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ホタルイカの素干しと、イカをググる女

「ねぇ、外国人観光客が来た時って、日本酒の説明はどうしてるの?」

どう考えても、この店のスタッフは英語が得意そうには見えない。ワイングラスに入った日本酒を飲みながら、私はなんとなく聞いてみた。

「え?外国人のお客さまにですか?そりゃもちろん、英語のメニューを渡すんですよ」

スタッフはそう言うと、英語で書かれたグラフのようなものを見せてくれた。それには、日本酒の香りと味の関係や、コメの精米度合いと味の関係などが英語で説明してあった。

普段は、日本語で書かれたメニューがテーブルに置いてあるだけで、グラフは載っていない。

「日本人のお客さまには、口頭で説明できますからね」

「なるほどね~。こういうの、必要だよね」

以前、私はなじみの居酒屋で、外国人に和食のメニューを説明したことがあった。それ以来、日本にしかないものを英語で説明することに興味を持ったので、この店でもスタッフに聞いてみた。

「たとえばさ、これから頼もうと思ってるんだけど…。ホタルイカの素干しって、英語でなんていうのかな?」

「ホタルイカの素干し、ですか…。そういえば、なんて言うんでしょうねぇ」

もちろん、この店のおつまみメニューにも英語版があるそうだが、スタッフがそれを見せてくれる前に、ググることにした。

イカは英語で squid

スルメは乾燥したイカだから dried squid

ホタルイカは firefly squid

寿司ネタなどのモンゴウイカは cuttlefish

丸い輪の状態でフライなどに使うイカは calamari

「それじゃ、ホタルイカの素干しは ドライド ファイアフライ スクィッドかな。ちなみに、ファイアフライはホタルって意味だって」

富山産の「ホタルイカの素干し」を、小さなキャンドルで炙りつつ、2杯目に注文したお燗酒を飲みながら、私はスタッフにそう言った。

「なるほど~。イカなんて単語、学校じゃ習いませんもんね~」

「確かにね~。イカにもいろんな種類があるけど、イカの種類なんて、日本語ですら習わないもんね」

「そうですよね。普段から食べてるのに、案外、知らないですねぇ」

「調べてみるもんだねぇ」

この店に来ると、よく頼んでいるメニューなのに、英語に言い換えただけで、なんだか違う食べ物のような気がする。

「あ、ファイアフライ スクイッドを、ファイアで炙るわけだね。今後から、日本語のメニューにもそう書いたら?」

「ファイアフライ スクイッドなんて書いたって、なんのことだかわかりませんよ~」

「ま、そうだね~」

言いながら私は「え?じゃ、炙るって、英語でなんていうんだ?」と思った。食欲も尽きないが、食にまつわる英語欲も尽きないのである。

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