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人生ドラマ/訪問者

テレ東ドラシナリオ応募します。
サトー兄弟さんの”訪問者”をもとに書きました。

<登場人物>
藤田浩二(26):地方公務員。いじめっ子だった。
上坂幸喜(26):自営業。藤田の友達。
斉藤芳樹(26):営業マン。中学時代、藤田にいじめられていた。
下山達也(26):無職。中学時代、藤田にいじめられていた。
太田浩一(26):フリーター。中学時代、藤田にいじめられていた。
久保隆二:中学時代、藤田にいじめられていた。20歳で自殺。

<あらすじ>
 アパートのポストに入ってあったアルバイト勧誘のチラシに興味を持った藤田は、お金に困っていたため即座に応募。「宅急便を受け取り、開封すること」という条件の遵守を条件に、藤田はアルバイト採用となった。
 当日、宅急便が来て、指示どおりに開封してみると中から、ムチが出てきた。疑問に思いながらも、藤田は机の上に並べた。その後、2回目、3回目と来るが、どれも変なものばかり。
 藤田の違和感は強くなり、荷物は、どれも自分との過去と関わりがあることに気づく。差出人を見ると、かつて中学時代にいじめていた久保が浮かび上がってきた。
 同級生に電話をし、久保について聞いてみると、6年前に自殺をしていたことを知る。
 その後、また宅急便が来て、荷物はゴキブリの死骸だった。恐怖を感じた藤田は、その部屋から出ようとするが、なぜか玄関が開かず、逃げることができない。
 その時、中学時代に藤田からいじめらていた斉藤という男から電話があった。いじめられていたメンバーでおまえに復讐することをずっと計画していたと伝えられる。
 泣き叫ぶ藤田。
 その姿は、部屋に配置されたカメラでネット配信されていた。
 とある家では、その配信番組を楽しそうに、閲覧する斉藤と下山、太田がいた。かたわらには、久保と思われる遺影があった。(終)

<シナリオ>
○アパートの一室
   電話中の藤田。だるそうな感じ。
   「留守番をして宅配便を受け取ってください。バイト料10万円」
   と書かれたチラシを見ている。
「名前は、藤田。藤田浩二。」
   タバコをくわえながら質問に答える藤田。
「はい、大丈夫ですよ。その日は一日中空いているんで」
「荷物は受け取って、開封して、並べる。これ以外には何をしていてもいいんですね。はい、冷蔵庫の中もOK? そうですか」
「え? こっちからのお願い? ああ、それなんですけどね、俺、公務員なんですよ。ええ。だから、副業禁止なので、源泉徴収しないで、とっぱらいって言うの? それで渡してくれないかなーって」
「ああ、大丈夫? ああ、そうですか。それでは、よろしくお願いします」
   満足気に受話器を置いて、パチンコ雑誌を藤田は手にとった。

○人里離れたアパート
藤田「なんだかえらい遠い場所だなあ。しかも圏外ってどういうことだよ」
   アパートを見上げる藤田。手元には地図と鍵。
   アパートの二階に上がり、指定された部屋の鍵を解除する。
   中は、ワンルームで生活感が感じられる綺麗な部屋。
   真ん中にテーブルが置かれていた。
   藤田は早速冷蔵庫を漁り、缶コーヒーを取り出した。
   ソファに座り、テレビを見る。と、チャイムの音。
藤田「はいよー」
   玄関を開けると、なんとなくおどおどした雰囲気の宅配業者がいた。
男「株式会社プラスワン代表取締役の藤田浩一様でよろしいですか? 」
藤田「あー、そうだよ」
   荷物を受け取り、部屋の中に戻る藤田。
藤田「藤田浩一って、俺の名前とほぼ同じじゃん」
   早速開けてみると、中からムチが出てきた。
藤田「なんだこりゃ? なんかおかしな会社だなあ、ここ」
   笑いながら、テーブルの上にムチを置く藤田。
   差出人を見ると、久保隆一という名前だった。

