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「ホップステップだうん!」 Vol.176

今号の内容
・巻頭写真 「べてるで育った子どもたち〜それで順調大丈夫〜」 江連麻紀
・続「技法以前」150 向谷地生良 ケアがつくる自己―「技法三昧」から「技法以前」へ
・「開店休業」の当事者研究  宮西勝子
・暗殺集団のデスチェイシング・逃亡サバイバルタイプの統合失調症
紺野陽介
・福祉職のための<経営学> 038 向谷地宣明 「安心して絶望する」
・ぱぴぷぺぽ通信 すずきゆうこ 「病気を呼びよせてる?」


いよいよ今週末に迫ったべてるまつり。テーマは「べてるで育った子どもたち〜それで順調大丈夫〜」です。

結婚を反対されて駆け落ちしてたどり着いた浦河で、お金の苦労をしながら3人の子どものお父さんの石川さんは、安心して子育てをしていたそうです。

お金がなくなったら子どもを連れて向谷地家でご飯を食べて、その後子どもたちを里子として託した川村家では石川さんも参加して夏はバーベキュー、運動会、お正月は餅つきをして子どもたちと度々会っていました。
子どもたちにとっていい環境だったから預ける後ろめたさもなかったそうです。

「子どものことは安心していたから、安心して自分のお金の苦労ができたよ。」と、石川さん。

写真は石川さんの次男の琢磨くんが成人式で浦河にきたときに親子で撮影させてもらいました。

(写真/文 江連麻紀)

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続「技法以前」150 向谷地生良

ケアがつくる自己―「技法三昧」から「技法以前」へ

最近、”燃え尽き状態”に陥ったある支援者に会う機会がありました。その人が私の顔を見るなり「自分は”技法三昧”になっていたような気がします。技法以前の大切さを痛感してます」と話してくれました。最近、人を許せない聖職者、怒りのコントロールがきかないカウンセラー、人を誉めることができないセラピスト、自己評価の低い治療者などに出会うことが多くなりました。先に紹介した支援者も、資格を取り、専門性を高めるために、知識や情報を集め、学会発表を重ねてキャリアを積み重ねてきたつもりが、ますます全く違う”ブラック”な自分が立ち上がり、ますます臨床が苦しいものになっていったと言います。

ここで、思い出すのが『物語としてのケア』(野口祐二・2002 医学書院)の中で、取り上げられている「ケアがつくる自己」という視点です。その意味では、この本は、当事者研究を考える上でも、重要な示唆に富んだテキストと言えます。そこで、「物語としてのケア」の中で紹介されているナラティブ・アプローチに即して、「当事者としての専門家」を考えてみたいと思います。

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