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上級国民楽園事件簿

 最近日本で「上級国民」が交通事故を起こし、ネットやマスコミで非難を浴びた。また、「信号の無い横断歩道で車が止まってくれない。それに比べて欧米は優しい」という匿名ネチズンの意見も。「欧米と言っても広いし、中国と言っても北京と香港ではローマとロンドンくらいは違うのでは」と私は常々思っているが、ソーシャルメディアでそんなことを書いたらネトウヨ扱いされかねない昨今。鶴田浩二が「ケダモノばかりの世の中じゃございませんか」と言っていたような気もするが、ネットもケダモノばかりでブレーキの無い人が9割。Twitterで言えば、フォロワー数が多い人は家来が出来たと錯覚し、論客になったと勘違いする。

「そんなこと言ったらキズナアイの方がフォロワーが多い」とでも言おうものなら「ネット上級国民」に無礼打ちされる住みにくい日本。では、どこの国が住みやすいのか。とりあえず日本人に移住先として人気のタイの「住みやすさ」を現地報道を交えて解説していきたい。


 2019年7月16日、ある交通事故がニュースになった。バンコク近郊タンブリー料金所の第7ゲートの突破を試みた白のBMWをやはり白のフォードが停車させようとした。BMWが第6ゲートに回ったのでフォードの運転手である治安維持部隊所属チットカセーム・ジャンラック警察中尉(30)が車から降りて立ちはだかったが動画8秒辺りでぶつけられ重傷。下記の動画でその模様は確認できるが悲惨なので閲覧注意としておく。


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※灼熱のアスファルトの上で苦痛にのたうつ被害者を、避けて通りつつ助けない一般車両。日本も冷たいがタイもそこまで暖かくはないのが現実。


 BMWを運転していたエーカラート・チューマイ容疑者(38)は警察に出頭。警察は出頭命令を出していたのだが、もし出頭しなかったら逮捕状を裁判所に請求するところだったという。普通、目撃者もいて防犯カメラ映像で犯行の様子が確認出来れば一発で逮捕状が出るのだが、タイ警察は容疑者が南部ナコンシータマラート県の名門、チューマイ家の一員であることを知っていた。タイでは警察といえども鬼ではなく、上級国民には一歩下がって接する慣習がある。


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※テレビ出演したエーカラート容疑者。


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※2017年に買ったBMWをフェースブックで自慢する容疑者。


 チットカセーム警察中尉は左手左足を骨折する重傷。警察はエーカラート容疑者を殺人未遂と危険不注意運転で起訴。しかし同容疑者は完全黙秘し証拠による判断にゆだね、出頭したからという理由で一時保釈を受け帰宅。タイと言えばマイペンライ精神が美徳として日本でも有名だが、これはそれとは少し違う。上座部仏教の赦しの教えが実践されたのだ。金持ちは前世で徳を積んだ人扱いなのだろう。

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※「事件後加害者からなんの連絡もない」と嘆く被害者警官の妻とぶつかった跡が残るフォード。


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