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ご挨拶@ベタ東京都知事の国盗黙示録

(…の続き。)

ご挨拶

 この度、東京都知事に就任いたしましたベタ シャーデンフロイデです。
 都民が決める。都民と進める。これが私の目指す都政の姿であります。常に都民ファーストで、透明性を高め、皆様の理解を得ながら「都民の、都民による、都民のための衆愚都政」を行ってまいります。
 「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」と言う言葉があります。東京都民の皆様が、搾取されている事実をご存知ですか。そう、「東京」と言うブランドです。
 東京ネズミーランド、東京イカ大学、首都大学東京、東京ドイツ帽子村、東京ゲームでショー、これら「東京」はいずれも東京にございません。無断で、「東京」と言うブランドプロパティを利用されているのです。

 東京は、日本の成長のエンジンです。東京の大改革によってこのエンジンを力強く動かし、東京、そして日本の明るい未来を切り拓いてまいります。無能な他県が東京を勝手に名乗るなら、いっそ併合して仕舞いましょう。そして、東京が日本の成長のエンジンに、いえ日本が東京の成長のエンジンになるのです。「トウキョウ」「ニホン」どちらが世界で有名かご存知ですか?そう、「トウキョウ」です。日本は東京に国名変更すべきなのです。「大阪都構想」ならぬ、「日本都構想」。原動力は、皆様一人ひとりの支えであります。ご協力を心からお願い申し上げます。

ベタの国盗黙示録

 …という公約と就任の挨拶で面白がられ一躍時の人となった私ベタは、十八歳以上が選挙権を獲得したタイミングも功を奏し若者の悪ふざけ票をごっそり獲得し、二位に大差をつけ圧勝し当選、公約を次々と実現し、東京を、日本を変革していったの。

 まずは最初に槍玉にあげた通り、千葉を攻略。「東京」の登録商標を勝手に利用したとして、莫大なIP利用料として巨額な損害賠償を請求。司法取引の協議の末、千葉を東京の二十四番目の区として併合する事に両者合意。千葉県民は大喜びしたみたい。

 次にターゲットにしたのは埼玉でしょ。最近翔んで垢抜けたのか、県ショナリズムが高揚していることが私、気に入らなかった。それに「東京ドーナツ化現象」と言う言葉が東京がドーナツになるような物言い、許せなかったので、何としてもベッドタウン埼玉は欲しかったのだ。そこでベタ、江戸幕府から囲っていた優秀な忍者、御庭番たちを多数派遣し調査したところ埼玉の南部、東京との県境に当たる地域(さいたま市より南の地域や、川口市、草加市など)の市民は軒並み自らを「東京に(小声で…の近くに)、住んでいる」とうそぶいたことが人生で一度以上あることが判明、これを証拠に埼玉県を相手に偽証の放任罪で告発、これも併合で示談成立した。が、元埼玉県民の上の方の地域には不満が残る形に。あれ?埼玉ってこんなに広かったっけ?ま、いっか。

 その次は手強かった。神奈川県ね。神奈川は巨大な軍事施設もあり、かつ、IR法案によるカジノ・リゾート誘致に成功し巨万の富を得ていて、しかも最近オシャレになり始めていて私、気に食わなかったの。東京からもカジノに通ってギャンブル中毒になる者が続出していたので、私ことベタ都知事としてはその悪影響ばかりが神奈川県警の監督不足で広がっている事案を追求、改善なければ関連施設の強制撤去を期限付きで予告し、当日その時間テレビ生中継に出演し最後の訴えを行ったの。けれど県からましな返答がなかったため、石原都政時代の遺物、都が所有する衛星軌道3万6千キロメートル上にある軌道レーザー衛星の照準を設定し、私マイクに「バルス」と呟くとTwitter上でも「バルス」がトレンド入りするとともに、その瞬間神奈川県の三浦半島は消滅し、後日二十六番目の東京区として併合。大成功ね。

 ちなみに神奈川を攻略する際に念の為挟撃にと静岡県にも密使を放ってたんだけど、こちらは「しょんない、うっちゃるべ」であっさり二十七番目の東京区となった。

 …と、そこまではなかなか楽しかったんだけど。

ベタ、飽きる。

 それから三年の間、知事は全く表に出てこなかった。日本を東京にしてしまう野望も、飽き性のベタは27区で満足してしまっていたのだ。彼女は忙しく仕事しているふりをして、自身のプリキュアのまとめサイトなどを満足いくまで作り直してたり、けっこう頻繁に仕事をサボってカフェで偽名で個人的なnoteを書いて遊んでいた。最近の彼女の流行りは「タピる」と「タヒぬ」をレトリックとして可愛い女子っぽいふりをしながら嫌いなやつをディすると言う高度な文章を展開していたが、気づくものは少なく、ドラたんぐらいしかコメをくれず、大した人気は出ていないのだが孤高なベタは我関せず。もうやめよっかなー公費・公用車・温泉付きホテルの私的利用がバレそうだし、その前に。とか考えていた。

 ところがここにきて急展開である。日本有数のインフルエンサーである@しらゆきの煽りで前女王であり親友、てゆーか同級生、てゆーか連れ、でもあるカグヤが激怒しているという。そう言えば今の時代、必要なのは「エモさ」だって、noteで最近周囲が言ってた。エモいとバズるんだってイイナー。とか思っていたベタはヒラメいた。左ヒラメの右カレイ、の事ではない。エモさの演出ではカグヤを信じれる。二人は密会し、打ち合わせた。年齢も一緒、よく似た二人だ。決め台詞はこれだ。

「もしかして私たち」「私たちの身体が」 「入れ替わってる~!?」

 ベタは任期を前に辞任する事を発表した。

エモ太郎のいま

 その頃、エモ太郎は密かにある人物のもとですくすくと育てられ、修行していた。あの流行のダンスを――。

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楽しい哀しいベタの小品集 代表作は「メリーバッドエンドアンドリドル」に集めてます