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We are the Champions~2019ポステコマリノスの旅路〜

(ボツにしていたものを今更ながら再アップ。)

15年ぶりの王座奪還を果たした2019シーズン、皆様おめでとうございました。
何より選手・スタッフの皆様には本当にありがとうと伝えたい。

試行錯誤を繰り返した末に終盤戦を圧倒的クライマックス感で一気に駆け抜け、最高の最終戦を制し、優勝を果たしたシーズンを振り返ります。

⒈ 2019マリノス、襲来・破れないブロック・せめてマリノスらしく

シーズンを1/3に分割していくとものすごーく振り返りやすくなっていることに気付いたので、その方針で参ります。とりあえずシーズン最初の1/3はこちら

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2019マリノスの初戦はガンバ大阪との試合でした。
開始2分で親の顔より見た失点パターンで失点しましたが、その1分後に振り出しに戻すジェットコースター展開は今年も健在、いや健在でなくて良いのですが。

昨年と今年の違いは昨年からの継続によるゲームモデルの理解の深化、それに伴うミスの減少(開幕で早速出てはいましたが、、)、そしてトランジションの意識の高さです。

基本的にマリノスのゲームモデルは下記であるのかなと思います。
・攻撃-ビルドアップ
GKを含めた形で基本的にボールを蹴りださず、繋ぎ倒す意識。自分たちが最初に居る位置を捨て、スペースを作りだす。空いたスペースに次々と顔を出し、両WGに付けることを目的とする。
我が軍でキーとなったのがGKのパギさんであったり、CBの畠中槙之輔または昨年度から導入され、大きな特徴である偽SBの二人(ティーラトン、松原健or広瀬陸人)である。
偽SBについては中に入り込む動きでボールを受け、そこから展開することがメインロールで、予防的カバーリングとしての偽SBの意識は高くない(=低い)
中に入り込んだSB、SBと位置を入れ替えたボランチ、さらには大外のWGに付けることで前線へ侵攻して行く。

・攻撃-敵陣でのアタック
2019マリノスで一番重要だったのが裏のスペースを取りに行く動き、とりわけエンドライン際のゴールエリアとペナルティエリアの間の場所をいかにして取りに行くかが至上命題であった。このスペースへWGを走らせ、マイナスクロス、もしくは平行クロスで得点を上げるパターンがメインのパターンになる。

・ネガティブトランジション
マリノスの生命線と言っても差し支えない。失った瞬間に相手にプレッシャーをかけ、即時奪回を目指すのが基本線。前線へかける人数が多いので局所的に相手を数で上回ることもあり、機能した試合では圧巻の強さを見せる。反面プレスがかからない時もあり、その場合は浅いライン裏を突かれるのがお約束。

守備-敵陣でのプレッシング
相手が保持した時のプレッシャー開始位置はGKからCBに渡った段階から始まる。モダンサッカーの教科書から言葉を借りれば超攻撃的プレッシングを敢行する。DFラインを高く設定し、敵陣で奪い切ることを目的とするが、プレスの掛け方は成熟しているとは言い難く、こちらもハマる時とハマらない時とがある。

守備-自陣でのセット
プレッシングを交わされ、自陣で構える場合、基本的には4-4-2で構える。特徴的なのはボールサイドへの圧縮。ボールサイドで奪い切りたい意図が強く伺える。
一方でプレッシャーの緩さからウィークサイドへ展開されることも多く、展開された後はSBがデュエルで勝利することを祈るしかない。
またラインの高さは自陣に入っても維持されており、逆サイドへのロブで裏のスペースを狙われることが多くなっている。

ポジティブトランジション
2019マリノス最大の武器ことポジトラ。奪った瞬間の前への速さはリーグ随一。
中央3レーンを使い、主にFW3枚+マルコスが一気にゴール前へ雪崩れ込み、最終的にゴールを仕留める。H磐田戦、同じくH神戸戦のゴールが象徴的。
本当にとにかく速い。日本一の速攻である。

とまあ多分こんな感じでしたでしょう。
2節でもワクワクするようなアタッキングフットボールで仙台を下すと、3節川崎戦はビルドアップの拙さを狙われるも、前年チャンピオン相手に土壇場での同点ゴールで追いつく意地を見せてくれました。

今年こそは行けるぞ行けるんじゃないかというところに冷や水をぶっかけられたのが4節大分戦。今年1番の完敗。コテンパンにやられたという形容がふさわしい試合。この試合がまた今年のベストゲームにつながって来るのだが、それはまた別のお話。

