オタクからセフレになって彼女になって振られた話


2年半、付き合って2年半の記念日に振られました


2015年7月。最初はわたしの一目惚れで。

彼はコンセプトカフェ(以下コンカフェ)の店員でわたしはお客さんでした。まあオタクにありがちな、別に恋愛に発展するようなあれでもなくて。その時わたしにはコンカフェで先に出会った推しがいたし、彼のことは「推し」という感情より「クラスにいたら隣の席で教科書見せてほしいって思う男子」くらいの感情でした(ヘタか)

推しとは違う、全然尊くなくてなんか距離感も近くて。そういう生き方をしてモテてきた男の子で。

わたしはどちらかというとインキャの部類で、まあだからコンカフェなんかにハマったんだけど、そんなわたしには眩しすぎる「普通の生活をする普通の陽キャな男の子」に「好き」を加速させてしまいました。いわゆるリアコ枠でした。


推しのことも推しとして本当に大切だったから仲のいい友人とコンカフェに通い始めて半年とちょっと経った頃、友人にも推しとは別に当時リアコ枠がいて、ひょんなことから連絡先を交換したと聞きました。

備忘録ちゃんもいけるよ〜って背中を押されたのと、わたしも彼と元から友達だったみたいな顔して連絡取ったりしたいなって思って人生で初めて恋の駆け引きみたいなことをしました。相互アカウントのDMで、見返しても下手ックソで笑うけど。

まだ肌寒い2016年3月、彼はある日今までとは違う連絡を返してきました。

「深夜練まで暇だから飲み行く?」

わたしはこの時点でもう彼への恋が止まらなくなっていることを知っていたし、たくさんのやりとりとコンカフェで顔を合わせるたびに増して行くもっと距離を縮めたいという気持ちを抑えることができなくなっていました。ちょ〜〜暇だったフリして彼の元に向かいました。わたしも深夜にバイトだったからもっと一緒にいたいと思っても物理的にいられないし、ちょうどいいのかもしれないと思って。

あの時なんでそんなことをしたのか、そういえば聞けてないな。


飲みに行ってカラオケに行って、思わせぶりに少し甘えてこられたりして。慣れてるんだなぁって、わたしと別の世界の人だなぁって。

その帰りに携帯貸してって言われて勝手にラインを追加されました。お互いロックをかけない主義だったの、今では考えられないけど。


その日からDMでのやりとりからラインでのやりとりに変わりました。

付き合ってもないのにほぼ毎日しょうもないことで連絡を取り合って、相変わらずコンカフェにも行くし彼の出るライブ(地下アイドルみたいなことも始めたので)も行きました。どんどん好きから抜け出せなくなって、月に1回プライベートで会ってくれるくらいの「セフレ」にいつのまにかなっていました。

そんな関係が2016年3月から9月の長袖に移り変わる頃まで続いたけど、彼に彼女がいることを知りました。

オタク気質なわたしは彼のプライベートのツイッターやインスタグラムを見つけることは朝飯前で、ここでは割愛するけどとあることからこの子は彼女なのではないか?と気付いてしまいました。嘘がつけないわたしは彼に直接「この人と付き合ってるの?」と聞いたけど「付き合ってないよ」そう言われました。バカなので信じました。信じたかったから。


10月の肌寒い日に友人とディズニーに行って、そこで彼と彼女らしき女が歩いているのを見かけました。確信に変わりました。

次の日飲みに行こうと言われて、その場で大泣きしながらおしぼりを一生彼に投げつけていたの、もしわたしが居酒屋の店員だったらツイートしてるくらい滑稽な状態だったな(笑)

彼は言いました。「だって備忘録ちゃんも彼氏がいるでしょ?」と。

わたしにも彼氏がいたのです。お互い様でした。お互い、この絶妙な距離感を手放すのが怖くて。絶対的な存在を失ってまで得たい存在かどうかわからなくて。なぜか帰りに彼は少し困った顔をして「またあしたね」って言ってきたのを鮮明に覚えています。

初めてプライベートで、2日連続彼に会えた日でした。



2016年12月、当時付き合っていた彼氏と別れました。もちろん彼に直接別れたことは伝えずに普通の顔をして、彼の働くコンカフェに行ったけど友人がわたしの代わりに言ってくれました。「お前のことが好きすぎて、備忘録ちゃん別れたらしいよ」って。

「なんで?」

そう言ったと聞きました。ケジメとかそんなかっこいいものでもなくて、わたしはもう彼しか好きじゃなくなっていた、それだけのことでした。

別れたから付き合ってくれるでしょ?とか、彼も別れてくれるんじゃないか?とか考える余裕はなくて、ただ「彼のことだけを考えていたい」と思った行動でした。これでわたしには彼を好きでいることの後ろめたさもなくなりました。



