見て見ぬ振りをして

彼女の病院を無理やり変えさせた

それからますます、彼女は様子がおかしくなっていった

夜中に変なことをさえずることが多くなった

ある日は一日中眠っていて目を覚まさなかったので、私は会社を休んで

じっと彼女を見つめ続けて見守った

目を覚ますか、息を引きとるのか…

恐ろしい一日だった

それからますます、彼女は様子がおかしくなっていった

身体中が痛いとのたうちまわる時もあり、また

夜中に変なことをさえずり始めたと思ったら、

私の首を絞めにかかることもあった

私は、殺されると思った

そうかと思えば

日によっては機嫌が良く

私の前で楽しそうに、さえずってくれた。

ピトピトコロリト ドンデバストゥタンボニト
ピトピトコロリト ドンデバストゥタンボニト…

美しい小柄な体に長い髪

華奢な手足 透き通るような白い肌 あどけない瞳

鳥さん、かわいい鳥さん

私は彼女を愛していた、と思う

彼女は私を愛してくれていたのだろうか…?

私少し考えて

彼女が外出するのを公認するようにした

ちょっと痛いけど、週に5万ほど渡して

すると彼女は喜んで外出するようになった

昼はどこに行っているのかは具体的には分からなかったが私が帰る頃は必ず家で寝ていた

私を待っていた

しかし

彼女は身体中が痛いとみもだえることも頻繁に発生していた

ある日思ったことがあって

私は彼女が寝ている間に、彼女のたくさんの薬の残数を数えておくようにしていたら

ある期間、飲んでいない日が続き、そして

ある朝、目が覚めたら隣に彼女がおらず薬が全て飲み散らかされてることに気がついた

床に散乱したおぞましい数の薬の空きカス

オーバードーズだった

彼女は浴室で泡を吹いて倒れていた

しまった…、と私は思った。

私は、救急車を呼び、そしてすでに調べていた彼女の母親を呼んだ

母親は私が彼女をかくまっていたことについてと

その経費と

その原因と

今後の彼女のことについては知らんぷりだった

彼女は手足を拘束されたまましばらく入院し

私は母親の許可を得て、精神病院への手続きをした

数日で退院したが

私の心配と心労をよそに

彼女は平気そうな顔をしていた

私の行動は早かった

私は役所で生活保護の手続きを開始するよう手配して

彼女の仮住まいを即金で確保して用意して

会社を数日休んで家電やベッドも買って設置までして

しばらくの生活費となる札束を手渡して

彼女と決別した

彼女は格子窓の外に羽ばたいて行ったのだった

私は部屋に戻ると

彼女の暴れた跡と、散らかった薬の残骸で汚れた部屋、

コンクリートに囲まれたマンションの
コンクリート打ちっ放しのひんやりとしたワンルーム

薄暗いその部屋に

私と鳥籠はぽつんと取り残された

夜は蒸し暑くて、でもクーラーをかける気にもなれず

一人で、

私は、

夜、熟睡できた。

鳥さん、かわいい鳥さん

本当の名前は判明してたが彼女からは結局教えてくれなかったし

本当の気持ちは分からなかった

いや、私が分かろうとしなかっただけかも知れない。

私は彼女を愛していたのだろうか…?

でも、

彼女は私を愛してくれていた。

彼女なりに。

そう…

信じてる。

彼女は私の前で楽しそうに、さえずってくれた。

ピトピトコロリト ドンデバストゥタンボニト
ピトピトコロリト ドンデバストゥタンボニト…

私は棲み家と札束を渡して彼女に言ったのだ。

出て行って、と。

幸せの青い鳥は、

喜んで彼方へ羽ばたいて行って、消えた。

私の気分は初めてまとまった幸せを得られる機会を得たのに、それを自ら放棄したような絶望感しか無かった

また、この時ほど自分の無能さと無責任さを思い知ったことは無い。

私は仕事で海外に出張することや、実家に用事で帰省するなどが増えてきて

家を開ける日も多く

そんな時は彼女はひとりぼっち

彼女を一人にしておくのは心苦しいと考えていたが、

今思えば、私は彼女と一緒に居たく無かったのかも知れない

その頃から、

もしかしたらもっとだいぶ前から。

私思った。

もう二度と、どんなに美しくても、

鳥は飼わない。

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ベタ シャーデンフロイデ

私は熱帯魚ベタ、美しいヒレはご主人様のためだけにあるの。他の大きなヒレのある魚は許せない、ここは私だけのアクアリウム。代表作はマガジン「メリーバッドエンドアンドリドル」に。お気に入りは「VeryBest」「特別好き」に。フォローアンフォローブロックスキ嫌い引用コメント御自由に。

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コメント2件

読みました。
これがベタさんの見た地獄のひとつ、なのですね。
人の数だけ人生がある、の普遍性しかり、
人の数だけ地獄があるのを改めて感じました。

このnoteを読んで、「Nのために」にでてくる
灼熱バードというお話をふと思い出しました。
地獄でしたが天国かと幻影を見せられていました、いえ、自らそう見ていたのかも。Nのためには視聴していませんが、想起されるというなら光栄です
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