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小学生のなりたい職業1位を農家にすることを夢に掲げる農業プロデューサー“脇坂真吏”さん

既存の概念にとらわれずにチャレンジし続けながら、農業の健全化に向けて様々な活動をされてる脇坂真吏(わきさか まさと)さんからお話を伺いました。

脇坂真吏さんプロフィール
出身地:北海道 東神楽町
活動地域:北海道、東京
経歴:2004年 野菜ソムリエの店Ef 設立
2005年 野菜ソムリエの店Ef3号店 店長就任(2006年退社)
2006年 株式会社NOPPO 設立/代表取締役(2012年売却)
2009年 NPO法人農家のこせがれネットワーク 設立 理事COO
2011年 株式会社Agri Innovation Design 設立 代表取締役
2012年 一般社団法人日本肉ソムリエ協会 設立 理事
2014年 株式会社DKdo 設立 取締役/黒幕(2017年5月から代表取締役/東京代表) 2017年 一般社団法人マルシェ・マーケット研究所 設立 代表理事
株式会社東神楽アグリラボ設立 代表取締役会長
現在の職業および活動:SouseiMarcheの展開 マルシェ事務局業務
(ヒルズマルシェ・ワテラスマルシェ・浜町マルシェ・KITTE前地下広場マルシェ) 北海道東神楽町の農業プロデュース 北海道東神楽町農業者と会社を設立し、八百屋を事業展開 香川県三木町の養鶏農家のスイーツ業態の事業支援 など
座右の銘:「チャンスの神様に後ろ髪はない」

「小学生のなりたい職業1位を農家にする」

Q1.脇坂さんが思い描くこれからの夢・ビジョンを教えてください。
脇坂真吏さん(以下、脇坂):
小学生のなりたい職業1位を農家にします。これは起業する前からずっと考えてた「農業活性のあり方」です。

東京農大の出身なんですけど、農業界の不思議に対する思いがあって、大学1年の時にさくらんぼ農家さんに行った時に、すごくいい仕事されてるなと思い『儲かってるんですか?』と聞いたところ『いや、儲かんないよ』との返答が最初の不思議でした。こんなに美味しくて、すごくいい仕事してるのに儲からないって、不思議だなと。儲からないとか、高齢化が多いとか、若い人が継がないとか、メディアでも課題ばかりがフォーカスされてますが、農業はなくならない産業だし。これは何とか変えたいなと思ったのが、活動の動機ですね。農家さんが儲からないというのは、これはいかんなと思い、何とかしないとと思いました。

単純に若い人がいないと思った時に、憧れられる産業にしないといけないよねと思ったんです。「やりたい!なりたい!つきたい!」にならないと。
そして、単純に考えて「なりたい職業1位を農家に」ならないといけないなと。

農業支援の仕事って、だいたい生産側に近い仕事をするか、作ったものの流通の仕事や、若い子を育てるとかだと思いますが、ここで田舎に戻って生産をやったところで農業を憧れにはできないなと思い、広くマーケット側にも近づいた部分での活動ができたらと。消費者と共に歩めるような形での農業支援のポジションとしていれる方が面白いなと思い、大学時代に一番最初の会社を立ち上げました。そこで、大学生と農業関係者の合同イベントを仕掛けるという活動をやったり、媒体としてフリーペーパーとかも出したりしました。

記者:夢は農業を憧れにしていくのが一番で、それは農業に携わる若者を増やしたいというところですか?

脇坂:結果的にはそうですね。農業は産業構造が不健全なので、それをどう正すかみたいな。若い人が就職すること、農業経営ができてない人もごまんといるので、経営コンサルとか、あとは食べる側の人が近づいて来ないといけないので、マルシェとかを通じて食べる楽しみとか、知りたい人が知識を知れるような機会を増やしたりとかしています。

農業自体の産業構造自体が変わらないと、結局が枝葉の話じゃないですか。
いろんな意味で、もう時代に合わないままずっと来てますし、普通民間企業だったら時代に合わなかったら潰れていくか、イノベーションを起こしていくはずですが、農業界は国と農協がお金を出し続けるのでイノベーションを起こさなくても生き続けてるんです。本来ならもう死んでるはずの組織が、ずっと枯れ木に永遠と栄養を与え続けているようなもので、結局、循環再生してないんですよね。