勘違いされて大喧嘩してラインブロックされたことも、年末彼女と会う前にわたしと会うクソスケジュール組んできて可愛いわたしは手紙なんか書いちゃったことも、わたしが帰省して地元の男の子とワンナイト(に失敗)したらはちゃめちゃに嫉妬して鬼ほどラインしてきたことも

あり得ないくらい鮮明に覚えてます。

2016年年末と2017年年始にかけてのわたしと彼はなんだか今までとは違って触れちゃいけないところにまで触れてしまっているような、セフレにしては距離詰めすぎみたいな関係で。

明らかにおかしかった。ふたりとも。


2017年2月、「デート」をこじつけました。

基本的にお互いの用事やバイトの後にホテルに行くかわたしの家に来るか、セフレだからそんな関係だったけど。「備忘録ちゃんとのデート楽しみだなぁ」と彼は言いました。彼女がいるのによく言うよ!とわたしは思っていたし、わたしはその日限りでこの関係を断とうと思ってました。

お金を払ってコンカフェに行けばライブに行けば彼には会えるし、何よりもう思わせぶりな行動に一喜一憂するのが嫌でした。


デートの日、彼は眠れなかったといって待ち合わせの1時間以上も前に着いていて。悔しいくらいに可愛かったことを覚えてます。こんな感情抱いたら離れられなくなる、そうわかっているから冷静さを保つのに必死でした。

なのに海の近くにある水族館で子どもみたいにはしゃいだり、なぜかわたしのソロカットばかり撮ってきたり、ツーショットを撮ろうと寄ってくる彼にわたしの好きは増すばかりで。側から見たら彼氏と彼女の楽しいデートなのにそうではなくて。

朝から遊んで疲れてしまって、夕方にはわたしの家に帰ってきました。その日はたまたまバレンタインの前日で、これから就活が始まる彼のために用意しておいたお気持ち程度のプレゼントがあったしね。

ふたりでベッドにゴロンとなって。わたしは覚悟を決めて言うぞ、と意気込んで。

「「あのね」」

なぜかこんな時に、彼と言葉が被りました。神様はイジワルでタイミングブスだなって思ったけど彼の話を聞いてからでもいいか、どうせまた惑わす思わせぶりな言葉だしと思ってわたしは彼を優先しました。

彼から出た言葉は「付き合おう」でした。


頭の中は真っ白で訳がわからなくて、スーッと涙が出ました。わたしは一定の感情を超えると泣いてしまうたちなので。


ちゃんと話しを聞くと彼は1月には彼女と別れていて、わたしと付き合う気で別れたとのことでした。わたしはこの関係を断とうとずっと悩んでたけど、こんな形で叶うとは思っていませんでした。

関係を断とうとしていたことを伝えると彼は今日言ってよかった!と安心した顔をしていました。


オタクからセフレに、そして彼女になった瞬間でした。




付き合うまで出会いから約2年かかってるわけだけど我ながらここまでよく覚えてるな…。

というより付き合うまでの期間が壮絶すぎて付き合ってからの話はそんなにしなくていいかなという気持ちになっています。

わたしは社会人、彼は就活をしながらコンカフェ店員とアイドルをしてわたしの休みにふたりで遊んで。彼は少し人気が出てきていたのでもちろんコソコソと。そこは少し寂しかった。

相変わらずコンカフェにもライブにも遊びに行ったしそれはむしろ今までより必死で、彼女だから全部見守りたい!という一心で。仕事の関係でシフト制のわたしは希望休のほとんどを彼の活動に足を運ぶことに使って、デートの時間がとれない月があったり。



ここで少しアイドルの話をすると彼のやっていたアイドルの界隈はオタクがどれだけお金を積むかが正義みたいな気持ちの悪い界隈で。彼女でありオタクのTOPみたいなポジションになってしまっていたわたしは、全くそういった関係ではありませんよ〜という顔をしてオタクとしても1番になりたくてたくさんお金を使いました。掲示板で本カノ営業だと叩かれていたこともありました。いや彼女だし。昼の仕事だけでは生活もあるしきつく、たくさんのバイトを掛け持ちして心身ともに限界の状態で彼と付き合い続けました。嫌な仕事も少ししました。それでも彼の姿を見れない日があるのが怖かったし、彼女のわたしが会えないのにオタクが会えるのは癪に触ったし、なによりそうでもしないと会えないほどわたしと彼の生活リズムは異なっていました。わたしが社会に出て彼は学生で、それは当たり前だったけど。


