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VOCALOIDよれよれ曲のススメ【ボカロリスナー presents Advent Calender 2021】

はじめに

 初めましての方は初めまして、そうではない方はお久しぶり。B,F(@BigBigfriend333)と申します。
 普段はボカロリスナーとして全曲チェックをしたり、曲紹介配信をしたり、ボカクラでDJをしたり、曲レビュー記事を執筆したりと、ありがたいことに色々と活動をさせて頂いている者です。
 しかし今年は様々なイレギュラーが重なりに重なることで、4月以降新曲チェックはおろか、ボカロに触れることすら殆ど行うことのない時間を過ごしました。
 ※リスナー仲間と飲んだくれる、カラオケで曲に触れて感情になるなどの活動は行いました。楽しかったです。

 「そろそろイレギュラーも落ち着きつつあるし、いい加減ボカロリスナー活動を再開しないとリスナー免許剥奪だな……」と思っていた今日この頃。丁度良いタイミングで今年も「ボカロリスナーアドベントカレンダー」の季節がやって参りました。
 主催のobscure.(@voca6458)さんには改めて感謝を、お互い今年はあまり曲を聴くことができなかったですね。

第一会場

第二会場

 私は第一会場の22日担当です。前日担当はみゅう(@uRFSIaKczIbf3hi)さん、記事はこちら。

 この企画ももう3年目、私も皆勤で3回目の参加となります。回を重ねるごとに参加人数は増え、論文のような分厚いものや、感情がたっぷり詰まった読み応えのある記事が今年も盛り沢山ですね。
 そんな中、今年のVOCALOIDニワカな私は何を書こうかな、と言うか何を書けば良いんだと悩みに悩み、下記2択のアンケートを実施しました。

「VOCALOIDから離れた2021年の備忘録」
or
「VOCALOIDよれよれ曲のススメ」

 2日間に渡っての投票は予想外の接戦となり、最終的には1票という僅差で本記事の勝利となりました。いや1票差って何???

 あまりにも僅差だったので、時間があれば備忘録の方も書きます。前述したイレギュラーの話、近しい人にしか言っていなかったので報告と整理も兼ねて。ちょっと暗い話が多くなると思うので、苦手な人は気を付けてね。

 まあそんなこんなで今年のアドベントカレンダー参加記事はこちらとなります。早速やっていきましょう!!!

「VOCALOIDよれよれ曲」ってどんな曲?

 まずはそもそもの話、皆さんは「VOCALOIDよれよれ曲」をご存知ですか?
「VOCALOIDよれよれ曲」とは、主にニコニコ動画にて「VOCALOIDよれよれ曲リンク」というタグが付いた動画群を指します。
 以下、ニコニコ大百科より引用。

VOCALOIDよれよれ曲リンクとは、よれよれしたボカロ曲である
VOCALOIDよれよれ曲リンク(ニコニコ大百科)

 うん、何のこっちゃと言った感じですね。ちょっとこれだけでは掴みかねると思うんで、同記事の概要を読んで行きましょう。

サイケデリックだったり、ローファイだったり、ゴミだったり、脱力系だったり、リズムが変だったり… いろいろな味がないまぜになって、いわく言いがたい「よれよれ」した感覚をよびおこす、ボカロ音楽につけられるタグだ。え?分からないって?な~に心配はご無用、聴けば分かる。さあめくるめく不思議音楽を巡礼しよう!
VOCALOIDよれよれ曲リンク(ニコニコ大百科)

 少しは分かりやすくなりましたかね?簡単に「VOCALOIDよれよれ曲」を表すのならば、「変な曲」でしょう。
 悲しいかな、所謂メインストリームに成り難い音楽であり、偶然か態とか、オケやメロディがどこか不安定(よれよれ)だったり、気の抜けるような緩さのある歌詞や曲調だったり、そういった曲を私たちは「VOCALOIDよれよれ曲」と呼称しています。

 関連タグとしては「アンダーグラウンドボカロジャパン」や「感性の反乱β」、「VOCALOID幻想狂気曲リンク」(アングラ寄りの曲が知りたい方はこの辺のタグをチェックしましょう)。
 関連ジャンルとしては「ボカンビエント」や「ボカイノセンス」、「オルタナティブミック」が存在します。
 何となく「VOCALOIDよれよれ曲」が何たるか、お分かり頂けたのではないでしょうか?

