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入院中のトイレ事情(個人的な)

病院のトイレは、基本的に清潔で、掃除も行き届いていたし、トイレットペーパーが切れていることもなかった。

個室の大きさに大小はあったけれど、車椅子で入る人、介助が必要な人、体一つで入れる人、いろいろいるのだから、トイレもいろいろあって当たり前だと思う。

どういう仕組みの換気扇なのか良くわからなかったけれど、連続で使用する人がいてもほとんど臭いも感じなかった。ウチにも欲しい。

わたしの入っていた病棟は、いちばん上の階にあり、その階の半分のスペースはリハビリセンターだったので割とこじんまりしていた。

トイレは4カ所あり、いちばん大きなトイレの真ん前が病室だったので、水分を山ほど摂ってトイレがやたらと近いわたしには好都合だった。好奇心に駆られて全部のトイレに入ってみたけど、いちばん使いやすかった。ただ広い分、介助の必要な方も使うので、のんびりしてると時々看護師さんに声をかけられた。

外来患者が使うトイレは男女別になっているけれど、入院患者が使うトイレは男女兼用。採尿や採便(正しい名称は分からず。検便をするための便を取る器具があり、とても恥ずかしい形をしてた)をするのだし、看護師さんがナースコールでどんどん出入りするのだから、兼用なのは気にならなかった。

でも、便座はちゃんと元に戻して欲しいと、何人かの大雑把な男性に対しては思っていた。


ところで個人的なトイレ事情だが、

3日間の意識不明時に、導尿されていたのはわかってるのだけど、それ以外のモノを3日間もしていなかったのかは謎だけど、たぶんしていなかったはずなのだ。

なぜなら、一般病棟に移ってからとんでもない便秘に悩まされることになったから。水が欲しくて欲しくて気が狂いそうだった、集中治療室にいた間はやはり水分は足りていなかったと思っている。

「好きなだけ水分を摂っていい」(むしろ積極的に取って)となってからは、1日に食事以外で2リットルは飲んでいたし、排便を促す薬も飲んでいた。食事は残さず食べていたし、ウォーキングを始めたのである程度の刺激もあったはず。

でも、出ない。

溜まっている感じはあるのだけど、降りてこない。

水やお茶をガンガン飲むものだから、トイレそのものは近くて1日に10回は行って、その度に挑戦するのだけど思った結果は得られない。

それに前述したように、最寄りのトイレはみんなの使用頻度が高いので一人で長時間使っているのは気が引けた。

わたしは普段は便秘らしい便秘をしない。メンタルクリニックで処方されてる薬の中の一つが、高確率で便秘を引き起こすので、効き目の穏やかな便秘薬を処方してもらっているせいもある。

ICUにいた3日間を含めて入院1週間目になったら、お腹が張ってかなり辛くなった。

なんとかしなくては。どこかでなんとかしなくてはマズい。

実際、治療の上でも大腸の潜血検査が出来なくて困っていたし。

あまり他人が使わない時間帯で、使われる頻度が高くないトイレを見定めて、出るまで居座る!と腹を括った。


座ってからどのくらい経ったか。

ソレはゆっくりと降り始めて、しめしめとほくそ笑んだのだけど、もう少しというところで突然冷や汗が吹き出した。

上からはどんどん消化済みのものが堆積し、しかし大腸の中で長時間水分を抜かれていたソレは、巨大な、カチカチの塊になっていて、自力で出せるサイズでは無くなっていた…。

子どもを産んだことのある人なら分かる感覚なのだけど、産道が開くまではイキンではダメと言われる。そのうち大きな塊が腰から下にズルズルと降りてくる感覚。いざイキンでいいよ!となったら今度は子どもの頭がつかえてすぐには出てこない。その苦しさ。

お産なら、会陰切開がある。

ごく普通のお産の技術。

でもトイレではできないことなのだ。巨大な固い塊になったソレを押し出すために、どんなにイキンでも、物理的に通らない。

あまりの痛さに(切開しないと会陰が破けることがあるように)出口が破けるのではないかと恐ろしくなり、片手で押さえ、片手は安全のために付けられているレバーに捕まって、苦しんだ。

まさか、ナースコールするわけにいかない。

本気でボタンを押しかけたけど。

だいたい、もし来てもらっても、何を手伝ってもらうというのだ!と自分に言い聞かせながら、ジリジリと時間をかけて産み落とすみたいに脂汗を流していた。

いっそ、手を使って掻き出すか?

その後がどんな事態になるか、嫌なことしか思いつかないけど、やるか?

とさえ思い始めた頃、巨大なソレはゆっくりと姿を現した。相変わらず出口は破けそうで、片手で補助をしていた。

子どもの頭ほどではないけれど、本当に、その、すごいソレが体内から滑り落ちた時、手で押さえていたにもかかわらず、出口は切れ切れに傷ついた。

トイレは真っ赤になって、別の意味でかなり慌てた。

拭いても拭いても血は止まらないけれど、いい加減トイレからも出なくては不審に思われるし、大人のオムツを履いていたのを幸いにしてトイレを後にした。

その後、もしも普通のショーツをつけていたらパジャマやシーツも汚していたであろうと思われる事態になった。完全に切れ痔だった。

嫌になるほど手を洗って、脂汗を拭って、足取りも軽く…痛みはあったけど…部屋に戻る前に、担当看護師さんに出会い、うれしさのあまり廊下で大声で報告してしまった。普通は部屋に巡回に来てもらった時にそっと報告することなのに。

やっとこさ便は出たものの、今度は潜血検査が出来なくなった。だって検査したら絶対に血が見つかるはずだから。

看護師さんに相談して、傷が広がらないように、更に柔らかくする薬をもらうようになったけれど、いちど深く切れた後はなかなか治らず、結局14日間の入院中に潜血検査はできなかった。

傷を労わるために、大腸検査のために使う効き目の優しい下剤を退院時にも処方してもらった。

通常の生活サイクルに戻るには、それから随分かかった。




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