8節札幌戦は個人的に今年一番忘れたい試合、札幌まで飛んだような、でも札幌で試合を見た記憶は無いような。11節の天敵セレッソ大阪に完敗を喫したところでシーズンの3分の1が終わりました。


⒉ マルコス、王の座・ヨーロピアンチャレンジャー・荒れた芝生の中で・スタイルの選択を

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迎えたシーズン中盤、今シーズンの命運を左右したと言って過言ではない重要な決断、それはLWG・CFと前線で起用し続けて来たマルコスをトップ下に据えること。

これが大ハマりし、12節、13節と大勝を重ね、順位を一気に上げていきます。
2位で迎えた首位FC東京との大一番は先制するも逆転負けを喫し(懐かしい姿)、首位浮上を果たすことはできなかったが、4節で完敗を喫した大分に完璧な形(!)でリベンジを果たし、チームの成熟を感じるようになりました。

7月28日にはCFG総本山のマンチェスターシティとのエキシビジョンゲームが開催。エキシビジョンとはいえ我が軍は本気で勝ちに行くわけで、最終的に1−3と敗れるものの、マリノスらしさを存分に出しつつ、シティへ印象を残すことができたのではなかろうかと思います。なにせペップはスタメンを後半半ばまでスタメンを引っ張ったのだから。
余談ではあるが、ケヴィン・デ・ブライネは別格の動きだった。とにかくボールスピードが速い。世界のトップオブトップを改めて眼前で観れたのは至福の時間だった。

シティとの試合で幾ばくかの自信を付け、さあここからということで悩まされたのが日産スタジアムのピッチ。言及するのが憚られるところもあるが、非常に厳しいピッチ状況で、マリノスの志向するフットボールの妨げとなってしまっていたことは否定できなかった。H清水(被ダブル… )、A鹿島、Hセレッソ(被ダブル… )と3連敗を喫し、暗雲が漂い始めたような夏の終わり頃。

⒊ 奇跡の価値は、THE DAY〜決戦、日産スタジアム〜

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真夏の3連敗により順位は2位から5位まで降下、勝ち点差は9と広がってしまった。シーズンはまだ3分の1あるとはいえ、中々厳しい状況でした。特にホームでの連敗は中々しんどかった。

ところが、である。まさかまさかは起きるものでした。なんとなんと23節を最後にシーズンラストまで負けなしの10勝1分で駆け抜けてしまったのです。
勝ち点9差の首位を追っていたのがシーズン最終戦の2位FC東京との天王山を制し、最終的には勝ち点6差を付けての戴冠。
改めて文字にするとすごいことを成し遂げたなと思います。

その原動力となったのが夏の新戦力として加わったエリキとマテウスの2人。
前者は夏に再び負傷離脱したエジガルジュニオの不在を補って余りある活躍、
マテウスは縦への力強い突破、そしてプレースキックで優勝への原動力となってくれました。

書き記しておくべきは何と言ってもシーズン最終戦、FC東京との優勝決定戦 ”THE DAY" で間違いないでしょうね。32節で松本山雅へ勝利して首位浮上、33節では川崎に完勝(!)、迎える最終戦は2位FC東京と戦うというあまりに出来すぎた展開。日程くんの恐ろしさ(?)を味わいました。冗談抜きですごすぎる。

当日はスタジアムで観戦してました。雰囲気は試合が始まるずっと前から最高潮で負ける気がしなかったです。試合が始まってからもどこか高揚感がありました。スタジアム中が熱狂の渦と化していたような思い出があります。
ブンちゃんのミドルシュートが吸い込まれていく様は芸術的で、エリキの2点目でほぼ勝利を確信。渓太の3点目はとにかく最高でした。
勝ち点9差をひっくり返し、ホームで優勝決定戦を制して15年ぶりの優勝を果たした上で引退する勇蔵を最高の形で送り出す。これ以上のシナリオはどんなライターでも書けないでしょう。

4.雑感、”15年ぶりの優勝”