「VOCALOIDよれよれ曲」の歴史

 さて、ニコニコ大百科にも登録されている「VOCALOIDよれよれ曲」、その始まりは何だったのでしょうか。
 該当タグが初めて使用された作品は、2011年6月27日に投稿された、ManHoleManさんの「manhole」です。

 ManHoleManさんは2009年10月~2014年1月に活動されていたボカロPで、本作はVOCALOIDオリジナル曲7作目に当たります。
 公開した作品の全てに「VOCALOIDよれよれ曲リンク」、もしくは関連タグが付けられるような、まさにVOCALOIDにおける ”そちら” の音楽のパイオニアですね。

 本作をきっかけとして、2011年以前の作品にも「VOCALOIDよれよれ曲リンク」タグが使用されるようになり、ひとつのジャンルとして確立されるに至りました。また2021年現在には我々に根付いた文化として愛されるようになったのです。
 気になるのはその規模感ですね。一体どれ程の数が世に送り出されているのでしょうか。年別投稿動画数を表で見るとこんな感じになります。

年別 投稿動画数比較(2021/12/19 調べ)

 全体の印象としては、「思ったより多い!」でした。全曲チェックをしていた身としての肌感覚としては、1年で50曲もない程度でしたし。しかしここ数年は予想を上回るかなりの数が投稿されていることが明示されました。
 2017年で一気に投稿曲数が増えたことが分かりますね。2016年以降VOCALOID界隈が再興しつつあったこと、またハチ(@hachi_08)さんの「砂の惑星」によって色々と影響が与えられた年でもあったこと、それが「VOCALOIDよれよれ曲」などのアングラ曲にも及んだのかな?という印象です

 また2020年~現在でもかなり曲数が増えています。これは「プロセカ」の存在や後述する「ボカコレ」によって投稿曲全体の母数が増えたこと、またよれよれ曲をコンスタントに投稿するボカロPが増えたことが影響しているのではないかと考えられます。

 少々話は逸れますが、VOCALOIDタグが付いた動画の年間推移が、個人的には意外な結果となりました。
 所謂「焼け野原」と呼ばれた2014~2015年は、黎明期の2012年頃と比較し投稿数が少ないことは分かっていましたが、ボカロシーンが再熱したと言われている2016年以降の投稿数の方が少なかったのです。投稿者側としては寧ろ昨年まで盛り上がりがあまり無かったとさえ言えるかもしれません。
 ただし、今回の集計はニコニコ動画に限定しているものなので、YouTubeTikTokを始めとした他プラットフォームを含めると、結果は異なるのかもしれません。現にYouTube限定曲などはここ数年で増えているのですから。
 一方、2020年~現在は「プロセカ」や「ボカコレ」の影響か、黎明期を追い抜く程の投稿数となっています。物凄い盛況ぶりですね、快挙と言って良いでしょう。
 この勢いが2022年も続くのか、それともまた落ち着くのか。今後のボカロシーンからも目が離せません。

代表曲と代表ボカロP

 「VOCALOIDよれよれ曲」の代表曲と言えば前項でも紹介した「manhole」が挙げられますが、近年また新たな代表曲が生まれました。
 それは彗星のように現れ、瞬く間に殿堂入りを果たしたこちら。
 そう、littlebylittle(@littleb_ylitt1e)さんの「へんじんおんがく」です。

 2021年4月に「The VOCALOID Collection - 2021 Spring - (通称:ボカコレ2021春)」という、ドワンゴ公式ボカロ曲投稿祭が開催されました。
 昨年末から始まった投稿祭であり、今年も沢山の参加者によって(本当に)数多くの作品が公開され、本作もそのひとつです。

