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U-18 Review 2022

 昨年と同じように、2022年度ヴィッセル神戸U-18の活動を中心とした振り返りという趣旨で書くつもりだったけど、実はこの記事をアップロードする時点で、まだU-18のシーズンは終わっていない。なので、留保される評価があることを前提に読んでいただければ幸いです。
 書き手である私がどういう人間かについては、1年前の自己紹介を参照ください。

■主要大会の成績

・プレミアWEST
 2位 勝点43
 13勝4分5敗 得点51 失点28 得失点差+23

 サッカー界もコロナ禍の影響に苦しめられ、際どい戦績で残留を果たした昨年から一転、ヴィッセル神戸にとって久々飛躍のシーズンとなりました。2チームが加わって12チームでのプレミアWESTのリーグ戦、ホームアウェイ22試合を無事に消化しきれただけでなく、チャンピオンシップを制したサガン鳥栖U-18と最終節まで優勝争いを繰り広げたことは、チームにとって重要な経験となることは言うまでもありません。
 開幕はガンバユースに4-1で快勝してスタート。勢いよくダッシュできるかと思いきや、大津・セレッソ・鳥栖と3連敗を喫してしまうなど序盤戦は苦しい流れが続きました。しかし、そこからディフェンス面が整理されて、セットプレーを武器にロースコアでも勝ち切ることができるようになって以降は快進撃が続き、ホーム最終節の名古屋戦で敗れるまで13戦負けなし。引き分けに終わりましたが決戦と位置づけたアウェイ鳥栖戦では3点を奪い終盤までリードするなど、2種年代としてはとてもタフな「チーム」になったという印象です。
 後述しますが、夏のクラブユースで納得できる成果を残せなかったことで、3名のトップ昇格選手を含む3年生たちも、もっと成長しなければならない2年生たちもそれぞれこのままではいけないと危機感を抱けたことが結果的にはよかったのではないかと思います。
 秋からの後半戦で三つ巴の上位争いを展開してきたジュビロ磐田U-18が先に脱落し、優勝争いは夏までの独走状態から失速した鳥栖との一騎打ちに。最終節の静岡学園高戦を3-1で勝利して勝点43まで積み上げたものの、同じく勝って同勝ち点となった鳥栖を得失点差で上回れず、5年ぶりの栄冠とプレミアファイナル進出を逃すことになりました。優勝ならずと知った選手たちは涙涙だったそうで、わずかな差だったからこそたらればが残るシーズンだったかもしれません。でもそれは相手だって同じ。悔しい経験をした下級生たちが次こそという情熱を滾らせていることを期待しましょう。

・クラブユース選手権
 関西大会 第1代表
 全国大会 グループリーグ敗退 1分2敗

 いくつかの制限・制約の下、ようやく有観客で開催された夏のクラ選。昨年はグループリーグを突破しましたが、徹底したブロックからカウンターという浦和、東京Vの狙いにハマってしまい、0-1での2連敗という厳しい展開に。3戦目の広島戦こそようやくゴールが生まれましたが、群馬の過酷な暑さと予期していなかったであろう連敗で狂った歯車を整え直すほどの余裕はなく重苦しいまま1-1で無念の引き分け。勝点1のグループリーグ最下位で夏の大会を終えました。
 堅い守りからスコアを先に動かすという勝ちパターンに持っていけなかったのは、プレミア勢である神戸を対戦チームが一定程度リスペクトしてきたからだと言えるかもしれません。しかし、それ以上に、ハードワークの結びつきがカウンターを浴びて簡単に千切れてしまうことへの恐れ、そして、攻めきれないがゆえにバランスを崩すことを恐れて、リスクを取りに行くようなアプローチを他人任せにしてしまう停滞サイクルに陥ってしまったのが理由だったように感じます。
 大会を迎えるにあたり、リーグ戦は序盤の不調から抜け出し、関西予選を1位抜けした状況であったので、ノックアウトラウンド進出~上位進出を期して臨んだ大会でしたが、選手たちにとっては手厳しいリセットを強いられる時間になったようでした。

・Jユースリーグ
 グループH 1勝1分5敗 5位

 昨年と同じくまたも関西4クラブ+広島という新鮮さのないグループ編成。カレンダーが共通なので相互のスケジュール調整がしやすい以上の理由ってないんだろうなと。人数が多かった3年生の出場機会を確保するがゆえに勝利を重ねて昨年は1位となれました。ただ、今季は1・2年生の人数が多いこともあって切磋琢磨を重視したゲームにしようという印象を受けたというか、対戦相手のチームに下級生が多いと勝てましたが、試合出場に飢えている上級生が増えると勝てなくなるという当たり前の成績に。アウェイで大敗を喫した試合もあったり、難しさが強く出たリーグ戦でした。
 クラブによってJユースリーグに対する方針が異なることから、勝敗の数だけを物差しにするのは合理的でないかもしれません。そもそも試合の消化数も不揃いのまま。Bチームの選手たちに公式戦の出場機会をリーグ戦形式で与えようという考え方は真っ当なのですが、ヴィッセルに関していえば通年開催のU-18兵庫県1部リーグに参戦しているわけで、以前のようにカップ戦形式に戻してもええんじゃないかなと感じたりもします。W杯で印象付けられたようにPK戦を経験することも大事だし。

