なぜ行動経済学か(その1)−行動経済学とは?

このnoteでは「行動経済学ブーム」において使われる手法を指すために便宜的に「行動経済学」という単語を使っていきます。正確な使い方とは異なります。

ここで行動経済学と呼ぶものの中身は大きく2つあります。

1.人間の持つバイアスを考慮すること

2.証拠となる数字を集めること、その手段として特に科学的な社会実験を重視すること

2.は文脈によって「実験経済学」とも「エビデンスベースドポリシー」とも呼ばれますが、本来の行動経済学と呼ばれる1.とセットで語られることが多いため、ここでは一緒くたにします。


なぜ人間の持つバイアスを考慮しなければならないのでしょうか。それはどんな人間でも、バイアスから自由にはなれないからです。私みたいなベスト体重×1.4くらいの体重を持つ意志薄弱の塊みたいな人間はもちろんですが、この文章を読んでいるあなたのような立派な方でも、バイアスからは逃げられないのです。

アメリカの主要なオーケストラが新たな楽団員を選抜する際には、姿形が見えないようにカーテンの後ろで演奏された音を聞くそうです。この方法は1970、80年代から取り入れられるようになったのですが、カーテンを1枚引いただけで、女性が選抜される確率が50%も上がったそうです。
Orchestrating Impartiality: The Impact of "Blind" Auditions on Female Musicians
http://www.nber.org/papers/w5903

こうした人間の持つバイアスの例を、今後たくさんご紹介できると思います。

みんなが「私は差別しない!」と思うことは、差別を無くす一歩目かもしれません。しかし差別をしないぞと意識的に思っていても、無意識のうちについ差別的な判断をしてしまうのが人間です。こうした無意識の判断を行うのが、直感です。どんなに賢い人でも、熟慮での判断より直感での判断が多くなります。ここが落とし穴になるのです。

こうした人間の持つ弱み、ある種の人間臭さをちゃんと考えようという学問が行動経済学です。

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