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『魔法使いの夜』クリア後雑感。【ネタバレあり】

『Fate/Grand Order』(以下『FGO』)にて自社作品である『魔法使いの夜』とのコラボレーションイベントの開催が発表された。
4月26日(金)19時より公式放送「カルデア放送局SP『魔法使いの夜』コラボレーションイベント開幕記念放送」の配信も決定しており、通例に倣うと「このあとすぐ!」からイベントが開始されそうだ。
発表時点で私は『魔法使いの夜』をプレイしていなかった。
ならばしておかなければなるまい。
『Fate/Samurai Remnant』の時のように。
あの時も結果としてプレイし終わって徒労感がすさまじかったのだが、「やらずにする後悔よりもやってからの後悔」が信条のこの私、即断即決でインターネット通販でポイントを上手に遣ってなるべく安価にて購入。
レッツ・プレイ!

『魔法使いの夜』は『月姫』『Fate/stay night』『空の境界』といったTYPE-MOON世界の原点となる作品だ。
ちなみに私は友人のススメでまんだらけにて『月姫』『月姫PLUS-DISC』『歌月十夜』をセット購入して以来のTYPE-MOONユーザーだ。
『月箱』リリース以前なのでバラ購入である。
実は『魔法使いの夜』自体もPC版で一度は購入していたのだが、諸般の事情があってクリアまでには至らずにそのままで、今回は買い直しということになる。

ゲームシステムは「ノベルゲーム」と呼ばれるジャンルで、いわゆるアドベンチャーゲームよりもさらに読むことに特化した形式だ。
この『魔法使いの夜』もクリア後の番外編の『誰も寝たりしてはいいけど笑ってはならぬ』以外には選択肢は存在しない。
クリアに要する時間は個人差はあれど20時間弱ほどで、ボリュームとしては昨今の作品に比べるとライトに感じるだろう。

私もその程度の事前知識はあったので気軽にプレイを開始したはいいが、物語が大きく動き始めた途端に誤算があった。
演出過剰なのだ。
私はNintendo Switch版を購入したのだが、大画面で派手な明滅や頻繁なカットインや切り替わりがあり、ただテキストを読み進めるだけなのに非常に疲れる。
古来よりテキストアドベンチャーゲームは一部のゲーマーから「紙芝居」などと揶揄され続けてきたが、意地でもそうしたくなかったのだろう。
とにかく視覚的に煩雑で乱雑で情報量が多過ぎて集中を阻害する。
「テキストに力があるのだからたまにイベントスチルを出すぐらいでいいのでは」と私などは考えるのだが、商業作品であることを意識し過ぎた結果なのか、なんともせわしなくてせせこましい。
演出を抑えれば大幅にコストカットできたはずだが、そこは私のようなゲーム制作の素人の考えの及ぶところではない。

誤算は他にもあった。
というか、こちらこそ最大の誤算だった。
男性側主人公があまりにも肌に合わないのだ。
いっそ「生理的に受け付けなかった」と言ってしまってもいいレベルで好みではなかった。
そう、何から何まで。
言動もそうなのだが、ボケ顔がとにかく不快だった。
ノベルゲームの仕様上、テキストを読もうとすると全画面を視野に入れる必要がある。
アドベンチャーゲームなら画面下部のテキストボックスのみを見ていればいいのだが、ノベルゲームはそうはいかない。
男性側の主人公である静希草十郎はことあるごとにその天然さ故に素でボケてボケてボケ倒すのだが、その度にいちいちデカデカと「・△・」顔を晒す。
それを序盤の段階からもう二度と見たくなくなっていたのだが、物語をしっかり堪能するには避けては通れぬ道。
完全クリアするまでの間、とんでもないフラストレーションを抱えてプレイする羽目になった。

だが、私が静希草十郎を好まない最大の理由はそこではない。
それだけではあまりに表面的に過ぎない。
彼は男性側の「主人公」とは言いつつも、実質この作品の看板は蒼崎青子久遠寺有珠のWヒロインであるのは誰の目にも明らかだ。
まず彼女たちふたりがあり、凄腕の魔術師である彼女たちに受け入れられ、最終的には好意を示されるまでになれる男性側主人公として生み出されたのが静希草十郎というキャラ。
『月姫』の遠野志貴や『Fate/stay night』の衛宮士郎のように物語の進行役を担えるキーパーソンではなく、その成り立ちからして受け身の後付け感が最後まで鼻に付いて仕方がなかった。
激情型の青子や皮肉屋の有珠の毒気を抜き、心の隙間にスルッと入り込むにはどんなキャラである必要があるか。
特殊な環境の田舎育ちで世俗にとことん疎く、染まり切らない。
魔術師には基本戦闘力では遠く及ばないが、結果として切り札となるジョーカー。
取って付けたような主人公補正がとにかく肌に合わなかった。
最初から最後まで静希草十郎と接するのが苦痛で仕方なかった。
2012年の作品であるのに、現代の異世界転生(もしくは転移)物の主人公のように感じた。
そういった意味では「走り」だったのかもしれないが。