 「VOCALOIDよれよれ曲」はその性質上、沢山のリスナーに好まれる、キャッチーな音楽とは言い難いものです。そんな中で本作はいつも以上に膨大な量の作品の中で、殿堂入りを果たしました。しかも「VOCALOIDよれよれ曲」初の殿堂入りです。こんな日が来るなんて、私も含めよれよれ曲愛好家の誰も想像していなかったでしょう。

 ザ・よれよれ曲と言える怪しさと緩さの共存した曲調と、「報われたい」、「救われたい」と思いながらそれを諦めて来た人生と未来へのほんの少しの希望を描く歌詞が合わさり、何故かキャッチーさが生み出されています。
 またlittlebylittleさんは曲だけではなく、MV制作も行われているPさんで、本作もご自分で担当されています。本作がヒットした要因のひとつとして、この魅力に溢れたMVが間違いなく挙げられるでしょう。
 「VOCALOIDよれよれ曲」作品の入門曲としても、是非皆さんにオススメしたい1作となっています。

 また本作は私が今回のnoteを執筆しようと思ったきっかけです。2021年はよれよれ曲が殿堂入りするし、アンケートもよれよれ曲が終始優勢だったし、もしかして今後よれよれ曲が来る!?!?!?
 皆、「VOCALOIDよれよれ曲」を聴こう!!!

閑話休題

 さて、沢山の作品が生まれる裏には、その作品を投稿するボカロPがいるということです。その中でも「VOCALOIDよれよれ曲」をよく投稿する代表Pの方々を、曲と共に紹介して行きましょう。

故やす子(@ko_yasuko_)
 曲名:ぺろきゃん
 投稿:2020/04/16

 2019年6月より投稿を開始し、数多のよれよれ曲を今なお生み出し続けている故やす子さん。処女作も例に漏れず「VOCALOIDよれよれ曲リンク」タグが付いており、まさに現在の代表ボカロPと呼ぶべき方でしょう。
 曲としてはガレージロックを得意とし、最近ではポエトリーリーディングを主軸とした作品作りをされており、全体的に動画時間の短い作品が多くを占めています。本作はクールな雰囲気を纏うニューウェーブ楽曲であり、氏の作品の中では少々珍しいタイプの作品ですね。
 また長らく合成音声は「歌愛ユキ」を愛用しており、今年の投稿作品は「さとうささら」や「月読アイ」をメインボーカルに据えています。

②目赤くなる
 曲名:かわいい凡人
 投稿:2015/08/27

 2015年8月に投稿を開始し、その緩い雰囲気のMVとハイセンスなリリックを得意とする目赤くなるさん。イノセンス音楽をメインジャンルとしており、えも言えぬ切なさを、コミカルな映像や少し外したメロディで包み込み、何層にも折り重なる魅力が詰まった作品をコンスタントに制作されています。以前行った「投げ会(オススメ曲を沢山投げてもらい、それに対して何らかのリアクションを投げ返すという、リスナー間でのイベント)」にて紹介されたことがきっかけで氏を知りました。
 今回紹介した「かわいい凡人」は氏の初投稿曲であり、今年の1月にはVOCALOID処女作である「言葉はらはら」が公開されました。どちらも処女作/初投稿とは思えないほど引き込まれる作品ですので、曲の違いを堪能しつつ聴き比べて頂きたいと思います。

③たのしいマグロダンスP(もっとたのしいマグロダンスP)(@DnsMagro)
 曲名:たのしいマグロダンスP対CD
 投稿:2020/09/16

 2015年11月に投稿を開始し、「VOCALOIDよれよれ曲」の中でも頭ひとつ抜けた尖りと攻めが強い楽曲を制作されているたのしいマグロダンスP。正直なところ、氏の作品は万人ウケし辛いよれよれ曲作品群の中でも、とりわけウケ辛い作品だと思います。過激でセンシティブなテーマであったり、ハチャメチャに暴れまわるメロディラインであったり、ラクガキのようなイラストを採用したMVであったりと、中々に理解し難い「可笑しさ」があります。名義を「たのしいマグロダンスP」から「もっとたのしいマグロダンスP」に変更してからは、それらにさらに磨きがかかったと言えるでしょう。
 色々な意味でたまんないね!!!下記楽曲が名義変更前の作品です。

