見出し画像

タコとミョウガのわさび和えと、日本の香り

「ミョウガって、ショウガの仲間なんですよね」
なじみの居酒屋で、隣席の常連さんが言った。
「ショウガの仲間なんですか?ミョウガが?」
「そうなんですよ。どちらも同じショウガ科の植物なんです」


その日、私が注文したおつまみは「タコとミョウガのわさび和え」である。渋い茶色の和皿に、丸いタコの吸盤と細く刻んだミョウガ、その上に青じそが少し。タコとミョウガのピンク色に、青じその緑色がアクセントになっている。
タコとミョウガを一緒に箸でつまみ、口へ運ぶ。ミョウガのシャクッという歯ざわりとさわやかな香りが、いかにも夏という感じだ。続いて、スッキリした夏酒をゴクリ。

「ショウガはジンジャーエールのジンジャーって言いますけど、ミョウガはジャパニーズ ジンジャー(Japanese ginger)って言うんです」
その常連さんは、確か飲料メーカーに務めているはずだ。自然と、例えが飲み物になるのだろう。
「じゃ、ミョウガは日本独特のものなんですね。知りませんでした~。そういえば、このタコも、海外ではあまり食べないんですよね?」
「タコですか。そうですね。イタリアやスペインでは、カルパッチョやアヒージョにしますけど、たいていの国では『こんなグニャグニャしたもの、食べるの?』なんて言われるらしいです」


タコは、英語でオクトパス(octopus)。デビルフィッシュ(devilfish)つまり「悪魔の食べ物」ともいわれると聞いたことがある。
「タコを食べないなんて、もったいない。おいしいのに」
「あ、でも最近はその認識も、日本食好きな人の間では変わってきたみたいですよ。何しろ、スシやサシミが有名になりましたからね」
「あ、そうか!スシやサシミには、タコが登場しますもんね」
タコの吸盤の、少しコリコリした歯ごたえを楽しみながら、私は言った。

ということは、この料理「タコとミョウガのわさび和え」は…

オクトパス アンド ジャパニーズ ジンジャー ウィズ ワサビ(octopus and Japanese ginger with wasabi)という感じだろうか。

「あ、もしかして、シソも日本独特のものですか?」
「そうかもしれません。ジャパニーズ ハーブ シソ(Japanese herb Shiso)って説明しているような気がします」
「シソの香りも日本ならではなんですね」
「そうですね。ゆずとか抹茶とか、日本独特の香りの飲み物やお菓子、結構増えてるんですよねぇ」
「そういえば、ウメもそうですよね」
「そうですね。ウメ味のドリンクやお菓子もありますし」
「じゃ、ミョウガは?ミョウガのドリンクなんて、どうですか?ジャパニーズジンジャー!」
「ミ、ミョウガのドリンクですか?う~ん…、どうですかねぇ。おいしいかな…」
常連さんは私の顔を見て、ちょっと苦笑いした。ジャパニーズジンジャードリンクなんて、名前はおいしそうだと思うのだが…。

#日本酒 #居酒屋 #和食 #料理 #ひとり飲み #おつまみ #英語 #英会話 #外国人観光客 #日記 #小説 #ライター

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?