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自治体の海外向け情報発信を成功させるため【前編】避けるべき2箇条 ~トライリンガル外国人社員の経験談~

いつも、弊社のノートをご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、弊社立ち上げから携わっている王がお届けします!

社内では、社歴も最も長く、自治体案件も最もたくさん経験してきましたので、日本の自治体が海外向けの観光プロモーションのいろいろについて書いてみました。

今回は技術的な部分を置いといて、「考え方」という根本的なところからお伝えいたします!

1.『情報を出した』と『情報が届いた』は異なる

情報が必要とする方々に届かず、一方的に情報発信をしているところが多いです!

①ウェブサイトについて

海外向けの観光情報発信と言いますと、おそらくどこの自治体の方々でも、ひとまず、「観光情報サイトを多言語化する」ことを考えるのではないでしょうか?

確か、海外向けの観光情報発信とインバウンドの誘客を頑張っている自治体、観光協会は、大体観光情報サイトを多言語化していますよね!

ここで、自治体のご担当者様に問いかけます!

皆さんの所の多言語観光情報サイトには、海外からのアクセス状況を把握されてますか?

ここで「いいえ」と答える方に、一緒に考えていただきたいです。

「多言語の観光情報サイトの役割は何でしょうか?」

皆さん、お金をかけて、時間をかけて、素材を集めて、ウェブサイトを構築するのは、最終的には、 見てもらうためですよね?

どのようにすれば、自分たちのウェブサイトを日本に来ようとする海外のユーザーに見てもらえるのでしょうか?

おそらく皆さんもご存知だと思いますが、Google とかのブラウザーで検索すると関係情報が表示されますよね?

ご参考として、Google Trendsで、直近5年間米国ユーザーからのキーワード検索状況を調べてみました。

「日本」、「東京」、「大阪」、「鳥取」の四つのキーワードを見比べていますと分かりやすいですよね!

Googleキーワード検索

「日本」は最も人気で、「東京」と「大阪」も外国人に人気な観光地なので、ある程度の人気があります。「鳥取」に関しては、東京と大阪に比べて、海外での知名度は比較的に低いため、検索キーワードとしての人気も低いことが分かります。

では、皆様の県、あるいは市町の名前は、海外ではどれほど検索されているか、是非見てみてくださいね!

>>Google Trends

海外での知名度が低いと検索されにくく、せっかく作った多言語のウェブサイトは海外のユーザーの目に触れません!もったいないですね!        

最も訪日人数が多く、最も消費額が高い中国では、情報収集の手段として、ウェブサイトはほとんど使われていませんし、世界範囲で見ても、各種情報ポータルサイト、各種 SNS、インフルエンサーなど、 日本の観光情報を収集する手段がたくさんありますので、意識して自治体の観光情報 Web サイトを見る人は少数派です。

② SNS について

飲食店では、店内でポスター、カードなどで、 Facebook、Instagramの情報を出して、来店されるお客様にフォローしてもらうことが多いですよね!
1個の「いいね!」を集めるのに500円は、正直高いなっと思いますが、一度来店したお客様を囲い込み、リピーターになってもらうには、良い方法だと思います。

ですが、自治体の観光プロモーションでは、そう簡単に実現できません。

なぜなら、基本的には自分のところを知らない、そして、来たこともない、
全くの新規ユーザーに情報を届ける必要があるからです。

多言語Facebookページを運営している自治体様もかなり多いです。国際交流員の方が頑張って多言語で投稿しているものの、順調にフォロワーも増加せず、毎回の投稿を見ている人も、反応する人も少ないケースが多く見られます。

なぜでしょうか?

Facebookの公式アカウントは、ウェブサイトと似ている部分があります。

自治体や企業などの公式アカウントは、誰でも見れて、フォローできるオープンなアカウントですが、Facebook 広告を使わない限りでは、 その存在を新規ユーザーに知ってもらう方法は極めて少ないです。

✔何からの形でFacebookページの存在を知ってもらい、ページ名を検索させる
✔既存のフォロワーがFacebookで繋がっている人に「いいね」をリクエストを送る
✔既存のフォロワーがページ、或いは記事をシェアし、新規ユーザーの目に触れさせる

承認する

さらに、頑張って前述の方法を使っても、広がる範囲 の限界がありますし、そのページを見た人々は必ずしもそのページに対して興味を持って、フォローすると限りませんよね!

