見出し画像

北条加蓮という起爆剤。

*現在『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』(以下『デレステ』)にて開催中のイベント、LIVE Groove Vocal burst『D-ark L-ily's Grin』の多少のネタバレを含みます。ご留意ください。

ライブ『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS Shout out Live!!!』にて速水奏北条加蓮によるデュオユニット『モノクロームリリィ』のユニット曲がサプライズ披露され、その後デレステでのイベント開催が発表された。
そこで私はこう予想した。
「奏と加蓮のイベントコミュか……またギスギス系かバチバチ系か」と。
デレステのイベントコミュのライターはシリアス系のイベントのシナリオではとにかくアイドルを悩ませる
まるで「悩まないと人間は成長しない」とでも言いたげに、「この期に及んで今さらそんなこと悩ませる!?」とツッコまざるをえない悩ませ方をさせ、本音を引き出すためにアイドル同士を衝突させる
その方向以外に日々の中での気付きや学びはないのだろうか。
「アイドルの自主性を重んじる」などと大層なことを言って放任し、毎回空中分解寸前まで持って行きながら最後は結果オーライで締めるプロデューサーの無責任さも目立つ。
今回もそんな感じになるものだとばかり思い込んでいた。

が、蓋を開けてみれば私の完全な杞憂だった。
奏と加蓮の2人は三船美優と相葉夕美のナイスフォローもあり、大事になる一歩手前で最悪の事態を軽やかに躱していくではないか。
さらには望外の収穫として、あの速水奏が上昇志向に目覚めたのだ。
速水奏というキャラクターはことあるごとに「大人っぽい」と評されるが、裏を返せば達観しており、なんならあの年齢で老成してしまっている。
常に周囲から一歩退き、自分の悩み事も強引に踏み込んで来られでもしない限り自力で解決しようとするか、自分の中での妥協点を見付けてしまう。
その速水奏を。
この「偉業」は北条加蓮にしかできなかったのではないか、と私は考えている。
奏がリーダーポジションであるLiPPSのメンバーや、モノクロームリリィと同じくデュオユニットの相方である高垣楓新田美波では不可能だった。
速水奏というアイドルはすぐに自分の役割を見付けてそこに収まってしまう。
リーダーだったり保護者だったりツッコミ役だったり、「頼れる歳下」だったり。
その全てに当てはまらないのが加蓮だった。

加蓮は一見手がかかる存在に映るが、実際には独立独歩を地で行くパーソナリティを持っている。
今回のイベントシナリオにおいても加蓮のそんな眩しさに奏は一時目を眩まされるが、やがてそこに並び立ち、その上超えてみたいと思う気持ちが芽生える。
まさに加蓮という存在が奏の起爆剤となった形だ。

また私は北条加蓮は起爆剤であると同時に、爆弾であるとも位置付けている。
あの外見からは想像もつかないほど喧嘩っ早く、負けず嫌い
喧嘩っ早さは向井拓海に負けず劣らず、負けず嫌いは渋谷凛以上ではないかと感じる時もある。
過去のイベントにおいてもしばしば問題提起役となり、衝突の発端者となることがあった。
自分に嘘を吐かず、他人にも嘘を吐かせたくない彼女の性格がそうさせたのだろう。
「破壊なくして創造なし」ではないだろうが、わだかまりを抱えたままでは最上の結果を得られないことをよく知る彼女ならではの荒療治であると言える。
北条加蓮はきっと今後もこの姿勢を貫き続けることだろう。

喧嘩っ早さと負けず嫌いの話をしたが、もう1つ彼女を構成する要素として絶対に外せないのが上昇志向の強さだ。
北条加蓮は第9代目シンデレラガールに輝いた。
が、歴代シンデレラガールの中においても、凛と並んでそこで満足していないのがビンビン伝わって来る。
「もう一度シンデレラガールになる」、さらに言ってしまうのなら「連覇し続けたい!できることなら永遠に!」レベルのギラギラとした野心を感じる。
ここまでの気概を感じるのは北条加蓮ただ一人だ。
え?私だけ?そんなことないでしょうよ。
彼女のあの想いの強さが届いていないだなんて、なんともったいない。
最高の地位に昇り詰めておきながら、最強のハングリー精神を今なお併せ持つ、それこそが北条加蓮なのだ。

加蓮の代表的なユニットに渋谷凛神谷奈緒とのトリオユニット『Triad Primus』がある。
それぞれが他の2人を大切に想い、このユニットを非常に大切に考えているが、アイドルとしてのスタンスは異なる。
神谷奈緒は何よりも調和を重んじ、自らを殺してでもユニットの和を守ろうとする。
渋谷凛はとてつもなくストイックでかつ上昇志向が強いが、最終的にはユニット活動をするならそれを最も大事にする。
そして北条加蓮はユニット活動を最優先にしつつも、その中で自分が最も輝こうとする。
ここでひとつ思考実験をしてみよう。
プロデューサーが3人それぞれに「センターポジション争奪企画があるけどどうする?」と尋ねたとする。
奈緒は「あたしはいいよ」と断るだろう。彼女を主役としたシナリオなら紆余曲折の末最終的にはやる気になるかもしれないが、時間はかかる。
凛は葛藤しつつもユニットが最も輝く方法を模索し、それが自分がセンターになることだと判断したならそこに向かって邁進するだろう。
二つ返事で「やりたい!やる!」と言いそうなのが加蓮。
「それはおまえの想像でしかない」?本当に?
考えれば考えるほどしっくりきませんか?
それでこそ北条加蓮だと思いませんか?

北条加蓮は元々病弱だった。
今でこそその面影は希薄になったが、事あるごとに思い返されるエピソードだ。
彼女のハングリー精神はその反動に由来しているのだろうか。
一度人生を諦めた経験があるからこそ、せっかく掴んだ栄光と可能性を手放したくない、もっと確固たるものにしたいと考えているのだろうか。
確かにそれはあるだろう。
が、もう一歩踏み込みたい。
そんな後ろ向きな前向きさではなく。
北条加蓮は元々上昇志向が強かった。
それが大病を患ってしまったことによって限りなく抑圧されてしまっていただけだと。
生まれ変わったのではなく、本来あるべき彼女の姿に戻ったのだ。
その方が面白い。
その方が自然だ。
でないとまたぞろ「こんなの本当の私じゃない。アイドルとしての仮面云々」などと無理矢理悩まされかねない。
北条加蓮は自分自身の意志で伸び伸びとアイドル活動を誰よりも楽しんでいる。
これがいい。
それでこそ今後も追い続けたい。

今でこそ愛すべきポテトキャラが付与され、一層親しみやすくなった加蓮だが、苛烈な本性を内に秘めているからこそそのギャップが魅力的に感じると私は思う。
大病を克服した経験も、ネイルを始めとしたギャルっぽさも、友情も、ポテトも、そして誰よりも強い上昇志向とハングリー精神も、全て含めての北条加蓮。
一度シンデレラガールになっただけでは留まらない、爆発力をまだまだ秘めている。
彼女の導火線にはいつでも火が点いたままだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?