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山口周氏のおすすめ新書3選

こんにちは。ノイエです。

今日は、光文社新書『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』で2018年度ビジネス書大賞準大賞を受賞した山口周さんの新書で、個人的に「今読むべき」と思う3冊を紹介しようと思います。

いずれも明快でシンプルな論理で構成された本のため、非常に読みやすかったです。

ビジネスパーソンはもちろんのこと、「今はどういう時代なのか」「世界はどうなっているのか」を知りたい人にとって、非常に画期的な論考を示し、深い洞察を与えてくれます。

1. 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」』

この本は、タイトル通り「世界のエリートがなぜ『美意識』を鍛えるのか」という問いに答える内容になっています。

世界のエリートといえば、MBA(経営学修士)を取得しているイメージが強いのではないでしょうか。しかし実は、近年、伝統的なビジネススクールへのMBA出願数は減少傾向にあり、その一方でアートスクールや美術系大学によるエグゼクティブトレーニングに多くのグローバル企業が幹部候補を送り込み始めているというのです。

なぜかというと、これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてのビジネスの舵取りをすることができないからです。

本書では、そのように考える具体的な理由がまとめられています。

理由1.論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある
理由2.世界中の市場が「自己実現浪費」へと向かいつつある
理由3.システムの変化にルールの制定が追い付かない状況が発生している

この3つの理由についての山口さんの論考が鋭く、知的好奇心を刺激されます。具体的にどういうことなのかを知りたい方は、ぜひ読んでみてください。

2. 『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか』

奇抜なタイトルですが、「どうしたら社会が良くなるか」について、真摯で誠実な考察がまとめられた本です。

この記事を読んでいる方の中には、いきなりオッサンと言われて自分のことかとドキドキしている方もいるかもしれません。しかし本書で定義している「オッサン」とは、以下の特徴を持つ人のことです。

1:古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する 
2:過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
3:階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
4:よそ者や異質なものに不寛容で、排他的

単に「中高年の男性=オッサン」としてディスってるわけではないことがおわかりいただけると思います。

上記に挙げたようなオッサンが職場にいて困っている人にとって、本書は非常に有用な本となります。なぜなら、第1章では「なぜオッサンが劣化したか」についての考察、第2章では「組織がオッサンによって劣化するカラクリ」、第3章では「日頃オッサンの振る舞いに困っている方のための『中堅・若手がオッサンに対抗する武器』」まで提案されているからです。具体的な「オッサンへの圧力のかけ方」について、ぜひこの本から学んでみてください。

また本書は、オッサンと聞いて「もしかして自分もあてはまるのでは...」と感じる方への処方箋にもなっています。オッサンがどうすれば輝けるかについての考察も展開されています。

たとえば、第6章では「サーバントリーダーシップ」という年長者が若手を「支援」することが目的のリーダーシップについて説明されています。変なプライドは捨てて若者を支援するというリーダーシップを発揮することで、組織は若手しか起こすことができないイノベーションを起こせるようになるかもしれないのです。

オッサンに困っている方も、自分がオッサンかもしれないとドキドキしている方も、ぜひ読んでみてほしい一冊です。

3. 『天職は寝て待て 新しい転職・就活・キャリア論』

この本では、タイトルの通り、従来とは異なる転職、就活、キャリアについての論考がまとめられています。

山口氏自身も、電通の営業職から、戦略系コンサルティングファームへの転職を経験しています。その体験談も掲載されているので、これから転職しようという方、コンサルティングや広告業界でのキャリアに興味のある方、これから就職活動をする学生の方、自分のキャリア設計について考えたいと思っている方にとって、非常に有意義な内容となっています。

ちなみに山口氏は入社直後に「この転職は失敗だったかも」と考えたこともあるそうで、既に転職して「失敗した」と思っている方に向けて、その失敗をどう乗り越えるか、次につなげるかなどのアドバイスも紹介されています。

従来の転職や就活の本というのは、「自分は何が得意か」「自分は何をやりたいのか」などを分析するものが多く、自分の「将来ありたい姿」から「現在の姿」を引き算して、この差を「問題」、解消すべきギャップと定義し、一連の計画を立てたりするものがほとんどだと思います。

それに対し、本書では、スタンフォード大学の教育学・心理学の教授であるジョン・クランボルツのある調査の例を紹介しています。これは米国人のビジネスマン数百人を対象に行われたもので、キャリア形成のきっかけは、80%が「偶然」であるという結果が出たものです。

「いい偶然」は単に待っているだけでは起こらず、招き寄せるための日々の習慣が必要であるというクランボルツの指摘をもとに、山口氏は「キャリアは『いい偶然』によって形成される」と述べています。

なんだかんだキャリアって、偶然の賜物なんじゃないの、と日々薄々感じている人にとっては、非常に納得のいく論考だと思います。

上記以外にも、第1章では「転職はそもそもなすべきか、なさざるべきか」について考察されており、第2章では「従来の転職の『方法論』の問題」、第4章では「『攻め』の転職と『逃げ』の転職」、第5章では、転職後の心の変化について「エモーショナル・サイクル・カーブへの対処」という視点でまとめられています。

今回ご紹介したのは、非常に深い洞察、興味深い示唆に溢れ、人生や社会についての視野を広げる助けとなってくれる3冊です。ぜひ読んでみてください。

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