同人小説感想『ただ咲夜はお嬢さまと共に/私の時計はもう止まらない』

この小説(https://doraeta.booth.pm/items/52066?utm_source=pixiv&utm_medium=mypage&utm_content=follow-item&utm_campaign=pixiv-follow-items)の感想です。


ざっと書いた感じで推敲なしなんでごめんね!

感想

擬音的表現でいうならばグッときてびりっとしびれる話でした。

この同人誌は二揃いの話をいかに構成するかの方法に妙技を感じました。言ってしまえば、このストーリーをコンパクトに最小限に、そして無駄なく作り上げるには今回の手法以外それは無いのでは?と思わせるほどです。

東方同人誌がゆえに、キャラクターの設定、設計は既知として扱われることが通常であり、本小説もそれに漏れることなく、設定はわかってるものとして話はできています。

いかんせん私は東方には疎いものがあり、登場人物の名前は知ってはいるものの、関係性や能力といったものは知らないことばかりで、多少検索しながらでないとピンときにくい部分は無いとはいえませんでした。

しかし、この基本設定や関係性を既知にしているからこそ、無駄に説明をしたり、露骨な伏線になってしまう野暮なことが行われない、大きな利点があります。おそらくは、今回の物語では、基本説明をしっかり行ったならずいぶんと野暮ったいものになったでしょう。

ではストーリーの構成へ話をうつりましょう。
この手の螺旋的に話が絡み合う様式のストーリーは今までにもいろいろと読んだことはありました。それらはある種の群像劇として「一つの事件を別の視点で語る」ものや「互いを語り合う」ものなどがあります。

ここで自分が言いたいのは「語られる事件は一つである」というものであるです。よく考えなくても当たり前です。群像劇のようなストーリーのみそは一つの事象を複数の視点を用いることで、事件の解明や、逆に複雑化がなされます。本作はそこに新たなアプローチが行われます。

別々の物語が個別に語られるだけなのです。見方を変えたら二つのストーリーがある、中編集といったものともいえます。上記の二つ、群像劇と別のストーリー二編という別個のものは、それこそ通常は同時存続不可能です。だが、しかしこの小説では、完全に個別で、同時存続不可能なストーリーを一つの時空間上として存続させたのです。

これはすごい。超すごい。

しかもですよ、しかもパラレルワールドの同時存続によって2つのパラレルワールドを踏まえた3つ目の話が袋とじにあるんです!もう、こういうギミック大好きの好きです、しびれます。これが、ビりっとしびれた部分です。読者の視点をどのステージにフォーカスするか、それを巧みに操っています。ふつうナカナカできないよこれ。

一編目を読み終えギミックが明かされることでストーリーが一段階俯瞰してみることの優越感がまず読者に与えられます。そのままで、自分は世界を俯瞰しているのだぞ、との気持ちで二編目を読み終えます。

一編目と二編目の世界の対称性に気づかされます。この対称性は個人的に超このみです。Aの話とBの話はいわば鏡写しであるという作者の作戦を見て、こいつやりおると読者に思わせます。

そこへ袋とじの登場です。これの「あ~~やられた!」の感情は、結局自分が俯瞰で見ていた部分はまだまだお釈迦様の手の上だったんだと!これの良さをぜひとも知ってほしいと思った次第。

各中編部のストーリーの感想

この小説のテーマは死と行動です、
死にゆくもののメッセージとそれを受け止める生者の気持ちが、克明に描かれています。一人称小説にしても感情を説明しすぎでは?とも思いました。死を受け止めようとする側の感情は自身との対話と、応えなき死者への問いかけが行われており、死者のメッセージを順々に受け止めていく、感情の変化を描きっていて、最後には死者への理解が達成される。この読了感がとってもよいです。

ギミック部分への感想ばっかになって申し訳ない感。

AND

ある話の方を咲夜が選んだ理由は具体的にはあるのでしょうか。

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