よれよれ度別よれよれ曲PU5

 ここまで「VOCALOIDよれよれ曲」について説明・紹介をしてきましたが、曲によってよれよれ具合に差があることにお気づきの方も多いのではないでしょうか?
 本項はよれよれ具合を「よれよれ度」とし、5段階に分けそれぞれ紹介していこうと思います。

よれよれ度:★☆☆☆☆
曲名:これから感じるすべてがあなたでしょう
作者:山ま善し
投稿:2012/02/21

 まずはよれよれ度1、エモーショナルな歪みギターが特徴的な本作。たどたどしくも丹念に、歌詞に込められた重たくも優しい感情を拾い上げるデフォ子の歌声が胸にずっしりと響いて来ます。筆者の人間観が端的に、分かりやすい言葉で綴られており、聴き手である私たちの心にそっと寄り添い、手を添えて励ましてくれるような優しさが詰まった歌詞には、思わず涙腺が緩んでしまいます。
 よれよれ要素としては随分と少ないんですが、先述したデフォ子のたどたどしさや若干揺れ気味のギターサウンドが挙げられるのではないでしょうか。かなりよれよれ度の低い作品かつ、素晴らしいロックバラードなので、多くの人にオススメしたい作品となっています。

よれよれ度:★★☆☆☆
曲名:ふわふわ
作者:
5ラウンドP(@5rndp)
投稿:2014/06/03

 よれよれ度2としてオススメしたいのが本作、かなり歌声とメロディラインがよれよれしてきましたね。ジャンルとしてはシューゲイザーレゲェという、あまり見かけない組み合わせの混合ジャンルとなっています。シューゲイザーは、レゲェはのイメージが強いため、相反するこの2ジャンルが喧嘩することなく、逆に魅力を引き出しているのが、少々不思議で聴いていて気持ちが良いですね。
 歌詞としては夢見心地のような大切な人との日々と、その中で感じたものについて描いており、まさにふわふわとした雰囲気を楽しめるものとなっています。曲を緩くまったり楽しみたい方向けかなと。

よれよれ度:★★★☆☆
曲名:焼渡
作者:TonTenKhan
投稿:2019/02/07

 さて、よれよれ度3とかなりよれよれして来ました。VOCALOIDよれよれ曲の中では丁度良い程度のよれよれ度ですね。本作は近年では悲しくも珍しくなってしまった神威がくぽをボーカルに据え、そして一部でトークロイドをさせるというユニークな作品となっています。
 またがくぽの艶やかな歌声が、本作の持つ怪しさとクールさとマッチしており、メロディラインのよれよれ具合や含意を掴みにくい歌詞というクセを調和しています。よれよれ度3としましたが、かなり聴きやすいラインの曲なので、「へんじんおんがく」と合わせ、よれよれ曲初心者にオススメしたい作品ですね。

よれよれ度:★★★★☆
曲名:ふなむしすし
作者:
マグロジュース(@magurojuice)
投稿:2017/12/27

 いよいよここまで来ました、よれよれ度4。かなり理解の埒外の作品となって来ましたね。何を食べて育ったら「ふなむしすし」なんてゲテモノ料理を思いつくのでしょうか、ふなむしでしょうか。ヘンテコなエフェクトや、間延びした花ちゃんの喋り声、中々レアなマグロジュースさんの歌声など、遊び心たっぷりですので、一聴の価値のある作品と言えるでしょう。
 念のため補足をすると、本作は「Psychedelic Trash vol​​.​​3」というサイケでゴミな曲をテーマとしたコンピレーションアルバム収録曲なので、意図的にこのような作風になっています。普段の作風が気になる方は是非聴いてみてください。柔らかくもどこか寂しい素敵な作品が多いので、どうぞお願いします。