   ソファに座ってテレビを見る藤田。飽きてきたころに、また
   チャイムが鳴った。
   玄関を開けると、おどおどした雰囲気の別の宅配業者がいた。
   ふんだくるように荷物を受け取る藤田。
   差出人と宛先は全く同じだった。
藤田「一回で送ればいいんじゃねえのか」
   藤田は悪態をつく。
   開けてみると、中からノートが出てきた。ノートをめくると、
   ページ一面に「バカ」とか「死ね」と書かれていた。
藤田「なんだこれ。気味悪いノートだなあ。こんなのどうすんだよ?」

   しばらくしてソファでうたた寝をしていたら、隣の部屋から叫び声
   が聞こえてきた。びっくりして飛び起きる藤田。
藤田「なんだなんだ」
   そこにまたチャイムの音。
   玄関を開けると、おどおどした雰囲気の別の宅配業者がいた。
   ふんだくるように荷物を受け取る藤田。
藤田「おい、おまえ、いまの叫び声聞こえたか?」
宅配業者「いえ、何も」
   そう言って踵を返す宅配業者。
   部屋に戻り、荷物を開けてみると、ロープが入っていた。
藤田「ロープ? ますます意味不明だな」
   よく見ると、ロープは先が輪っかになっていた。
   なんとなく、藤田の心に疑念が生じてくる。
   ムチ、ノート、ロープを順番に見る。

    ----[フラッシュバック]
    ・自殺の練習と称して、同級生の首にロープをかける藤田
    ・同級生のノートに「死ね」「バカ」と書く藤田
    ・トイレで同級生をムチで叩く藤田
藤田「全部、俺に関係のあるものじゃねえか……」
   送り状を確認する藤田。
   宛先は株式会社プラスワン。
藤田「プラスワン……。いちを足すってことか。宛先は藤田浩一。いちを足すと、藤田浩二。俺だ! 送り主は久保隆一。いちを足すと、久保隆二。久保って、俺がいじめていたやつじゃねえか!」
   スマホで中学時代の友人の電話番号を調べ、部屋にある固定電話
   からかける。
藤田「上坂、ひさしぶりだ。ちょっと聞きたいんだが」
上坂「どうしたんだよ、切羽詰まった感じで」
藤田「切羽詰まってんだよ! おい、久保隆二って今何してんだ?」
上坂「久保? ああ、おまえは東京の大学にいたからわからないんだ。あいつ6年前に自殺したよ。親が発見したって話だが」
藤田「死んでる? 嘘じゃないのか?」
上坂「嘘ついてどうすんだよ。なんだよ、幽霊になっておまえのところに来てないのか(笑」
   藤田は受話器を投げつけた。
   と同時にチャイムが鳴る。びっくりして飛び跳ねる藤田。
   玄関を開けるとおどおどした雰囲気の別の宅配業者だった。
藤田「今度はなんだ!」
   ひったくるようにして荷物を受け取る藤田。
   こわごわと開ける藤田。なかには、ゴキブリの死骸があった。