それはもう彼のためだけに生きていました。わたし自身それを望んでいたはずなのに、時折虚無感に襲われながら。


彼が着実に人気を集めていって彼自身アイドルとしての自分に高みを持って自信を持って過ごしてわたしはそれをひたすら見守って、そして付き合って1年が経った頃。

事前に記念日だから泊まり含めて二日間遊ぼうと決めていた日に、配信系アプリを介した重要な決戦の最終日が重なってしまいました。その日彼はお昼からコンカフェに出勤して、夜は決戦となる配信をして、終わり次第ほぼ終電でわたしの待つ横浜のホテルに来てくれるスケジュールでした。

わたしは彼が働く時間にコンカフェに顔を出して、彼の配信を一人バーで見守って、彼がくるのを待つことにしました。この時期決戦までに続いていた配信の課金やその過密スケジュールにより会えない日々が続いていてメンタルはボロボロでした。バーで最後に十何万もアプリに課金して泣きながら見守ったのを覚えています。彼女だからそんなことやらなくていいって彼は言ってたけど、わたしにできることはそれくらいしかなかったから。他のオタクのおかげもあって彼は見事1位になって夢が叶いました。ほんとうによかった。あれはほんとうにかっこよかったな…そのあと汗だくでわたしを迎えにきた彼もかっこよかった。



2018年3月末、彼は普通に就職をするためコンカフェもアイドルも卒業しました。それはもうたくさんの人に惜しまれながら。彼の頑張りが結果になってよかった。わたしもよく頑張った。そしてもうこんな限界の状態で彼を愛さなくてもいいことに少し安堵しました。やっと誰にも後ろ指を指されることなく、無理矢理仕事を増やすこともなく、当たり前のように幸せになれると。それだけで気が楽になりました。

限界すぎて彼の卒業ライブの後に祝い酒で胃がやられて(卒業までのストレスで元々弱っていた)救急車で運ばれたのはどう考えても頭がおかしかったと思います。胃ではなくて。


彼の活動を応援する中で見せてもらった軌跡はわたしの中で宝物です。これは一オタクとして。

儚くてかっこよくて、誰にも文句を言わせない綺麗な引き際だったとわたしは思ってます。きっと彼はここでまだ振り切れなかったから、今こんなことになってるんだろうけどね。



わたしを追うように、彼も一年遅れで社会人になりました。遅れってのも変か、彼は1つ年下なので。

アイドルをしている時となんら変わらず、わたしにとって彼は何事も頑張れるかっこいい彼だったしキラキラして見えていました。全然似合わない黒髪も個性のない仕事用のバッグも彼は嫌で仕方がないんだろうけど、人生ってそういうものだしわたしはそれでいいと思ったし。


2018年6月、彼の誕生日にホテルに泊まりました。ただの平日でわたしは休みだったけど彼は仕事終わりで疲れていて、誕生日を迎える前に寝落ちてしまったんだけど。少し寂しい思いをしていたら彼の携帯に着信がありました。

こんな夜に誰だろう?大事な連絡かも?

そう思って明るくなった画面を見ると女の子の名前が表示されていて。このタイミングで。怖くなったわたしはとりあえず寝ている彼に携帯を渡して「電話…」って。彼は寝ぼけていて着信が切れた携帯のロックを解除したまま、また寝てしまいました。

見なきゃよかったんだけど、それだけなんだけどね。タイミングがタイミングだから解除された画面を見るとさっきの女の子とのトークになっていて。急に目眩がしました。その女の子は彼の親友のセフレだったはずの女の子で、しかもその子はわたしの友人のかつての知り合いで地雷だってことはわたし経由で彼も知っていたはずなのに。

絶対これだけじゃないってわたしじゃなくても分かると思うけどもう詮索が不安が絶望が止まらなくなってしまって、彼の親友と彼のやり取りを見てしまいました。先に言っておくけど携帯は見ないほうがいい。これはまじで。


わたしが心身ともに疲れながら必死で付き合ってきた彼のアイドル時代に、数回浮気されていたことを知りました。わたしは彼しか見てなくて、彼のために彼と一緒にいるために、それだけのために生きていた期間に。

寝ている彼を起こす気にもならなくて、次の日の朝から喧嘩をして最悪な彼の誕生日と数日を過ごしました。


もうかれこれ1年以上前のことだけど、本当にトラウマでこのことがあってからずっと彼のことは信じられなくなっていた、と今では思っています。人は裏切られたら簡単にはもう一度信じることなんかできない。大好きな人だったら余計に。



それ以降も「もうしない」と「携帯は見ない」をお互い誓ってまた同じように毎日を過ごして。

もちろん楽しかったことは数え切れないほどあって両親に会いに行くのについてきてくれた時はすごく心強かったし、大雨なのに花火大会に行ったり。気づいたら迎えていた付き合って2年記念に帰省以外で初めて遠出をしたり。別にどこに行こうって決めてない日だって家で録画したお笑い番組を見てる時だって、わたしは彼がいれば「何をするか」は重要ではなくて「彼といること」が幸せで楽しかった。