よれよれ度:★★★★★
曲名:「あれ?あなたってフィクションなの?」
作者:
とろぉりぃ(@tororiUu)
投稿:2020/08/24

 ラストはよれよれ度MAXの5、メロディラインや歌詞が最高にしっちゃかめっちゃかですね。歌詞のワードや曲の音をきっかけとし、様々な変化を起こして進行するMVもかなり奇抜で、それでいて比較的しっかりとしたジャジーなサウンドに乗っかり、どれも最高に魅力的なものとして映えキャッチ―に感じるのが不思議です。初見の際の感想は「高熱を出した時に見る夢」でした。フィクションだからね、仕方ないね
 もしかしたら先ほど紹介した「ふなむしすし」よりもよれよれ度が低いと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?私も直前まで悩んでいたのですが、本作は総合的に見てキャッチーながらも、構成要素それぞれのよれよれ具合が最高に高く、また「ふなむしすし」の方がメロディックな部分が多いと判断したため、このランク分けとなっています。

2021年オススメよれよれ曲PU5

 いよいよ2021年のお話です、長らくお待たせしました。
 先述した「へんじんおんがく」以外に、今年も沢山の素晴らしい作品が生まれました。その内のほんの一部ですが、私が全曲聴いた中オススメしたいと思った曲を、投稿日順に5曲ピックアップして紹介させて頂きます。
 また今回紹介する曲は最高でもよれよれ度3程度なので、その辺りもご注意ください。

①七日後の世界
 作者:
濡羽色(@magomagodq)
 投稿:2021/01/23

 幼さを感じさせながらも、しゃがれたようなノイジーな歌声に調教された初音ミクと、カートゥーンが用いられたブラウン管テレビのようなMV。そして鈍く光る鉛のような渋さを感じさせるロックサウンドが堪らない本作。旧約聖書で「世界は神によって7日で創造された」とされており、そんな神や世界に対して吐く恨み節自身への失望が綴られた歌詞は、一言一言を丁寧に心へ突き刺すような鋭さを持っています。
 近年のボカロアングラ曲界隈では、かなり存在感のある濡羽色さんですが、実はあまり「VOCALOIDよれよれ曲」を製作されない方です。メイン制作されるものがオルタナティブロックであり、よれよれ曲関連タグが多数付くため、その中でよれよれ曲も作られるといった形ですね。

②シューゲイザートワイライト
 作者:
Illmanium(@illmanium)
 投稿:2021/02/19

 いやシューゲイザーじゃないじゃん!!!
 ……失礼、取り乱しました。Illmaniumさんの処女作であり、色々な音で溢れ返る曲可愛らしいアニメーション細部まで拘られた歌詞テロップが楽しいMVによって、かなりポップでキャッチ―なよれよれ曲となっています。本作のよれよれ要素として目立つのはそのメロディラインで、先述したキャッチ―さやポップさを感じさせる作りながらも、奇抜な節回しや所々音が外れる部分が、よれよれ曲としてとても良いフックとなり聴き手の没入感を深める役割を果たしていると考えられます。
 また洋曲のように各サビで変化のない歌詞ですが、曲が進むごとにそこに詰められた感情が変化しているように感じられ、より一層本作の世界観を深めることへの貢献をしています。

③ONGAKU
 作者:
Saku(@sakuogt)
 投稿:2021/08/28

 私達リスナーはその性質上、数多のそして様々な音楽に触れる機会があると思います。そしてその全てを覚えていることはとても難しく、時には大切だった筈の宝物のように思っていた作品でさえ忘れてしまうことも。けれども、それら全ては私達のとなり、今を構成する大切な要素となっているものです。そんな音楽/人生観を飄々と、軽やかに歌い紡いだものが本作となっています。
 「NEUTRINO」ライブラリとして5番目にリリースされ、「キャラ感薄目・その辺にいそうな感じ」というコンセプトで制作された「めろう」をボーカルに起用しており、その癖のない柔らかで伸びのある歌声が、本作のテーマに聴き手を自己投影しやすい作りとなっています。リスナーの皆さんにこそ聴いて頂きたい作品となっています。