   ----[フラッシュバック]
   ・無理やりゴキブリの死骸を久保に食べさせる藤田
藤田「なんだよ、これ! 久保か! 久保の仕業か! はっ!」
   ----[フラッシュバック]
   ・これまで来たおどおどした感じの宅配業者
藤田「あいつら、どっかで見たことがあるぞ。誰だ? 誰なんだ?」
   急いで玄関を開けて追いかけようとするが、ドアはびくともしない。
藤田「なんだ、これ? 開かないぞ、おい!」
   突然部屋の電話が鳴る。電話をとる藤田。
藤田「おい、誰だ!」
男「くっくっく、元気ですねえ。藤田さん。お久しぶりです」
藤田「誰だ、おまえ。おまえ、久保か?」
男「久保くんは死にましたよ。あなたのいじめが原因で。私は斉藤芳樹。中学のときはお世話になりました」
   脳裏に、斉藤の顔が浮かぶ。
斉藤「よくあなたにはカツアゲされました。みんなの前で服を脱がせられました。毎日、地獄のようでした。本当に、死のうと思っていましたよ」
藤田「悪かった。俺が悪かった」
斉藤「私にとって忘れることのできない過去なんて、あなたにとってどうでもいいことなんでしょうね。まるで覚えていないようだ」
藤田「そんなことはない。悪かった。反省する!」
斉藤「だって、さっき、あなたにお会いしたのに、あなたは私のことを覚えていなかった」
   宅配業者の姿を思い出す藤田。
藤田「さっきの宅配業者か!」
斉藤「そうです。下山くんも太田くんも行きましたが、やはり、あなたは覚えていなかったようですね」
   下山と太田の顔が浮かぶ。
斉藤「私達は、一日たりともあなたのことを忘れた日はありません。高校に入って、東京の大学に行って、地元に返ってきて県庁職員になって、楽しく暮らしているあなたのことを、いつもいつも考えていました。なんで、人生はこうも不公平なんだろうと」
藤田「なにが不満なんだ」
斉藤「いじめられた過去、それに苛む日々。苦しい日々が続きましたが、それももう過去のこと。今では、すっかり希望に満ち溢れています。あなたへの復讐。これこそが私達の生きる糧」
藤田「復讐……」
斉藤「とりあえず、あなたを囚えることができました。あなたはもうそこの部屋からは一歩も外に出ることはできませんし、いくら泣き叫んでも、助けを乞うても、人里離れたこの場所に誰も来やしません。それにね、そもそもこのアパートは、僕らが頑張ってお金を貯めて購入した”復讐専用アパート”なんですよ」
   藤田は奥の窓を開けようとするが開かない。拳で硝子を叩いても
   割れない。
斉藤「無理ですよー。もう、あなたは一生そこにいるんです」
藤田「なんだと……」
斉藤「久保はあなたのいじめがトラウマになって、高校にも行けず、就職もできず、それでも、生きようとして、自殺した」
藤田「悪かった。悪かった……」
斉藤「馬鹿ですよね、久保って。あなたに復讐せずに死ぬなんて馬鹿だと思いませんか? どうせなら、あなたの顔に傷ひとつでもつけるくらいの気概をもってほしかった。いや、それがなかったから死んだのか」
藤田「頼む、やめてくれ! 中学のときは悪かった! どうすればいい? お金か? お金が欲しいのか? それとも女か?」
   髪をかきむしる藤田。
斉藤「まだわからないのかなあ? 私達が欲しいのは、あなたの苦しむ姿なんです。恐怖、絶望、痛み、恥辱、そんな感情をすべて体験してほしいんです」
藤田「やめてくれ! なんで俺だけなんだ! いじめをやったのは、俺ひとりじゃないだろ。上坂だってやってたし、佐藤もだ! 谷村も」
斉藤「あれれ。さっき、叫び声が聞こえませんでしたか? あれ、佐藤くんの叫び声なんですよ。たしか、隣の隣の部屋だったかな」
藤田「佐藤の……?」
斉藤「明日、上坂くんも来る予定になっています。これで、いじめの主犯格は全員監禁されることになりますね。楽しみです。生かさず、殺さず、長くかわいがってあげますからね。なんか、昆虫を飼っているような、そんな気分ですよ」
藤田「昆虫……」
斉藤「それではこれにて電話終了です。もう外部とは繋がりませんからね」
   藤田は声にならない叫びをあげ、泣き崩れた。

○とある一室
   斉藤、下山、太田三人が笑いながら、インターネットの画面を見て
   いる。傍らには、久保と思われる遺影。
   彼らは、とあるライブ映像を見ていた。
   そこには、うつろな目で、手のひらの上のゴキブリを見つめる
   藤田が写っていた。

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