誓ったはずの「もうしない」が守られていないと勘付いても、気づいていないフリをしました。そうしたらきっとずっと一緒にいてくれると思ったから。「なんでも受け入れて許してくれるわたし」を好きでいてくれていることをわたし自身が一番わかっていました。


ただ1つ、唯一わたしが受け入れなかったのは彼がまたアイドルなり芸能なりの仕事をすることでした。


あの後ろめたくて心身ともに疲れながら付き合っていた日々に戻るのが怖かった。今みたいにカレンダー通りの仕事ではなくなって彼の行動が読めなくなって、また浮気されるのが怖かった。

別に彼がまたアイドルになったからといって昔みたいに必死に活動を追いかけることは義務ではないけれど、「会える環境」があるのに会えない自分は許せないっていうわたしの中のオタクルールみたいなのがあって。そんなものがなければもう少し気も楽だったんだと思います。


わたしが受け入れられないと分かっていながら、夢を諦めきれない彼はオーディションを受けたりオフ会や主催ライブをしたい旨を伝えてきました。最初は猛反対だったけど、彼も社会に出て2年経ったし、アイドルというかアーティスト寄りの若干将来性の感じられるものでほんとうに彼がやりたいことなら止めないでおこうと、次何か相談してきたらものによってはちゃんと背中を押そうと決めていました。


わたしのそうした小さな心の変化は、口に出さないせいで彼には伝わっていなかったみたいで。まあ当たり前なんだけど。



2019年8月、彼から最近会いたい気持ちが芽生えてこないことを伝えられました。わたしのせいか?と聞くと自分の気持ちの問題だ、と。わたしは何が何だか分からずひたすらに混乱しました。バカだけど本当にずっと一緒に生きていくんだと思ってたから。わたしは彼に会いたいと思わない日なんてなかったから。



1週間お互い距離を置いて彼が出した答えは「別れよう」でした。原因がわたしにあるのであれば直してまた一緒にいたいと思ったけど、彼にもはっきりとした原因はわからないみたいで、ただ「疲れてしまった」と言いました。


わたしは素直にうんと言えるはずもなく、丸2日間泣き続けて一緒にいたい気持ちや、今までにスルーしてきた彼の「もうしない」が裏切られているのに気づいていた話、それでも大切だと思っていることを伝え続けました。

彼に愛されないのであれば生きている価値がないと、リストカットもしました。楽しかった記憶なんかいらないし出会う前に戻りたかった。痛いのが大の苦手だから軽くしかできなかったけど。

「死ぬね」と送ると一旦わたしの家から帰ったはずの彼は汗だくで戻ってきて、引きずるようにわたしを抱きしめてベッドに倒れ込みました。

2週間ぶりに抱きしめられたなぁなんて、のんきに思って。わたしは彼の暖かさが欲しかったし、2年半付き合ったくせに甘えるのが下手で、自分の口からなかなか言えなかったからこんな状況下なのに好きだと思ってしまいました。こんなことをしても彼の好きが戻って来るわけないのはわかっていたけど。




結果的にわたしと彼は別れることになりました。

別れてまだ3日くらいしか経ってないので、気持ちの整理と消化のためにこのnoteを書いています。2年半の思い出や、彼の荷物がまだ残るこの部屋で、わたしはずっと考えていました。


「どうしては彼はわたしを好きになってくれたんだろう」





自分のオタクに手を出すことはリスクを負うし、別にわたしは顔がいいわけでもスタイルがいいわけでもないし、結果として彼のやりたいことに制限をかけてしまっていたし。いいことなんてなかったはずなのに。



考えたこととしては、彼自身が見つけたやりたいこと・アイドルをしながら悩みもがいている時に「オタクとしてのわたし」がいて裏で「女の子としてのわたし」がいたこと。そこを多少なりとも頼って必要としてくれたから好きになってくれたんじゃないかと。


今の彼は成り行きで社会に出て別にやりたくもない仕事をこなして、わたしから見たら昔となんら変わらずかっこいい彼だけど、彼自身が自分に満足していない状態だからこそわたしは必要じゃなくなったんだと思います。



愛されたかった、裏切られたくなかった。

それであれば彼のやりたいを制限することは逆効果だったと気づきました。今となってはほんとうに彼がやりたいことであれば背中を押す覚悟を決めたことを、ちゃんと伝えればよかったと思います。もっと早く。



他人を想う余裕なんて、自分の幸福の上にしか成り立たない。



わたしも一旦、今は自分のために生きてみようと思います。もし彼がやりたいことを見つけて始めたとしてもそれを知る術が今はないし、頼られるポジションでもなくなってしまったけれど。


いつかこの人生の先でまた彼の人生と交じりあう時が来たら、運命だったみたいな顔して会えるように。










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