Behavioral Insights for Japan

知られざる世界の行動経済学ブームについて書いていきます。Harvard Kennedy…

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知られざる世界の行動経済学ブームについて書いていきます。Harvard Kennedy School在学中。

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英国政府発の行動経済学コンサルチームはなぜ成功したのか(その1)

英国版国家戦略室での失敗2003年のある日。英国首相官邸の戦略ユニットでチーフアナリストを務めるデビッド・ハルパーンは、英国名物ポークパイの写真とともに載ったある新聞記事に関する釈明に追われます。 「戦略ユニット、肥満税を提唱」 ケンブリッジ大学で心理学を教えていたハルパーン氏は、2001年に労働党のブレア政権が立ち上げた戦略ユニット(日本の民主党政権下の国家戦略室のモデル)に参加します。戦略ユニットはブレア政権を支える頭脳として多くの報告書を出しますが、ハルパーン氏がま

    • 行動科学を使って良い人材を採用する11のコツ

      いくつか並行して記事を書いていたら、本記事を先に書き終えてしまったので、先に上げます。 昨年の8月、英国人材開発協会が、「行動科学チーム」(※後述)の協力を得て、行動科学が採用プロセスにどう影響するかというレポートを出しました。 "A head for hiring: The behavioural science of recruitment and selection" https://www.cipd.co.uk/binaries/a-head-for-hiring

      • 車の隙間に入る猫を1匹でも多く救う方法

        ちょっと実験的に主旨を変えてます。次からは本題に戻ります。 日産自動車が「猫バンバン」プロジェクトを始動 車の隙間に入り込むネコの命をバンバンして救おう! http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1601/26/news131.html 車に乗る前にボンネットを軽く叩くことによって、猫が車に入り込んだままエンジンをかけることを防ぐための「猫バンバン」を呼びかける運動とのことです。 「猫バンバン」を知らない人がいたり、「猫バンバン」を知

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        • なぜ行動経済学か(その3)–ケネディスクールが統計を教えるもう1つの理由

          アメリカ人の同級生たちと最近の政治情勢について話すと、だいたい苦虫を潰したような顔になります。 それはこの人のせいです。 (http://cdn1.theodysseyonline.com/files/2015/11/22/635838115365780122-901575687_6358235333419573281092854367_donald-trump.jpgより) 共和党の大統領候補争いでトップを走る、暴言富豪ドナルド・トランプです。メキシコは犯罪者を送り込

        英国政府発の行動経済学コンサルチームはなぜ成功したのか(その1)

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        • なぜ世界は行動経済学ブームなのか
          5本

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          なぜ行動経済学か(その2)–ケネディスクールが生徒に統計を教える理由

          私が昨年受けた必修の統計の授業を担当した先生は、ご両親がスウェーデン人と日本人の、カワイイ系イケメン。 https://www.hks.harvard.edu/about/faculty-staff-directory/david-yanagizawa-drott 教え方も上手で、いろんな意味でファンが多い先生でした。 この統計の授業で最初に示される図が、これです。 横軸が国別のチョコレートの消費量、縦軸が人口当たりのノーベル賞の受賞者数。 これはNew Engla

          なぜ行動経済学か(その2)–ケネディスクールが生徒に統計を教える理由

          なぜ行動経済学か(その1)−行動経済学とは?

          このnoteでは「行動経済学ブーム」において使われる手法を指すために便宜的に「行動経済学」という単語を使っていきます。正確な使い方とは異なります。 ここで行動経済学と呼ぶものの中身は大きく2つあります。 1.人間の持つバイアスを考慮すること 2.証拠となる数字を集めること、その手段として特に科学的な社会実験を重視すること 2.は文脈によって「実験経済学」とも「エビデンスベースドポリシー」とも呼ばれますが、本来の行動経済学と呼ばれる1.とセットで語られることが多いため、

          なぜ行動経済学か(その1)−行動経済学とは?

          なぜ世界は行動経済学ブームなのか(はじめに)

          世界各国の政府で、行動経済学を色んな分野の政策に取り入れるブームが起きています。日本ではこの実態がほとんど知られていないことに危機感を覚え、noteで書き始めることにしました。政策の作り方を変えていく良い流れがどんどん日本に入ってきてほしいなと思っています。 私自身はハーバード大学ケネディスクール(公共政策大学院)の修士課程で行動経済学を勉強しながら、イギリス政府やブラジルのリオデジャネイロ市役所を顧客として行動経済学を使ったプロジェクトをやっている者です。 こんな内容を

          なぜ世界は行動経済学ブームなのか(はじめに)