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『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』はジャンプ作品で育った大人を確実に仕留める凄腕のエンターテインメントだった。【ネタバレ感想】

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』を初日の今日観てきた。
ムビチケは買ってあって楽しみにしていたものの、祖母の介護もあって諦めかけていたのだが、母が快く送り出してくれて運良く無事に観て帰ることができました。母に感謝。

まず最初に断言しておくと、この映画は子供向けではない
客層はファミリーが多く、劇場内は子供だらけで「これは集中して鑑賞できるのか?」と危惧していたものだが、結果それは杞憂に終わった(少なくとも私が観た劇場の回では)。
スパイファミリーといえば宣伝戦略としてはそのキャッチーさでとにかくアーニャプッシュであり、映画の予告編を観ても「きっとアーニャまみれなんだろうなあ。まあ仕方ないよなあ」と身構えて臨んだのだが、結果そちらも杞憂に終わった。

物語はのっけからヨルさんによるロイドの不倫疑惑からスタートする。
もうその時点で子供向け作品ではなくなった。
子供「ねえパパ、『ふりん』ってなーにー?」
パパ「し、しーっ!静かにしなさい。まったくなにをこの子はハハハ」
ママ(ジト目)
的な空気が劇場内に蔓延する(多大なる誇張)。
ヨルさんも母としてではなく、妻、引いては女性の顔を見せてくれ、ヨルさん目当てにこの作品を追い続けている私としては嬉しい限りだった。

映画スパイファミリーは子供向けでもなければ、アーニャ一辺倒でもない。


私はね、とにかくヨルさんというキャラが好きなんですよ。
……酒乱のところだけはちょっとアレだが。
見た目も性格も強いところもファッションセンスも声も、全てがクリティカルヒットなのである。
ちょいちょい彼女は「私にはそういう恰好は……」的な拒否をしますけど、いやいやあなたの私服そもそも結構エr……アレですよね!?
まあそれはともかく、タイプF役の「武内くん」こと武内駿輔さんとヨル役の早見沙織さんがいっしょに収録できてそれを共に喜んだとパンフレットにありましたが(帰りにまんまと買いました)、『アイドルマスターシンデレラガールズ』ファンの私としてはTVアニメ版プロデューサー役でデビューした武内くんと3rdLIVEの『シンデレラの舞踏会』に高垣楓役としてサプライズ出演した時の早見沙織さんとのMCを思い出しちゃったり。
あと「さすがはロイドさんです」は、『魔法科高校の劣等生』の司波深雪の「さすがはお兄様です」のオマージュだったりします?さすがにそれはない?

劇場版オリジナル要素で一番のインパクトがあったのはやはりうんこの神でしょう。
「うんこの神」ですよ「うんこの神」。
伏せ字もピー音もありません。
エンドクレジットにもしっかり「うんこの神 千葉繁」とあります。
千葉繁さんの好演によって、全く下品にならず笑いと微笑ましさに昇華されてしまっているのがすごい。
これがレジェンド声優の実力か。
演出自体も放屁のSEが下品だった以外はファンシーかつシュールで、子供がバカ受けするようなものになっていなかったので劇場内は快適なままでした。
むしろこれは『Dr.スランプ アラレちゃん』や『燃える!お兄さん』さんなんかの週刊少年ジャンプ漫画で育った層にこそ直撃だったのでは。
スパイファミリーという作品の世界観からかけ離れたコメディパートでしたが、ここはこの作品もれっきとしたジャンプ漫画であることアピールプラス、お歴々に対するオマージュかつリスペクトだったのかもしれませんね。

観たいものが全部観られたなんとも贅沢な映画だったなあ、と。
スパイファミリーという作品のありとあらゆる要素を散りばめて作り上げた一級のエンターテインメントでした。
ロイドはとにかく有能で、かっこよくて、気が利くイケメン。
ヨルさんは美しくてチャーミングで強くて努力家。
アーニャは自由奔放でありつつも家族が家族であることを最優先に考えている。
アーニャだけが何もかもを知っていて、フォージャー夫妻はお互いの裏の顔を知らないという設定と物語の肝が実に利いている。
キャラクターの関係性構築のバランス感覚が巧み過ぎる。

ちょっとあまりにも絶賛し過ぎている気がするので、問題点も挙げておきましょうか。
まず敵の設定の弱さですね。
「弱さ」と言っても実力の話ではなく、穴がある的な。
まずタイプF
存在があまりにも唐突過ぎる。
一応大佐が匂わせてはいましたが、ポッと出てきて説明不足のまま何も補完されないまま退場。
最大戦力であるヨルさんに当てるには、と頭を悩ませてああいう相手になったんでしょうけど、ひたすらもったいない。
決着方法も含めて終始ヨルさんの引き立て役でしかなかった。
次にスナイデル大佐
マドラー風の杖突いて歩いてましたけど、ロイドとの戦闘時なんかバリバリに動いてましたよね?
特に足が悪いエピソードとかもなかったですけど、その設定要りました???
あとロイドの正体の見破られ方のお粗末さ
香水の匂いでバレるって。
ロイドは戒めとしてリュック・ベッソン監督の『レオン』を100回は観るべき。
殺し屋であるレオンは日々体臭を消すことを心がけていましたよ?
そこは殺し屋もスパイも同じでしょうに。

まとめ。
最後にツッコミこそ入れましたけど、非常に完成度の高い娯楽映画でした。
これはまたぞろハリウッドさんが実写映画化したがるだろうなあ、なんて。
彼らの大好きな家族愛要素も入ってますしね。
それはともかく、あの『プラネテス』『コードギアス』『機動戦士ガンダム 水星の魔女』などで名高い大河内一楼脚本によるジェットコースター展開息を呑むアクションとパンチの効いたコメディが乗り、極上のエンターテインメント作品として仕上がっている。
キャラのバックボーン紹介のくどくならなさ加減とか、「さすが!」と唸らされましたね。センスだなあ。
観ていてとにかくストレスがない。
よく「2時間あっという間!」などと聞きますが、この映画こそまさにそれの見本でしょう。
ここに世界に誇れるジャパニメーションムービーの傑作がまた1本誕生しました。
さあみなさん、どうかなにも心配せず思う存分非現実を楽しんでください。
鑑賞後にはきっと心地良い満足感に包まれることでしょう。
これは素直にBlu-rayが出たら欲しいですね。

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