ホイッスル
またこの場所か。
鳴らないホイッスルに期待して、毎日毎日スタートラインでクラウチングスタートの格好をして、待っている。
隣のレーンには、誰もいない。
観客も、誰もいない。
ただ一人で、ずっと待っている。
心の準備は万端だ。転んでも、障害物があっても、なんとしてでもゴールに向かって走り続ける覚悟はある。
5つ前のレースですでにスタートした人の後ろ姿をずっといまかいまかと見据えて。
が、ホイッスルは、鳴るのだろうか。
わたしが待っているあのホイッスルは、鳴ってくれるのだろうか。誰が鳴らしてくれるのだろうか。
ひとりぼっちのレースに、ホイッスルを鳴らしてくれる人など、いるのだろうか。
鳴らすのは、
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