なので、農業の産業構造自体を変えていく必要があると思っています。


「時の流れに身をまかせる」

Q2.脇坂さんは夢を実現するために、どのような目標や計画を立てていますか?
脇坂:
あまり立てていません。時の流れに身を任せ、自分のやりたいことと、求められたことをやった結果、そこに活路があったりしています。
壮大な目標がありながらも、その時その時で必要とされる状況のことをやって補っていくみたいな。

アクション的な部分は、人づくりと場づくりが大きな2つの柱のイメージです。
人づくりは地方でコンサルやセミナーなどやって、場づくりはマルシェなど地域に入り、いろんな仕掛けなどをプロデュースしてやっていくだけ。結構、仕事ってタイミングだなと思うんです。

年間の数字はきっちり立ててやりますよ。他のコンサルチームと組んでやった時、年間の営業計画とか作るときに積み上げ方の角度が全然違って面白いと言われた。人件費時給換算とか、一人当たりの時間の能率性とか全部を弾き出したところから積み上げていくので、ずいぶん細かいところから作るねと言われました。

基本、残業代は出さないから残業はするなと言っています。残業をしなければならないような仕事は出していないので、自分が評価するのは、がむしゃらに頑張ることではなく、休みをきっちりとって時間内できっちり仕事をこなすことに対して評価をします。

自分は好きで仕事をやってるので365日それをやっているし、仕事が趣味なのでそこに全力を傾けてるだけで、別に働いてるサラリーマン全てがそうではないと思います。お互い好きなことをやるのがいいよねという考え方でやっています。

与える時給に対する利益目標とか価値というのは自分で作って、そこに差配が合わないのであれば、どう組み立て直すかをやっています。

結局は人と人なので、人の能力を最大限にあげるのが経営者の仕事だと思っています。その現場、現場で、働いている人たちがどう最大化されるのか、無理、無駄、ムラを無くすこと。無理なことはさせない、無駄なことは削っていく、ムラをなくすというのが効率の最大化なので。

「救済ではなくビジネス」

Q3.脇坂さんはどのような活動指針で、どのような活動をされているのでしょうか?脇坂:仕事の話をもらった時や何かをやる時に、自分がやるべき農業支援なのかどうかで、他社さんの方がうまく行くことなら自分がやることではないし、農業以外であればまずほとんど話は聞かないです。

20代の時に、地域産業で農業と漁業と林業とものづくり(いわゆる伝統工芸)などの話があって、ちょっと関わってみたこともあるのですが、熱量が出ないんですよ。課題は一緒だし、地域で頑張ってきてることなんですが、農業じゃないので自分のモチベーションが上がらなくて・・・なので、やらないというのがシンプルな結論です。

記者:脇坂さんが思う農業と漁業の違いとは何でしょう?**
脇坂:**農業と漁業の一番根幹の違いって、計画経済か狩猟なんですよ。結局、計画的に出来ないとなると、僕の好きな数字論でいくと組み上げづらいんですよ。
農業だと畑がこの面積があります、こういう作物があります、そしたらこれだけの売上げと利益が出せますよねって話ができますが、漁業はおそらくここにサンマがいるだろうと、結構博打なんです。男のロマン的には漁業が面白いんでしょうけど、経済的なコンサル概念が強いと組めないですね。

記者:脇坂さんが見てる視点が、部分よりは、農業全体の産業構造を底上げできるようになど、常に全体への視点が強くあるように思うのですが。
脇坂:わりと全体論から考え、農家とか農協とか役場と話す時でも平気でダメな農家はさっさと潰せと言いますから。救済ではなくビジネスなので、救済をしようとするから変になるんです。新芽が出たくても枯れ木が幅を利かせていて、田舎の農業論だとリアルなんですよ。若い人が何かやりたくて新規で入ったら平気で村八分にしたり、川下の田んぼの水を止めて枯渇させるような嫌がらせも本気であるので、全然前向きじゃないダメな人たちが今でもいます。細かい点で言えば、『ダメな農家はやめちまえ』と平気で言います。

記者:それをはっきり言うことって、結構勇気がいることではないですか?
脇坂:農家の6次産業化についての話も、みんながおかしいなと思ってるけど言えないことを平気で言っちゃうので、それで講演会などには呼んでもらっています。どこにも属してないから言えちゃう。みんなにそれを言えと言われ、好き勝手に言ってます。


「不健全な農業を産業として健全化させる」

Q4.脇坂さんが今の夢やビジョンを持つようになったきっかけは何ですか?