・兵庫県1部リーグ
 2位 勝点33
 10勝3分5敗 得失点差+16

 10チームで行うリーグ戦。滝川第二高が勝点42で1位。それには及ばなかったものの途中の混戦模様から抜け出してヴィッセルBは4年ぶりとなる2位でフィニッシュを飾りました。学校での開催がほとんどなので、開幕直後は観戦不可の会場もあり結果を見守るしかなかったわけですが、夏以降は事実上有観客扱いとなって制約はあるものの本当にありがたかったです。県リーグらしく高体連の選手たちの奮戦によってもどかしい思いをする試合もありましたが、そのなかで個々が課題をブラッシュアップしていくのが肝心だと思います。あまりに覇気がなさすぎて試合後の一礼を待たずにとっとと帰路についちゃった日もありましたけど…。それでも勝点33は立派です。
 最終的に1年生がスタメンの多数を占める布陣となり、先を見据えて競争意識を煽る中西コーチの思惑を感じる部分もあるのですが、さて週末に行われるプリンスリーグ参入戦は果たしてどうなるでしょうか。当然ながらプリンス2部に上がると競技レベルも大きく上がるので、チーム全体の底上げのためにもぜひチャレンジしたいところです。

■ベストマッチ

 こんないいシーズンだったので、グッドゲームはたくさん。そのなかでも選ぶとすれば。

・2021.11.20 プレミアウエスト第15節 vsサガン鳥栖U-18
 3-3(2-2) 得点者 31分安達、35分永澤、46分冨永
 サガン鳥栖U-18との首位争い。ここで勝てば単独首位でしたが、残りわずかアディショナルタイムに入る少し前にハンドをとられて福井くんにPKを決められて勝点3を逃した惜しすぎる試合。
 2点を先行されたものの、序盤にホームで喫した不甲斐ない敗戦とは違い気後れせず真っ向から立ち向かって互角に近い内容。8安達の正確なキックを活かしたセットプレーで2点を追いついて前半終了。そして後半開始直後に9冨永が裏のスペースにボールを呼びこんでカットイン、必殺のアンクルブレイクで崩しきっての冷静な勝ち越しゴールとホントに熱くなる展開でした。
 ホームのサガンのサポーターも多く駆け付け、サガンカラーのダンマクに包まれたアウェイの雰囲気のなか白熱したゲームを見ることができ、足を運んで良かったと思えました。

■ 安部監督

 およそ10年間チームを率いた野田さんから、安部さんに監督が引き継がれたことは、チームが大きく変わった要因のひとつです。とはいえ、これまでもヘッドコーチとして野田監督をサポートしてきた人なので、何かガラリとやり方を変えたというようなことはなかったように思います。
 トレーニングを見ていて感じたのは、スキルとアジリティからコンタクトとアングルへの重視する項目の変化、もう1点は対戦相手の分析の強化です。前者については安部監督の指導者としての嗜好がメニューに出ているのかもしれません。いわゆるバルサメソッド的なものの発露ではないというのが実感です。後者については、育成部門のサポートスタッフが増えた今シーズン、彼我のストロングやウィークポイントを分析し、データとして具象化していく体制が整備されたいまだからこそ活用できたものと個人的に高く評価してます。これまでよりもクラブハウスで映像をチェックするミーティングの機会が明らかに増えていて、ゲームの前に選手たちがアタマに入れておくデータも改善されたのではと思います。そういった座学的なアプローチの強化がもっとあってもいいんじゃないかと感じていたので、勝負強さにつながった理由としてはとても納得感があるわけです。
 あと、日々のトレーニングで明確に伸びたと感じたことは、紅白戦の強度です。3年生を中心としたAチームと、1・2年生たちによるもうひとつのチーム。便宜的にBチームとしますが、彼らの発揮するクオリティがどんどん高まっていったので、木曜や金曜に行われる紅白戦はとにかく見応えがありました。強度の高いトレーニングが勝利につながり、自信や野心を得た選手たちが積極的にトレーニングに取り組むという素晴らしいサイクルができているなと感じました。
 ただ、アカデミーのチームはプロカテゴリーと異なり、選手たちが学生なのでチームに所属できる期間に限りがあり、コンペに勝ち続ける強さを維持するのは大変な作業です。今シーズン勝点を積み上げられたからといって、来シーズンもそうとは限らない、プレミアの競技レベルだとその度合いはさらに強いのです。なので、来年もチーム内の競争、例えば紅白戦の強度を維持・向上させて、プレミア優勝・ファイナル制覇を達成するほどの高い意識で一致団結してほしいなと思っています。
 リアリストの安部監督ならやれるんじゃないかなと期待しています。


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