④ガベージ・コレクション
 作者:TrES-2b
 投稿:2021/09/19

 牧歌的で素朴な雰囲気の中で、「ガベージコレクション」というプログラミング分野の単語がテーマとなっている本作。「VOCALOIDと歌ってみた」作品でもあり、TrES-2bさんと初音ミクの歌声をわざと歪ませることで程良いよれよれ感が演出されています。メインボーカルがTrES-2bさんというのも個人的にポイントが高いですね。2人の歌声が時に重なり、時に大きくズレたり、実際に隣り合って歌っているかのような演出がなされています。
 「ガベージコレクション」とはメモリの不要になった領域を自動的に解放する機能であり、直訳すると「ゴミ拾い」となります。本作は直訳の「ゴミ拾い」を起用していますね。ゴミ山の上で過ごした少年時代、そこで笑う「」を眺める「」。そんな幻影が木洩れ日に反射するような曲です。

⑤□□□??(゜Q。)??
 作者:
Nerd Joe(@_NerdJoe_)
 投稿:2021/09/27

 正式な読み方の分からないタイトルや、言葉として聴き取れそうで聴き取れない歌詞、かなり古い型のデスクトップPCに映る奇妙なアニメーション、歯を剥き出して左右に揺れる初音ミク。様々なものが謎に包まれつつも、その不思議な世界に抗うことのできないことが本作の魅力です。所々日本語に聴こえるような単語も、果たして本当に意味のある言葉なのか、そもそもこの曲に込められた意味は何なのか、意味はないのか。そんな思巡をする時点でこの作品の深みに嵌められたような、そんな気分にさせてくれます。
 歌詞のようなものはあるものの、本作には「VOCALOIDインスト曲」タグが付いており、インスト曲としてただ音の心地良さ/心地悪さに耳を傾け、身体を揺らすのも、この曲を楽しむ正しい聴き方なのでしょうね。

さいごに

 ここまで「VOCALOIDよれよれ曲」について解説・曲紹介を行ってきましたが、皆さん如何でしたでしょうか?
ハイカロリーな作品の数々に疲弊してしまっているでしょうか、それとも知らない世界に触れて驚いているでしょうか。

 先述した通り、「VOCALOIDよれよれ曲」やその関連ジャンルは、聴き手を選ぶが故に、中々VOCALOIDのメインシーンになり難い曲が多いことは否めません。実際に私もよれよれ度の高すぎる曲はあまり好みではありませんし、普段聴きする曲の好みとズレているものも多く存在します。
 それでも私が「VOCALOIDよれよれ曲」を愛しているのは、ひとえに「楽しい」からです。

 色々な曲を聴き込んでいるリスナーの皆さんは、身を持って感じているとは思いますが、新しい曲を聴いても自分の好みの曲がある程度固まっているが故に、その範疇を出た曲を好きになり辛いですよね。実際私も、「可愛い」を前面に押し出された曲は苦手ですし、時には新曲チェック中や人から曲をオススメされた際に食わず嫌いをしてしまうこともあります。
 しかし「VOCALOIDよれよれ曲」を聴くと、音楽の持つ懐の深さ/自由さや、知らない/理解できないものに触れることの楽しさというものを思い出させてくれるのです。私たちは常に新しいものを取り込み、新陳代謝を行いながら生きています。そうして、年を重ねて沢山の経験を積んで、その最期に「」というものが完成します。
 まだまだ私達は未完成。そんな私達の最期のためにも、新しく取り込む刺激として、「VOCALOIDよれよれ曲」は如何ですか?

 ここまでお付き合いくださりありがとうございました、気付いたら1万字近くという予定以上にボリューミーな記事になってしまいました。
 本記事にて紹介した曲を纏めたマイリストを公開していますので、是非こちらから振り返ってみて下さい。

 また明日の担当は海鮮焼きそば(@tabun_menrui)さん。どんな記事が投稿されるのかを楽しみに待っていますね。

 それでは皆さん、またどこかで。


良きVOCALOIDライフを!!!


昨年度ボカロリスナーアドベントカレンダー参加記事

「ふたりの」限界オタクのアルバム解説記事


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