脇坂:農大に入るまではもともと農家に対するいい印象はなかったが、大学に入って農村調査部という部活に入って、毎年1箇所テーマを決めて全員でヒアリングとか実地調査をする中で、大学1年の時に最初に会った農家さんとの出会いがきっかけです。

大学2年の時にリアルな八百屋のビジネスにも触れながら、部活で動く中で農家さんと学生が何を考えているかを見たり、大学の授業も聞く中で、いかに授業でやってる内容が遅れてるのかが分かりました。3つを同時に見れたのがすごい楽しかったし、トータルですごい面白かったですね。

産業の健全化、農業の健全化に軸があって、農家さん個人に対して特に否定はないんですが、地域や補助金とか、働く側の側面や環境に対してダメだなと思うことが多く、前向きに働いてない人や流されてるような農家さんには問題意識を感じてます。枯れ木は枯れ木でほっとく、巨木だけど枯れ木じゃない人を味方にして、その中で新芽を活かしていくし、若くなくても前向きに努力をしようと頑張ってる人はどんどん支援します。伸びようとしない芽を育てても意味がないので。
補助金に対してどういう考え方をしてるのかを見れば、だいたいどんな人なのかが分かりますね。補助金を有難がってたり、補助金ありきでやってる人たちは全然健全な努力ではないので、健全な努力で頑張ろうとする前向きな農家さんを応援したいです。


「農家さんとの出会いから生まれた疑問」

Q5.「農業が不健全だ」と気づくことができた背景には、何があったのですか?
脇坂:
最初の農家さんとの出会いだけですね。その農家さんとの会話から、おかしいと思って勉強や授業でデータを調べて、やっぱりおかしいと思ったので。その先はほとんど検証していくだけで、どんどん仕事すればするほど見える世界が広がっていって、やれることとかやらないといけないことが見えてきただけですね。

農家さんと出会って、かっこいい仕事で、みんなが美味しいと喜んでくれる不可欠な仕事をしてるのに、それが『ビジネスとして成立してない』って言っちゃうことが、不思議だと思いません?

僕はいつも頭の中で「不思議だな」という言葉を、1日の中でずっと繰り返しているんです。なんで今これが売れてるんだろう?とか、なんでこういう色なんだろう?なんでこういう設計なんだろう?とか、なんでこうなったんだろう?って四六時中ずっと考えちゃうのが昔からの癖なんです。
考えてなかったり、疑問に思わない人の気持ちが全く理解できないんですよね。
自分にとっては考えてないことがなく、考えてることや疑問に思うことが普通なので、全く違和感がないんです。

世の中に動いているもの全てが、経済系で言ったら全てが事例じゃないですか。世の中のいろんな企業や人が、頑張って作りあげた広告とか物とか商品に溢れてるわけで、見ているだけで全て勉強できちゃうじゃないですか。そのアウトプットが全てここに現れているので、本を読んだり人の話をわざわざ聞きに行く必要もないんですよね。

記者:なんで常に物事に対して疑問を持つようになったと思いますか?
脇坂:単純に好奇心が旺盛だったんだと思います。もともと自分の中で考えちゃうし、答えが出ないことにすごいそそられるんですよね。こうやったらクリアできるなと思うことには興味が湧かなくて、面白いけどこんなことやれるのか?とか、単純に儲かることよりも、分からないことや、どうなるか見えないからこそ面白いと思います。自分ですら分からないこと、知らないことを考えることって尽きないのでワクワクしますね。

記者:以上でインタビューは終了です。本日は貴重なお話をありがとうございました!

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脇坂真吏さんの活動、連絡についてはこちらから↓↓

Facebook:https://www.facebook.com/masato.wakisaka?epa=SEARCH_BOX

HP:http://nougyou.tv

【編集後記】インタビューの記者を担当した廣瀬&中西です。

産業構造の全体を、根本から変えようとされてる脇坂さん。イノベーションを起こしていこうという強い意志と、なかなか思ってても言えないことをバンバン言っていく勇気がすごいなと思いました。常に疑問を持ち続け、分からないことに面白さを感じるチャレンジ精神、パイオニア精神をすごく感じさせてもらい、たくさん刺激をいただきました。

今後の更なるご活躍を楽しみにしています。

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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。


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