マリノスを好きになったきっかけというのは2003年のリーグ優勝でした。久保竜彦が”あの”ヘディングシュートを決めて優勝をもたらし、翌年浦和とのチャンピオンシップをPK戦の末制して連覇を果たして以来15年ぶりのリーグ優勝です。
当時小学生だった私は社会人になってしまっていて、15年という月日の長さを十分に感じさせてくれます。あのときは「どこかJリーグで好きなチームを挙げるとしたら?」でマリノスを答えるぐらいの好きでしたが、15年後、リーグ優勝をサポーターとして目の前で見届けることができました。この喜びはどのように表現したものだろうかと悩みますが、とにかく誇らしい気持ちでいっぱいです。

”MVP”は?
得点王に輝いたマルコス・ジュニオール、得点王、そしてリーグMVPを受賞した仲川輝人、今や代名詞となったハイラインを支えるパクイルギュ、チアゴマルティンス、チームの魂として最後まで走り抜いた喜田拓也。挙げればキリがないほど優勝の立役者がいます。
その中でMVPを挙げるとすれば個人的にはアンジェポステコグルーとコーチングスタッフ、そして彼らを信じたフロントスタッフを挙げたいと思います。(Most Valuable Person, 該当者多数というのは置いておいて)
残留争いに巻き込まれた昨シーズンから一転しての栄冠は彼らなしではあり得なかった、哲学を信じ抜き素晴らしい結果をもたらしてくれました。また夏の3連敗以後の反転攻勢はフロントが行ったエリキ、マテウスの獲得抜きでは成し得なかったでしょう。特にエリキの獲得についてはエジガル負傷により前線の枚数が手薄となった中でCFGのスカウティングネットワークも活かした大ヒットでした。お見事。

MIP(文字通り)
MIPにはティーラトンブンマタンを推したいと思います。開幕前の山中移籍の喪失感は何処へやら。シーズンが進むにつれてブンちゃんがフィットしてくれたことは本当に大きかったです。終盤は不動のスタメンを掴み、優勝へ大きく貢献してくれました。最終節は先制点も決めてくれましたからね。
今でもなぜか鮮明に覚えているのがアウェイ札幌戦の夜に締めパフェを食べに行ったパフェ屋さんの思い出。同じく締めパフェを食べに来ていたであろうマリサポカップルの彼氏さん側になぜかdisられていたブンちゃん。(その日試合に出ていなかったのに) それを独り聞いていた私は何もそこまで言わなくてよくない???とちょっと、いやかなりイラっとしたので、今ではあの時のことを思い出しては溜飲が下がる思いです。

ベストゲーム
これはもう1択になりますが、第18節のホーム大分戦です。アウェイでコテンパンにやられた借りを返したという文脈もまた素敵ですが、何よりも試合内容が良かった!相手を自陣側に釘付け、マリノス側から見れば敵陣で常にフットボールを展開する理想のゲームでした。あの日はボールを奪った時、奪われた時のトランジションの両局面で相手を圧倒できていて、これがまさにこの試合展開へ繋がったのだと思います。何より気合いが違うように見えました。得点こそ1点止まりではありましたが、試合を掌握し続けた王者のフットボールを見ることができました。
この試合をベストに推す理由はもう1つあって、それは欧州旅行中に現地でみた17-18シーズンのプレミアリーグのマンチェスターシティvsチェルシーでまさにシティが展開したフットボール、その領域に近づけたのではと思えたというのもあります。チェルシーをホームに迎えたシティは試合全般に渡ってチェルシー相手にハーフコートゲームを展開、こちらも得点こそ1点止まりでしたが、完璧なフットボールを見せつけられたのを鮮明に覚えています。常に正しいポジショニングを取り続けボールと空間を支配、ボールを失えば強度の高いトランジションプレスで即時奪回を果たす。常に主導権を掴んで離さない当時感銘を受けたフットボールを今度は贔屓チームが行うところを見られるなんて。とにかく最高のゲームでした。こんなゲームが見られる機会が来季は増えるといいなと思います。

終わりに
15年ぶりの優勝を果たし幕を閉じた2019シーズン。文中ではまさかまさかと記述しましたが、実際のところ終盤戦は負ける気がしなかったです。根拠は、と問われると非常に難しいですが、それはチームの戦いぶりを見てて抱く(勝手な)自信なのでしょうか。とにかく負ける気がしなかったですし、それは実際にピッチで戦う選手たちも同じく思いを抱いていたのではないかと思います。
あの夢をもう一度、と言われても難しい”進撃のトリコロール”だったかと思いますが、その熱は凄まじく、何度でもあの熱狂に身を委ねることができたらとも思います。最高の優勝でした。心の底からありがとう!そしておめでとう!

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