ここまで男性側主人公である静希草十郎についての拒絶の理由の数々を列挙してきたが、その実この作品の大多数のキャラを愛せなかった。
いや、もうこの際白状してしまおう。

久遠寺有珠以外愛せなかった。


その代わりと言ってしまってはなんだが、久遠寺有珠に出逢えたというその一点だけでもこの『魔法使いの夜』をコンプリートまでプレイした甲斐が、価値があったと断言しても過言ではない。
それほど彼女はどストライクでツボだった。

「奈須きのこ作品らしい」と言えばそれまでだが、端役に至るまで無味無臭のキャラなど存在せず、どいつもこいつも癖が強くアクが強い
一介の高校生のくせにやたらと老成していて、「こいつら30歳はサバを読んでいるのでは」と疑ったほどだ。
対して力を有した超越者たちの精神的な幼さたるやどうだ。
なんとまあ対照的か。
特にこの作品の魔術師、とりわけ魔法使いを目指すような連中は行動原理がシンプルで、常識や良識など知ったことではない。
FGOのボス格の敵でもありがちな話だが、「そう思ってしまったのだから仕方がない」などという幼児の我が儘を意固地に貫き通す奴らで溢れ返っている。
ラスボス格である蒼崎燈子ですら祖父と妹に対する反感だけで動き、それ以外に対する迷惑などは一切考慮しない迷惑人間。
私は彼女に人気があるとの事実が未だに信じられない。
どこを好きになればいいのだろう。
とても「愛すべきダメ人間」ですらないと思うのだが。

メイ・リデル・アーシェロットも何だったのだろうか。
番外編にのみ登場し、コメディ要員に終止して退場。
本編でアイドルとしてちょいちょいメディアなどに登場していればまだ「ああ!あの!」なんてカタルシスも得られたのかも知れないが、なにしろTVはあれど有効活用されていなかった。
あの番外編を皮切りに様々な場面で作品の垣根を越えてのトリックスターとして活躍させるつもりがあったのかどうかは定かではないが、現在においても残念ながらそれは見られてはいない。

その番外編の『誰も寝たりしてはいいけど笑ってはならぬ』だが、誰しもがピンとくる『笑ってはいけないシリーズ』のパロディシナリオで、古参のTYPE-MOONファンなら懐かしの『歌月十夜』に収録されていた『遠野家のコン・ゲーム』の記憶がフラッシュバックしたのでは。
番外編にしてはボリュームがあったのだが、「犯人にすら自分が犯人である自覚がない」と聞いた時点で「じゃあ今回のストーリーテラーである久万梨金鹿なんじゃね?」なんて斜に構えていたら本当にその通りで真顔になってしまった。
うん。
本当に本当に心底おまけの番外編でよかった!
それにしても「書庫」の「archive」、これら全部本編シナリオに難なく入れ込めた内容だと思うのだが、何故独立させたのか甚だ謎だ。

『魔法使いの夜』、オールクリアしてみての感想は、「なるほどTYPE-MOONの原点」だった。
受け手の好みなど考慮せず、奈須きのこの「自分はこれが面白いと思うから好みが合う人はどうぞ楽しんでね!」とのスタンスで、すっかりお馴染みとなった日本の片田舎で世界の命運を賭けたチキチキ魔法大戦が人知れずしれっと行なわれている。
ああ、いつものコレだ。
実家のような安心感!
ただし今回ばかりは何度も言うが徹頭徹尾、肌に合わなかった。
でも。
だが。
しかし。
これももう一度言うが、久遠寺有珠に出逢えた歓びがそれら全てに勝り、凌駕した。
ありがとう『魔法使いの夜』!
ありがとう久遠寺有珠に出逢わせてくれて!

さて、FGOとのコラボイベントが始まるまでの間、独りで色んな予想をして楽しむとしよう。
事前放送に蒼崎青子役と静希草十郎役の声優が来るなら、この2人のサーヴァント実装は濃厚か。
青子は納得だが、後者は???
★1自爆攻撃単体宝具とかならネタキャラとしてアリだとは思うが。
★4の格なんかじゃとてもないでしょ。
『Fate/Samurai Remnant』の宮本伊織ならまだしも。
青子は★5のアーチャーかな?バーサーカーかな?キャスターではなさそう。
果心居士がイベントボーナス対象いるから蒼崎燈子はここでは来ないのでは。
事前放送に花澤香菜さんがいないから有珠の登場も難しそうか。
そうならなんとも残念だ。
由井正雪ようなサポート型キャスターでもいいし、アヴィケブロンみたいなゴーレムマスターとして戦ってくれてもいい。
石の貯蔵は全然だが、宝具レベル5にする覚悟はとっくにできているというのに!
とまあ、そんなこんなで26日のその時を待ちましょうかね。
「予想している時が一番楽しい」とか、それはそれ。
クリアしたからこそのお楽しみ。
やっぱりイベントを100%楽しむならクリアしておかないと。
やるべきことはやった。
さあ、あの夜の続きを私に見せてくれ。

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