私は日々このようなページへのいいねのリクエストをたくさんもらっていますが、本当に興味を持っているページだけを見て、フォローしています!

③プロモーション動画について

皆さんはもうお分かりでしょう。動画の場合も前述した①、②と同じようなことになっていることも多いです。

多くの自治体は、毎年あるいは定期的に海外向けの動画制作の予算がありますので、動画制作を定期的に実施しています。そして、海外向けのプロモーション施策と完全に別事業で、動画制作だけのための単独予算の場合も多いです。この場合、プロモーション業務と連携できず、何にどう使うかを決まっていないまま、制作することになりますし、制作した動画も全てが情報発信に使われず、眠っている動画素材がたくさんある自治体様も多いのではないかと思います。

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これは、行政の予算の出方の問題で、仕方ないかなと思いますが、せめて作った動画を正しい発信方法で拡散して行かないと見てもらえませんので、もったいないです。

皆さんのところはいかがでしょうか?
特にこの一年間、コロナでインバンドが来日しないため、海外向けの情報発信を行う予算が出ませんが、動画制作が含む所謂「コンテンツ制作事業」や「観光コンテンツの磨き上げ事業」などがあったのではありませんでしょうか?

余談ですが、よく見かけますのは、動画を作ったので、登録者数の少ない自分たちのYouTubeチャンネルやFacebookページに載せるだけで、結局、作った多言語の動画は、あんまり外国人に見られないことが多いですよね!もったいないですね!

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情報発信は、情報を提供する側本位ではなく、情報を受け取る側方位になるべきです。その目的は、自治体が情報を出すことではなく、旅行で来日する海外の人々に届けることですよね!

2.『自治体が提供したい情報』と『ユーザーが欲しい情報』は異なる

ユーザーが欲しい情報ではなく、一方的に出したい情報を発信しているところが多いです!

①ウェブサイトについて

前述通り、インバウンドを意識している自治体の観光情報サイトは、ほとんど多言語化されていますが、ただ単に自動翻訳機能を搭載させるだけのものも多く見られます。

デザイン、レイアウトに対する日本人と外国人の好みは、一旦置いておいても、外国人が興味関心を持つコンテンツをわかりやすく出せているか、外国人ユーザーの使い勝手がどうなのか、 ウェブサイトの内容を見て、この場所へ行きたいと思えるのか、この場所へ行くイメージができるのかなどをきちんと考えて作っていないと、情報発信する目的を果たせない ことになりうるのです。

ネット上で自分が行きたいなと思っている宮城県の情報を調べたら、こちらのウェブサイトを見つかりました。 多言語のページを確認してみますと、日本語ページと同じくエリアを選んで情報を検索することになります。これは土地勘の全くない初めて訪れようとする外国人には、情報提供になっていないのではありませんでしょうか?

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残念ながら、このような多言語の観光情報サイトは無数にあります。上記のようなエリアで調べるものもあれば、春、夏、秋、冬の選択肢で観光情報を調べるものもあります。この場合、常識ですが北半球と南半球は逆になりますし、 日本のように四季のない国もたくさんあります。そのような国々の人にとって、 わざわざ日本の四季はそれぞれ何月から何月までを調べる必要があります。 せっかく訪れようとするモチベーションが下がり、一気に冷めて、ウェブサイトから離脱することも考えられます。

ウェブサイトの流入状況などを定期的に確認して把握されている自治体様であれば、是非各ページの直帰率などを確認してみてください。 離脱率が高いページは、コンテンツ内容は魅力がないのか、あるいは分かりにくいのかもしれませんので、見直してリニューアルする必要がありますよ!


