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台風といえば、沖縄。

台風10号が西日本で暴れている本日、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。今回の台風による、大きな被害がないことを祈るばかりです。

さて、私は以前、「台風銀座」とも呼ばれる沖縄に住んでおりました。学生時代から住み、社会人になってからは、放送局でニュース番組のリポーターをしてました(もう15年近く前。早いなぁ)。このため、東京在住の現在は、ライターなのに書くだけじゃなくて、司会もするという、ちょっと変わったライターをしております。

なにしろ私、沖縄には15年くらい住んでいたので、沖縄で生まれ育っている友人がたくさんいます。沖縄では、台風がある程度近づくと、学校はもちろん、会社も休みになるし、バスなどの公共交通機関も運休するのが、かなり以前から当たり前のこと。仕事や学校よりも、命を守る方が大事ですからね。

だから沖縄人は、台風が近づくと、学校が休みになる時のワクワク感を思い出して、大人になっても「チムドンドン」とか「チムワサワサ」するのだと言っていました。「チム」というのは沖縄の方言で「肝」つまり、心や気持ちのこと。「チムドンドン」とか「チムワサワサ」とは、落ち着かなくてドキドキするとか、ワサワサとなんとなく不安な感じを表しています。

一方で、台風の時にかえって忙しくなる職場が、警察、消防、そしてマスコミです。

沖縄のテレビ局の報道部に勤務していた私は、台風が近づき、那覇空港を発着する飛行機が欠航になることがわかると、カメラマンやカメラアシスタントと一緒に空港へ向かいました。ニュースでよく見る、台風時のあの空港カウンターの長蛇の列と、運航の再開を待つ人のインタビューを撮るためです。

空港内は風雨にさらされることはないし、空港までは車で行くのですが、カメラマンたちも私も、雨がっぱと長靴、そして何より、カメラにはしっかりと防水のカメラカバーをかけて、台風の装備はバッチリにしていました。

何しろ、沖縄にやって来る台風は勢力が強く(今回の台風も結構強いですが)、風も雨もグルグル回っているので、360度、どこからでも雨が入ってきます。車を降りてから空港に入るまでの、わずかな時間でも油断はできません。もし、カメラに水が入ろうものなら、大変!!取材どころではなくなってしまうので、台風時はちょっとの移動でも雨対策を万全にしていました。

空港に着くと、まずカメラマンは必要な映像を撮影します。空港内全体、長い列の全体像、列に並ぶ人たち、運行状況を知らせるパネル、それを心配そうに見上げる人たち、カウンターで係員に問い合わせをする人たち…。

以前は、「飛行機の運航がいつ再開されるのか」と係員に詰め寄る人も多かったのですが、近年では「自然災害だから仕方がない」ということを理解してくれる人が増えたのか、詰め寄る人も少なくなったようです。

そして、一通りの撮影が終わると、私の出番。運航再開を待つ人にインタビューします。目的は、よくニュースで見るコメントを撮ること。「本当に、台風は困りますよね…」「早く帰りたいんですけど…」「明日、仕事なのでどうしても帰らないと…」とかですね。

たくさんいる人の中から、誰にマイクを向けるのかは、カメラマンではなく、リポーターである私が決めなくてはならないんです。

最初の頃は、闇雲にマイクを向けて、「ああ…」とか「大変ですよ(見ればわかるだろ)」という、ニュースでは「使えない」コメントしかもらえず、ムダな時間を過ごして、カメラマンを怒らせていました。

でも、経験を積むにつれて、きちんとコメントをくれそうな人を「見分ける」ことができるようになりました。また、私自身も、相手からコメントをうまく「引き出せる」ようになりました。

人の性格は、無意識に表情やしぐさに出るんですよね。それを客観的に、さり気なく観察していると、「この人はこんなことをしゃべってくれそうだな」ということがわかるようになったんです。

台風時の那覇空港は、私にとって「チムドンドン」する場でもありましたが、人間観察の大切さを教えてくれた、大事な現場なのでした。


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