②SNSについて

海外向けに情報発信をするための多言語をSNSのアカウントに投稿される記事の内容も多言語のウェブサイトと同じく、旅行で日本に来る外国人が見ることを意識せず、ただ単に日本語の投稿を多言語化するだけでは、外国人から見て面白くないものになってしまいますので、継続してフォローしていただくことも難しくなりますし、記事をシェアしてもらえませんよね!

または、他言語の記事で投稿しているものの、記事のリンク先のウェブサイト、或いは動画、写真の内容は日本語のままのものになっているケースも多く見られますね!

記事を読んでいる皆さん、ご自分のところは、大丈夫でしょうか?

③動画制作について

先述通り、動画制作業務と情報発信業務が分離され、使用目的前提で動画制作しないことも多いですよね!

YouTube 用の動画、 Facebook 用の動画、あるいは海外の旅行会社と商談をする際に使用するプロモーション動画など、使うシーンによって、見る人も違いますし、必要な動画の種類も、尺も違います。

よく見かけるのは、日本国内向けに制作したプロモーション動画に、多言語の字幕を加えるだけで、海外向けに使用するケース、 旅行会社と商談をする際に使用するようなプロモーション動画に無理やりサムネイルをつけて YouTube に投稿するケース、前置きが長く、テンポの遅いプロモーション動画やYouTube動画をFacebookに投稿するケースなどがあります。
結局、プラットホームの性質やユーザーの好みなどに合いませんので、視聴につながりにくいです。

または、外国人見せるための動画なのに、完全に日本人が好むコンテンツ、日本人の目線で制作することも多々あります。

神戸や横浜などの洋風の街並み、地元有名なカフェ、パン、スイーツなどのコンテンツで構成した動画を欧米豪のユーザーに配信しても、魅力を感じる人は少ないでしょう。

横須賀三大グルメである「ネイビーバーガー」はとても美味しいですが、旅行で日本に来るアメリカ人には刺さらないでしょう。

この記事を読んでいる皆さんは、下記のシーンを見て、そして、字幕あるいはナレーションで、「富山湾産白エビ」、「真タラの白子」と聞いていると、どう反応しますか?美味しそうだと思いますよね?

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これらの食材の味がわかる日本人であれば、おそらく「うまそう!」言うでしょうが、日本料理、白えびや白子のイメージがまったくないオーストラリア人から見たら、どうでしょう?大半の人は、おそらく、これは食べ物であること自体すら分からないでしょう!

同じく、コロンビアへ行ったことがない日本人の方々に、これを見せても、味を想像できますでしょうか?

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全てのプラットフォームに適用する動画も、全てのユーザーの心に刺さる動画もありません。動画を作る際に、載せるプラットフォームの性質と見てほしい人たちの好みに合わせて制作すべきです。

以上2点、押さえておきますと、海外向けの情報発信は半分成功していると言っても過言ではありません!

今回は前編、この辺までしておきます。

海外向けの観光情報発信はどうしたらいいのか?
どんな手段が有効なのか?
多言語ウェブサイトどうすればいいのか?
狙っているターゲットは、私たちの地域のどんなコンテンツに興味を持ってくれるのか?
動画制作、どうしたらいいのか?
外国人目線って、どうしたらできるのか?

などについての技術的なお話は次回、【後編】でじっくりご紹介いたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


コロナ禍は未だに落ち着かない2021年ですが、はやくも弊社は5年目に突入しました!
自分もこの会社と一緒に成長して、5年目です。

>>社員インタビュー:国内外問わず、常に観光客目線を忘れない。グローバル社員が語るBEYONDの仕事

日々、クライアント様、代理店様、協力会社様、たくさんの方々に助けていただき、ここまで来れました。心から感謝しております!
今後も、このように、我々の知識やノウハウを記事で皆さんに共有し、共に成長できればうれしいです。

では、また次回に!

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ビヨンドではこれからも地方のデジタルマーケティングに対するお悩みをトータルで解決できるマーケティング総合商社を目指して活動してまいります。

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